なんかおでこが熱い。
若干ボーっとするし。若干ね。


「やばいこれマジで熱じゃね?てかフルエンじゃね?」
「おまえなんでもかんでも熱にすんのやめなさい。あとフルエンって何よ」
「インフルエンザ」
「いやインフルでよくね?」
「やだ。人と同じことはしたくない主義」
「よし呼吸止めろ」
「やだ。坂田の言うことは聞きたくない」
「……俺の言うとおりに仮病で午後の授業サボったのはどこの誰ですか〜」


どや。って顔。
あーあーあー。隣のベッドからのぞく坂田の頭が綿菓子にみえてきたよ。わたし末期か。

誘われるままに、坂田のあとにひっついて保健室でサボタージュして、放課後。
放課後になったってベッドから出る気がまるでしなくて、しかも都合のいいことに保健の先生は出張で。わたしと坂田はもうだいぶ長いことこうしている。

手持ち無沙汰に携帯を開いたり閉じたり。ぱたんぱたん。「明日会えない?」って土方くんにメールしてからすでに2時間は経っている。けど一向に返事が来ない。
待てど暮らせど。

と思ったら、ふいに携帯が震えた。流れ出す雪のツバサ。土方くんだけの着メロ。同時に震えだした心臓を落ち着かせながら、恐る恐るメールを見る。

『悪い、部活』

わかってる。わかってるのに、わかってたけど、わかってたから、メールした。
だって。部活もない日に断られたら傷つく、し。


「……大串くんなんて?」


坂田はこちらを見ずに、前を向いたままそう言った。わたしは答えなかった。代わりにえいやっと気合を入れてベッドから抜け出でて、上着と鞄を手に取る。


「タワレコ行こうよ」
「あー?」
「もうね、試聴しまくりたい気分。それからスタバね。抹茶フラペチーノがわたしを呼んでいる」
「ばっか、抹茶フラペチーノがおまえみたいな半端な人間を呼ぶわけないだろうが。抹茶フラペチーノが呼んでんのは銀さんだからね」
「はあー!?なんであんたとおんなじの飲まなきゃいけないの」
「じゃあおまえが変えてくださーい」
「いーやーだっ!もう舌が抹茶フラペチーノなの!」
「そんなん銀さんのほうがずっと抹茶舌ですー。もう舌が抹茶色になっちゃってまーす」


訳のわからんことをほざきながら、坂田はベッドから降り、さりげないふうにわたしの鞄を持ってくれた。



はんぶんこしよっか
2011.1.29
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