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彼らの優しさ 1

「はいはーい、失礼しますよ〜」

部室のドアを軽くノックして中に入る。
部室には平古場くんと甲斐くんしか居ないのは知ってたからノックする必要なんかないと思うんだけど。
例え着替え中だったとしても遠慮とか要らない。
日々海に入って着替えとか目の当たりにしてるんだから慣れたもんだ。

「おう、涼音」
「おう。結構早かったね2人とも。何の用だったの?」

ちょうど着替え終わっていたらしく、平古場くんはこんな暑いのに懲りもせずジャージを羽織っていて甲斐くんは帽子を被り直していた。
2人ともそれぞれの用事で部活には遅れて来るって聞いてたんだけど早かったな。
むしろそのまま部活とか来なくても良かったんだけど!……とかいう本音はしまっておく。

「委員の仕事さぁ。ま、委員会っつっても次回の議題だかのプリント渡されただけだったしなー」
「わんも追加課題渡されただけだったぜ」

平古場くんは風紀委員の仕事で、甲斐くんは定期考査の補習の呼び出しだったようだ。

「フーン」
「……自分で聞いときながら興味無さそうだな涼音」
実際興味無いから
「おい!」
「ウソでもそこは肯定しろよ!」

ダブルツッコミが返ってきた。
でも事実だからね!

「……ってそうじゃないよ。木手くんにボール籠持ってこいって言われてんだった。早く戻らないと細切れにされる!」

大事な仕事を押し付けられていたことを思い出す。
無駄話してる暇なんてなかったんだって!

「ボール籠ぉ?って、あれか」

甲斐くんの示す先、ロッカーの上にボールの入った籠が置かれてた。

「げっ、高っ!」

なんであんなとこに置いてあるの!
取ることを考えて置けよ!
うちじゃ取れそうもないよ!

「あれを持って来いとか言ったのか木手くん……鬼畜か……」
「神矢小っこいからなぁ、まあちばりよー」

ひらひらと手を振って平古場くんが言った。

「取ってくれねーのかい!いやこの流れだったら取ろうよ!?」
「自分でやりもしないで人頼るなっつーの」
「くっ……!」

大変イラつくがその通りでもある。

「……ふん!いいしあれくらい取れるし!」
「無理すんなよー、涼音〜」

甲斐くんに言われるが取ってはくれないのね。そうなのね。

「……大丈夫!これくらい…とれ……っ」

他人行儀な奴らを後ろにボール籠に手を伸ばす。
うん、分かってたけどね。
分かってたけど全然届かないよね!

「くっそぉぉぉ……!」
「……やっぱ小せーんだな」
「小せーのは脳味噌なんだろ」

後ろからそれはもう他人事だとばかりにのんびりとした平古場くんと甲斐くんの声が聞こえる。

「〜っ、見てるだけならさっさとコート行けやアホぉ!」

何でこいつらは手伝う気ないのにまだ居るのかな!
着替え終わってんだから部室から出てけよもう!
こんなにも必死なのに馬鹿にしてくるとか、裁判所に訴えて裁判起こすぞゴルァ!

「ハハッ、わっさん。なんか見てたら面白かったからなー。…よっと」

かるーく笑った甲斐くんがいとも簡単に籠を取った。
うり、と渡される。

「……ありがとう」

ちくしょう、そんな簡単に取れるなら取ってくれればいいじゃんよ。






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