×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

ミスターコンin比嘉祭 1

※夏企画(ハグの日)のつづきとなります。

今日は待ちに待った(うちは大して待ってはいない)比嘉祭。
比嘉祭っていうのは比嘉中で行われる文化祭だ。
その中で特に盛り上がるのがミスターコンとミスコン。
驚くことにエントリーするには他薦が必要で、我がテニス部からはなんとびっくり平古場くんと甲斐くんがエントリーしている。
木手くんも推薦されたらしいけど、こんな子供騙しに参加するほど暇じゃないと蹴ったと言っていた。
というかね、平古場くんとか甲斐くんとか木手くんが選ばれるとかね、一体どんなミスターコンなんだって話さ。
性格がアレな人がエントリーされるコンテストなんだろうか。
そうなんだろうねきっと!

べちっ

あいった!?

い、いきなり平古場くんに後頭部をはたかれた!
声かけるより先に手を出すのは止めていただきたい!

「何してくれんの!?」
「また何か失礼なくとぅ考えてんだろ、やー」
「失礼なことじゃないし!ただ平古場くん達が選ばれるとか、このコンテストの基準的なものがよく分からんなーと思ってただけだし?」
「充分失礼やし!」
「…というか、なんで涼音がここにいるんだばぁ?」

甲斐くんが今更ながら言ってきた。
そうここは舞台袖。
あと少しで、この舞台でミスターコンが始まるんだ。
ここにいるのは係の人、あとミスターコンに参加する男子と、男子とペアを組んでいる女子だけ。

「涼音、係でもしてるんばぁ?」
「まーさかぁ。うちは損得勘定で生きてるんだからそぉんなメンドーなことしません!」
「だろうな」

だろうな、じゃねーよ金髪め!
冗談で言っただけなのに、まるで人をものぐさ人間のように言いやがって!
まぁものぐさですけどね!?

「わったーの応援にでも来たのか?」
「アッハッハ、それこそ得が何も無いじゃないか。ヤダー甲斐くんちょー面白い!」
「…そこは嘘でも応援しに来って言うべきだろー…」
「いやーうち素直なもんで」

まあ5万くらい頂けたら応援しないこともないことないけどね!

「まっ、ジョーダンは置いといて。うちも出んのさ。コレに」
は?
は?
「いや、「は?」じゃねーし」

平古場くんも甲斐くんも2人揃って間抜けヅラしてこっちを見ている。
面白い顔である。

「どーいうくとぅよ。まさかこの後のミスコンに出るとかふざけたくとぅ言うんじゃねーだろうな?」
なぜうちがミスコン出ることがふざけてることになるんすかね。いや出ないけどさ」
「出ないじゃなくて出れないの間違いだろ」
「うるさいわ平古場!」
「じゃ、出るって何にだよ?」
「ミスターコンの手伝いさ。なんだっけ…ほら、今からやる「擬似告白」ってやつ?それの相手役に選ばれ、」
は!?
はあ!?
「オォウ」

2人とも声でかくするもんだからビビった。
なんだよ急に!

「ぬーよそれ!?そんなん聞いてねーらん!」
「ええ?まぁそりゃ言ってないんで?」
「何でよ!?」
「えっ、なぜに言わなきゃいけない…って近い近い近い!こっわ!」

すンげー剣幕で2人に詰め寄られる!
怖いよ!なんだよ!?
別に怒られるようなことしてねーし!…してないよね!?
ってかマジで怖い!
ガラの悪い奴らにカツアゲされてる雰囲気!
こんな奴らをミスターコンに出すのはおかしいと思います!

「で!?」
「…は?」

で、とは?

「は?じゃねーっつの!相手はたー(誰)よ!」
「えっ知らん
「知らっ…」
「知らんって…」
「だってついさっき言われたとこだし。急遽?なんかホントの相手役の子が休みだからって声掛けられたらしくてさー」

ホントはミスターコンを見るつもりすらなかったからね!
うろうろしてたらミスターコン係の人達にとっ捕まって、ほいほい着いてったらいつの間にか「擬似告白」の相手役にされてたって話ですよ。
「擬似告白」ってのは今回のミスターコンの目玉で、エントリーされた人達が相手役の女の子に擬似告白してそれを評価し優勝者を決めるヤツだ。

「相手役っつっても突っ立ってるだけで良いって言われたからさぁ。ならいいかなーって?」
「…涼音、頼まれただけで手伝うようなヤツだったか?」
「甲斐くんはうちをどんな風に見てんのですかね。ま、うちだって優しいし?困ってる人は見過ごせないナーって?やだー、涼音ちゃんってホント優しー☆」
「…これか」
「ぎゃっ!?」

平古場くんにポケットに入ってた紙をひったくられた!

