「名前は、オレの事どう思ってるの」
「…………えっ?」
アカギさんからの突然の問いに私は素っ頓狂な声を上げた。
「だから、オレの事をどう思ってるの」
「ど、どうって…」
質問の意図が分からない。
アカギさんとお付き合いをするような関係になってからまだ1ヶ月が過ぎたばかりだ。
確かに好きだという気持ちを言葉で示した事は恥ずかしさが先立つせいでほとんど無い。けれどもそれにしたっていきなり過ぎる気が…。
「…そりゃあ、好き、ですよ…?」
「どうだか」
「…どういう意味ですか?」
煮え切らない様子のアカギさんに私は少しムッとして答えた。
「それなら、何故オレと目を合わせて話そうとしない?」
「………それ、は、」
言えない。
そんなの恥ずかしくて、言えない。
「ほら見ろ、やっぱり何かあるんだろ」
「あの、違うんです、えっと…」
「……」
アカギさんは溜め息を吐いて煙草に手を伸ばした。
まずい。これは完全に機嫌を損ねてしまっている。
「あの、聞いて下さい…」
「……」
「…アカギさんが、悪いんです」
「は?」
「アカギさんが、かっこ良すぎるから、恥ずかしくて目を合わせられないんですっ…!」
「……」
あ。アカギさんがフリーズした。
こんなアカギさん一生お目にかかれないんじゃないだろうか。
「わぁっ、煙草っ!灰落ちますよ!」
「あ?あぁ…」
アカギさんは灰皿に煙草を置き、そして悪戯な目を私に向けた。
何か、嫌な予感。
「名前」
「はい…って、え!?」
あれよあれよという間に私はアカギさんと壁に挟まれる体勢になった。
「あの、アカギさん?」
「クク…面白い事を聞いた」
「なに…」
そうして伸びて来たアカギさんの両手が私の両頬を挟み頭を固定された。
アカギさんと私の顔は鼻先が触れそうな程近い。
「こっち向いて」
「…っ」
「目を泳がせない」
「だって…!」
恥ずかしくてどうにかなりそう。
でも、やっぱり見れば見るほどアカギさんの顔は整っていて見惚れてしまう。
「名前には詫びて貰わないとな」
「詫び…?」
「オレの目を見て、さっきと同じ事を言って」
「さっきって、」
「オレの事、どう思ってるか」
「…!」
耳まで真っ赤になり涙目になる私をアカギさんはさも楽しげに見ている。
「無理、恥ずかしいっ…!」
「言わないとずっとこのままだけど?」
「…っ」
我が儘で俺様な所もあって少しぶっきらぼうなあなた。
そんな所も全部含めて惹かれていったから。
「アカギさん…好き、です」
一粒の涙が流れたのと同時に私の口はアカギさんのそれで塞がれた。
好きの形
好きな子ほど虐めたくなる。