「至福……」


お気に入りの音楽を聞きながらお布団にもぐりこんでぬくぬくして、買ってきたばかりのジャンプをめくる。このジャンプを読み終わってしまっても、次に読むものはいっぱい準備してあるから大丈夫。枕元に積み上げられた大量の本やら漫画やら雑誌やら。図書館や友達から借りてきたものだ。マジ最高。休日最高。


「あっそ」


しかし同じく休日(彼の場合はサボりという名の)であるはずの恋人、山崎退は、朝からすこぶる不機嫌だ。


「山崎よ」

「誰。そして何」

「なんでそんなに機嫌わるいの?今日大学、」

「休んだけど」

「……ゴロゴロしないの?」

「してるよ」


まぁ、確かに。
あたしのとなりに敷かれたお布団の上で、一応退くんも横になってはいるものの。
……あ。


「もしかして具合悪いの?」

「心配してくれてありがとう。だけどそういうセリフはジャンプから目を離して言ってくれないかな」

「えーわがままだなー退くん!」

「…ねぇなんなの。喧嘩売ってるの?」

「違うよ!ただ退くんが大学サボるって珍しいなって」

「まぁね。今日くらいはさ」


ジャンプから顔を上げて、あたしは退くんに笑いかけた。


「そっか!今日2月6日だもんね」

「…うん」

「26、ニロの日だもんね!」


冗談のつもりだったのに部屋の温度が二度ぐらい下がった。(退だけに)


「志乃ちゃん」

「はい」

「面白くないから」

「…はい」


退くんの表情はもはや不機嫌そのものである。


「志乃ちゃんさ。今日何の日だかわかってる?」

「だからニロの」

「くどいよ」

「すみません」


頭を下げながら、あたしは内心でほくそ笑んでいた。なんていうか、してやったりって感じ。
――誕生日忘れられて拗ねるなんて、退くんもかわいいとこあるじゃないか、ねえ?


「こんなことだろうとは思ってたけど。今日さ、俺の」


退くんはつまらなそうに頭をかきながら、ぼやく。あたしはがばっと顔を上げた。


「誕生日、でしょ?」

「え、」


忘れるわけがない、し。
リボンをかけて本の山の影に隠しておいたのは、もちろん。


「はいっ、ヤマザキのふんわりあんぱん!好きっしょ」

「……」



スパーキング
されました




「好きじゃねーよ」


2011.02.06
山崎誕生日おめでとう!
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