大人になったなぁ、と思う時。
欲しい物がある程度自分で買えるようになった時。
年齢確認されないかビクビクせずに居酒屋に入れる時。
雪が降った時に喜ぶんじゃなく面倒臭いと感じる時。
「……っ、名前っ!」
「んー…」
「名前、起きろって!」
「もう、なに…」
まだ身体の芯まで冷える寒い朝。
今日は休みだから昼まで寝てやるんだと決め込んで寝ていた最中、騒がしい男の声で目が覚めた。
「雪積もってるぜ、雪っ!」
「はぁ…?」
「なぁ、ちょっと外出ようよ」
「やだよ、寒いし…」
雪なんて働くようになってからは雨同様洗濯物が乾かないわ交通機関に支障を来たすわハイヒールで歩くには危ないわで良い印象を持つ事なんかほとんど無い。
それなのにこの男ときたらどこかの歌に出て来る犬みたいにはしゃいでいるではないか。
私は意地でも布団から出るまいとしっかり身体を布団で包み直した。
「カイジ一人で行って来たらー…」
「えー…」
「お昼になったら起こしてね」
そう言いながら私はまた心地好い睡魔に襲われ、玄関のドアが開く音を聞きながら眠りに就いた。
そうして何時間経ったか分からないが恐らく昼頃にはなっているであろう時、頬に強い刺激を感じて私は目を覚ました。
「…んっ、冷たっ!」
「ただいま…いってぇ!」
「もー…冷たいなぁ!何すんの!」
「痛っ…叩くなって…!」
「ていうかカイジ…その顔…」
カイジの顔は鼻から耳から頬まで真っ赤になっていた。
よっぽど外は寒かったんだろう。
「遊び過ぎた…」
「もう…」
私は黙ってカイジを布団に引っ張り込んだ。
「…名前?」
「わ、手も顔も全部冷たっ。これじゃ風邪引いちゃうよ」
「…あっためてくれんの?」
「ちがっ、まだ眠いだけ!」
「はぁ〜、名前のナカあったけー……いてっ!」
「馬鹿!変態馬鹿カイジ!」
「ごめ、冗談…くくっ」
「なんで笑うのっ」
「名前が可愛いから」
「…馬鹿」
雪が止んだら出掛けましょう。
大好きなあなたと手を繋いで。
雪の唄
漸く布団を抜け出しベランダに出ると、不格好な雪だるまがお出迎えしてくれた