「ちょっとー!返せよー!というか人のポケットまさぐるとか平古場くんヘンターイ」
「ばっ…!たー(誰)もまさぐってなんかねーだろ!」

べし

「あでっ!」

ちょ、ちょっと調子乗ってからかっただけなのに!
この金髪はすーぐ殴るんだから!
冗談が通じない顔だけの男はモテないよ!

「で、それ何なんばぁ?…「出店フリーパス」?」
「…どうせ神矢のくとぅさー。これやるから参加しろってあびられたんじゃねーの?」
「げっ、バレた」
「やっぱりそうか…。何が優しいからよ」
「その蔑んだ顔やめろ!というかまず返せや!」

平古場くんからフリーパスを取り返す。
いいじゃんね、見返りを求めるくらい!
人前に出るなんて小っ恥ずかしいこと引き受けるんだから、出店を自由に行き来できる権利くらい貰っていいじゃないねー!?

「ふん、第一別に相手が誰でも平古場くんも甲斐くんもカンケーないじゃんよ。まあ?こんな見た目だけで選ばれてるコンテストに参加してる時点で大した人じゃないだろーけど?」
「それわったーバカにしてんだろ」
まあそれなりにはね!
「してんのかよ!!」

いやいや「バカにしてる」って決め付けて言ってきたのは平古場くんの方なのになぜ怒るか。

「あれ、神矢…さん?」
「あ?…え?」

後ろから声掛けられて振り返ったら、背の高いイケメンが立っていた。
いや、背の高いイケメンって言っても知念くんじゃない。
サラサラ黒髪でいかにも好青年!って感じの男の子だぞ。
誰かは分からんけど。

「えーと…?」
「隣のクラスの平良さー」
「たいらくん…」

平良くんとは。
名前を聞いてもピンと来ない。
自分のクラスの人すらちゃんと認識してないってのに隣のクラスなんか分かるはずないわ!

「ミスターコンの相手役が神矢さんになったって聞いたんだけど、違った?」
「えっ?あ、あー!なるほど。たぶん合ってます」

じゃあ彼がうちのお相手さんか。
えー、さすがミスターコンに推薦されるだけあってイケメンさんじゃん!

「急に悪かったさー。予定とかあったんじゃないの?」
「あーいやいや。それは全然」

予定のよの字もなかったからね!

「なら良かったさぁ。それじゃ、また後で」
「ウェッ?…あれ告白の内容とかは?事前に打ち合わせとかは…」

何するか分かってた方が本番スムーズに行く気がするんだけど。

「それは本番でのお楽しみ」
「おぉ…おぉう…」

にっこり笑った平良くんが言った。
んで、ひらひら手を振って向こうに行ってしまった。
そのまま別の男子…エントリーしてる子っぽいと話してる。
えっ?というか……ぉえー?何あの言い方と笑顔!
ひゃー!あの人マジモンのイケメンじゃん!

「…いけ好かねーやぁ、あぬひゃー」
「だーるなぁ」
「はっ?何をいきなり」
「やーもあびてただろ。こんなコンテスト、ちら(顔)だけで選ばれてるって。あぬひゃーも同じだろどうせ」

平古場くんが毒吐くけど、そう言うってことは自分も顔だけで選ばれてるって認めてるようなもんじゃないのか?
まあ顔は良い方なのは違いない…んだろうね、周りから見たら。
うちは知念くんと慧くんの方がイケメンだと思うけど!

