七月にアナログ放送は終わる。テレビジョンは完全に地上デジタル放送に支配され、このせまくるしいへやに置かれたゆいいつの娯楽機械、どっしりとしたふるくさいブラウン管は、何も映さなくなる。

友だちは三月にみんないなくなった。わたしを可愛い可愛いといって髪をなでてくれる男の子たちも、枝毛の増えたわたしの髪に興味を示さなくなった。ただひとりをのぞいて。

そのただひとりは例によって、木曜日の夜にやってきた。その日のおみやげは苺だった。透明のパックに入ったあかい、小粒の苺たちは、つりさがっている裸電球のたよりない光に照らされて、つやつやとかがやいた。それらはまるで宝石のようだった。

「苺を食べたら早く寝ろ」
「……うぃ」

小太郎は苺のパックを座り込んでいるわたしの足元に置くと、シンプルな黒いコートを脱いで、綿の飛び出したソファーの上に無造作に置いた。ぱふん、とかびくさい匂いが鼻をつく。

「本はないの」
「ある。ただおまえの趣味は分からんからな。ハードカバーのミステリーとライトノベル、それから、和英辞書」

わたしが読書のときに和英辞書を読むようなティーンエイジャーに見えるのか?
まあせっかくなので、と三冊とも受け取って、傍らに積んでおく。小太郎はその本の上に薄い、金属製の、つる草模様に型抜きされた銀の栞を三枚、のせた。
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