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居場所がない気がした 1

「は?平古場くんが風邪?」

朝、部室に行くと木手くんからとんでもない事を告げられた。
風邪?
あの自由奔放な平古場くんが風邪?
マジか。
そういや今日、珍しく朝家に来ないよなぁーと思ってたら(毎朝望んでも無いのに平古場くんはうちを叩き起こしに来るから困ったもんだ)風邪とは。

「へー、それはそれは。大変だ。風邪とか気を付けないとダネー」

それだけ言ってタオルの山を抱える。
平古場くんが居ないって事は、今日は静かに過ごせそうだ!
いやーありがたいありがたい。

「気を付けないと、ではないですよ」

グワシッ

「ぐへえっ!」

お前はどこぞのまことちゃんだよとツッコミを入れたくなるような効果音でうちの頭を引っ掴んでくる木手くん。
容赦がねぇ。

「な、なに、なんなの木手くん。頭超痛いんだけど」
「今日の帰り、平古場クンの所へ行ってください」
「えぇ?なにそれ、お見舞いって事?」
「それも兼ねてますが。今度ある練習試合の連絡事項をまとめた用紙を渡して来てもらいたいんですよ」

ひら、と紙を渡される。

「え、練習試合とかあんの?初耳なんだけど」
貴女には今初めて言いましたから

マジでかーい。
マネージャーにはもっと早めに伝えようぜー。
うーん、というか今日予定あったんだけどな。

ガチャ

「木手、涼音、ぬーしてるばぁ?もう練習始まってるんどー」

丁度いいタイミングで甲斐くんがやって来た。

「それはすみませんでした。それでは神矢クン、頼みましたからね」
「…ウィッス」

木手くんは人に押し付けるだけ押し付けて、さっさと部室を出て行った。

「頼む?ぬーぬ(何の)話してたんばぁ?」
「あー…それなんだけどさ。今日、帰り一緒に佐世保バーガー食べに行くって言ってたじゃん?ごめんだけど、ちょっと今日無理っぽい」
ええぇ!?マジかよ、なんで!」

う、うおぉ、すげー詰め寄られる。近い、怖い。

「い、今いきなりさ、木手くんがさ、平古場くんのお見舞い行けって言うもんだから」
「凛の?え?見舞いって、あぬひゃー風邪でもひいてるのか?」
「うん、なんかそれっぽい。木手くんが風邪だって教えてくれた。んで、この連絡用紙渡してあと様子見て来るようにってさ」

正確にはこの紙を渡す事がメインらしいけど。

「…あー…まあ…木手がそうあびた(言った)んなら仕方ないか…」

見るからに不満げな甲斐くん。
そ、そんなに捨てられた犬みたくしょぼくれられたら困るじゃないか!

「きょ、今日が駄目でも、ほら明日とか明後日ならうちは大丈夫だから!」
「…」
「ほ、ほんとごめんって!あ、そんなにハンバーガー食べたいんなら1人で行けばいいんじゃない?」
「…1人で行ってもつまらないんどー…」
「そ、そうか…」

別にうちに詰め寄るほどハンバーガーが食べたかったわけではなかったのね。

「…あちゃー(明日)なら大丈夫だよな?」
「あ、あぁ、たぶん」
「…なら良いさぁ。ちゅー(今日)は我慢する」

それだけ言って、甲斐くんは部室から出てった。
う、うわあ何だろう。
すごい悪い事した気がする!
甲斐くんがいつもみたいに呑気に笑って返してくれたらよかったものの!
あんなしょぼくれなくてもいいじゃないか!

「…でももう決まっちゃった事は仕方ないしなぁ…」

木手くんに渡された紙を鞄にしまう。

「今日は大人しくお見舞いに行きましょーか…」

ふー、と息を吐いてタオルを抱え直す。
というか、木手くんに頭掴まれたり甲斐くんに詰め寄られたりしたのにタオルは落とさなかったうち、偉いよね!




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