「では、ミスターコン始まりまーす!」
「おっ」

腕に腕章を付けた人が声を上げた。
おぉ、ついに始まるらしいぞ。
さっき舞台袖からちらっと客席の方を見たら、かなーり人が入ってたんだよなあ…。
さすが比嘉祭のメインイベントなだけあるわぁ。

「いやー、ミスターコンとかどーでもいいとか思ってたけどいざ始まるとなるとちょっとドキドキしてきたねコレ。やっべ、イケメンに告白されるとか生まれて初めてなんですけど!」
「…どうせ擬似やし」
「いやいやそれくらい分かってますよ甲斐くん」
「…告白自体が生まれて初めてで最初で最後になるんだろー」
「ひっでえ。甲斐くんも平古場くんも告白とか慣れまくってんだろうけど、うちはレア中のレアな体験なんだからな!?」
「…だからってそんな調子乗ってんじゃ、」
「神矢さん、次わったーぬ出て行く番だって」

平古場くんの失礼な言葉に被せるように言いながら、平良くんが戻ってきた。

「おーう、もう出番か。ありがとう。んじゃあなー諸君!」

ビッ☆と指で決めポーズをして平良くんの後について行く。
平古場くんにはムカつく言われ方をしたけど、マジで最初で最後の告白になるかも知れないよな…。
しかも平良くんのようなマジイケメンには告白どころか今後絡むこともないかも知れない。
うん、だから今からこの場を楽しんでやろうと思います!

「……」
「……」

スキップでもする勢いで舞台に出て行く涼音の後ろ姿を見た平古場と甲斐は表情を曇らせていた。

「でーじ調子乗ってんなぁ、涼音…」
「…ふらーかよ」

はあ、と2人揃って息を吐いた。





舞台に、約10人のエントリーした男子が揃った。
その後ろにペアを組まされた女の子も並んでる。
そして1番のペアから舞台中央に出て擬似告白が始まっている。
…いや、分かってたけど、分かってたんだけどね?
女の子、みーんなカワイイんだよね!!もちろんうち以外な!
えっ、こんなイケメンな平良くんの相方がうちごときで良いの?
客席見ても可愛い子いっぱいいるし、その子達と今からでもトレードした方がバランス取れると思うけど…!?
やべー、緊張を通り越して申し訳なさが出て来た。
前に立つ平良くんに小声で話し掛ける。

「(た、平良くん)」
「(ん?)」
「(う、うちなんかが相手で良かった?他に可愛い子いっぱいいるし…なんか、ホント申し訳ない)」
「(やーが謝るくとぅないさー。それにやーも充分可愛いと思う)」
「お、おうふ…」

平良くんたら、人の心の臓を打ち抜けるくらいの笑顔で言ってくれた。
にっこり笑って!そんな殺し文句言わんでください!
それがお世辞だとしても惚れてまうやろー!!!

「(バカだろ)」
「!」

斜め前から罵声が聞こえてきた。
いちいち確認しなくても分かる。
この金髪野郎め…!

「(ちょ、なんでこんな舞台上でも罵倒されにゃあかんの!)」
「(やーが浮ついてるからやし)」
「浮っ…」

なんだよその理由!
浮ついてるだって?
浮ついてますけど!?
告白されて浮つかない奴とかいる!?
あっ、コイツにとっては告白とか日常だから浮つかないのか!
だからって平古場くんの常識が世間一般の常識と同じだと決め付けないで欲しいわ!

「(…って、げっ!?)」

周りの目も気にせずキレてやろうかと思ったら、客席の隅の壁の方に見知ったコロネ眼鏡が立ってるのが見えたもんだから押し黙る。
な、なんで木手くんがここに!
自分が出るのは時間の無駄とか言ってたけど、自分が率いるテニス部員が惨めな結果を出さないか見張りに来たってのか!
こわっ、あんな見張りがいたら下手なこと出来ないじゃないか。
下手なことするつもりもないけどさ!

「…神矢さん、出番さぁ」
「おっ?あ、は、ハイ!」

いかんいかん、ボーッとしてたわ。
いつの間にか順番が回ってきてたっぽい。
木手くんごときにうちの大事な告白邪魔されたらたまったもんじゃない!
平良くんの後について舞台の真ん中に出る。
その時にちらーっと平古場くんの方を見たら、まあ顔の怖いのなんの!
しかとその隣にいた甲斐くんも似たような顔してやがる!
なんやねんその顔!
そんなに浮かれたうちがムカつくと言うのかね!
うちなんかに構ってなくて自分のコンテストに集中しろってんだ。
平古場くんも甲斐くんも、えっモデルさん?ってくらいかなり可愛い子が相手だってのにね!

「さあ、続きましてはエントリーNo.4!3年3組の平良君!お相手は本土からの転校生ということで有名な、3年2組の神矢さんでーす!」
エッ

一丁前に蝶ネクタイなんか付けてる司会の言葉にビビる。
ちょっと待って、うちって有名なの?
ただの平凡転校生ですけど!?
いや、比嘉中の中でも有名で(何故か)人気のあるテニス部のマネージャーしてんだからそれなりに有名なのか…。
うわーイヤだー、そんなの求めてないー。
とかわちゃわちゃ考えているうちを差し置いて、蝶ネクタイ司会はとんとんと進行していく。

「さぁて、平良君!始める前に意気込みをどうぞ!」
「えー、っと。格好付けるのはわんぬキャラじゃないんで、普段通りにやるだけです」
「だ、そうです!いやあ〜さすが!今回の他薦率ナンバーワンだっただけがあります!さわやか好青年ですねー!」

えっ、平良くん他薦率1番なの?
確かに超好青年イケメンだけど!
だったら尚更、相手がうちなんて申し訳ないじゃん!?
やっべ、平良くんを好いてる女の子達に恨まれたらどうしよう!?

「はいっ、それではそろそろ本題に参りましょぉう!さぁ平良君、今回の告白は何かシチュエーションやテーマはありますでしょうかっ!?」

テンション上がってきたのか蝶ネクタイ司会者が声高らかに言った。
どこぞのテレビMCだよ。とてもうるさい。

「神矢さんはテニス部でマネージャーしてるから、部員とマネージャーってくとぅで」
「だ、そうです!ベタでありながらも誰もが憧れるようなシチュエーションッ!では、エントリーNo.4、平良君の「擬似告白」!スタートッですっ!!」

ファーン!とうるさいくらいの音が鳴る。
えっ、もう始まるの?
やっべ心の準備がまだですけどっ!?
というか、内容を何も聞かされてないから平良くんが何してくるのか分からんから余計変な緊張する!

「お疲れ様、神矢さん」
「ぅおっ、おっ、お疲れ様っす!」

うひぃ、不細工極まりない返事をしてしまった!
若干客席から笑いが起きてしまったじゃないか!
は、恥ずかしい…!

「今日も残って仕事なんて大変やっさー」
「そ、そーカナ…」

平良くんは話を進めていくけど…ちょっと待って、これリアルにうちと状況とシンクロしてない?
マネージャーして、残って仕事してるって。
実際は残らされて仕事させられてるんだけどな!

「神矢さんが居てくれるお陰でわったー部活に集中出来てるんだばぁよ。にふぇーどな」
「…」
「…どうした?その驚いたちら(顔)?」
「あ、いやー……そう思ってくれているとは…ビックリと言うか…」

残ってマネージャーの仕事していた所で誰にも感謝とかされない。
普通は感謝してくれるもんなの?
くっそ、あんなテニス部と関わってるから普通が分からないじゃないかっ!

「ははっ、面白いくとぅ言うなあ神矢さん」
「いや…面白い…ですかね…?」
「面白いさぁ。…そういう所が好きなんだけど」
「好っ…」

す、好きって!
えっ、こ、この流れ!?
こんなナチュラルに告白ぶっ込んでくるのっ!?

「あ。…あはは、わっさん。なま(今)言うつもりなかったんだけど…」

照れたみたいに笑って頬をかく平良くん。
これ、これも演技なのか!?
演技だってんなら、とんでもない演技派じゃんよ!

「わん、神矢さんが好きです」
「う、うぉう…」

平良くんの改めた「好き」発言に、客席から女の子達のキャーという黄色い声が聞こえてきた。

「いつも頑張ってる所とか、たまに言うちょっと抜けてる所とか。見てて飽きねーらん。だから、もう少し近い所で神矢さんを見ていたい」
「…」
「…だから、わんと付き合ってくれませんか?」
「!」

客席がまた沸いた。
う、うわー何コレ、すっごい恥ずかしい!
擬似だって分かってんのに、こう目の前であまーい!台詞言われたら照れる!照れてしまうYO!

「…駄目?」
「だっ…」

ひいぃ!
何、なんなんだ、その子犬みたいな顔は!
そんな顔して近付かないで!?
好青年の中に子犬的要素もあるとか、こんなんもう平良くん優勝でいいじゃん!?

「え、えーと、えー…だだだ、ダメ?駄目とはっ…?」

あ、やばい、頭の中混乱しているゾ☆
な、なになに、これはどうやって返事するべきなんだ…!?

「…涼音は、わんぬくとぅ嫌い?」
「!」

こ、ここで名前呼ぶんかーい!
てか平良くん、うちの名前知ってたんかーい!
うわうわ、ダメだ完璧にテンパってきた!!

「き、きら、嫌い…嫌いとか、そ、そんな滅相もな、」
「…そこまでにしとけ、ふらー」
「はっ?ぐぅえっ!!?

襟首を後ろから思いっ切り引っ張られた!!
そのまますっ転ぶ!?と思ったけど、うまい具合にキャッチされて倒れずに済む。

「…て、え?甲斐くん?」

振り返ったら、キャッチしてくれてのは甲斐くんらしい。
そんでもって、うちの首根っこを引っ張りおったのはやはり平古場くんらしい。
今はうちの前…平良くんと何故か対立するように立っていらっしゃる。
え?なんでコイツら前に出て来た?
まだ出番でもなくね?
なにこの状態?

「…えっと」

平良くんも戸惑った顔している。
平良くんだけじゃなく、蝶ネクタイ司会者も舞台上の他の人達もだ。
客席の人達なんか静まり返っちゃってるよ!
うわあ嫌ーな空気!

「聞いてりゃ何よ、その告白」
「え?」
「子供騙しにも程があるさぁ。そんなんでコイツが頷く訳ないだろ」

ちょちょちょ、何言ってるの平古場くんは?

「涼音は単純やし騙されるかも知れないけどなぁ」
「何だと」

甲斐くんが何気に酷いことを言ってくる。
誰が単純だがね!?…とうちが文句言うより先に、甲斐くんも平古場くんと同様平良くんの前に出た。

「…涼音に手ぃー出したいんなら、わったーの許可取って貰わねーとな」

甲斐くんの言葉の後、しん、と会場が静まった。
うちと同じくぽかーんとしていた蝶ネクタイ司会者が、はっとしてマイクを握り直した。

「…こ、れは………乱入だぁぁぁ!

わああああああ!
きゃあああああ!

と、次の瞬間そりゃあもう会場が割れんばかりの歓声に包まれた!
え、何この歓声?うるっせ!
というか乱入!?
あっ、平古場くんと甲斐くんのことか!

「さーあなんとなんと!平良君の告白に待ったがかかりましたッ!乱入したのはぁエントリーNo.5の平古場君とエントリーNo.6の甲斐君でありまぁす!」
「え」
「い、いや…」

自ら割って入って来たってのに、急にしどろもどろになる2人。
なぜだ。

「予定外ではありますがぁ、これはこれでアリでしょう!会場の盛り上がりがその証拠です!さて2人は一体どんな告白をするのでしょう!?さーぁ益々盛り上がって参りましたぁ!」

盛り上がってんのは司会者お前だろ!とか言いたいけどそんなの言える雰囲気でもない。

「さあっどちらからでも構いません!次、告白をするのはどちらから!?」
「だ、だからそう言うつもりじゃ…」

蝶ネクタイ司会者がマイクを握り締めて詰め寄るもんだから、余計に平古場くんも甲斐くんも戸惑っているぞ。

未だに盛り上がってる会場、ボルテージが上がってきている司会者、困り果てている平古場くんに甲斐くん、そんでもって置いてけぼりのうちと平良くん。
そして客席の方に目を向けると、盛り上がる観客に混じって木手くんが眉間あたりに手を当てていらっしゃる。
うん、木手くんも「何だこれ」と思っているっぽいね。
うちもそう思うよ!

どうしたらいいか分からないまま、しばらく会場の歓声は止まなかった。




prev|next
[戻る]