君によく似たぬいぐるみ 1「…あ」
「ん?どーした、涼音」
部活終わり、甲斐くんの寄り道に付き合ってたらとあるゲームセンターが目に止まった。
正しくは、目に付いたのはゲームセンターの入口にあったUFOキャッチャー。
「ねえ、見てこれ!」
うちが指差してUFOキャッチャーの方に行くと甲斐くんも後ろから着いてきて覗き込んだ。
「ぬーよこれ、ぬいぐるみ?」
「キーホルダーになってるっぽい」
頭からチェーンが出てるから鞄とかに付けれるんだろうな。
ちなみにこの手の平サイズのぬいぐるみ、色んな種類の犬が服着たりリボンつけたり、オシャレをしている。
顔は揃いも揃ってとぼけた顔してて、無駄にかわいい。
「というかあれ!あのてっぺんにいる犬見てよ甲斐くん」
「てっぺん?」
UFOキャッチャーのガラスをトントン叩いて教える。
「…あぬ帽子かぶってるヤツ?」
「そう!なんというか甲斐くんに似てない?というか似てるよね!」
「わんに?」
甲斐くんが目を丸くさせる。
うちが指差す先には茶色いモコモコとした毛並みの犬が。
ポメラニアンかな?
しかもその犬、頭にちょこんと帽子をかぶっている。
その帽子がまた甲斐くんと同じ形で同じ色の帽子。
「…そうか?わん、こんな間抜けなちら(顔)してるかぁ?」
「その間抜けな顔が甲斐くんそっくりじゃん!」
「ひでーな!」
心外だとばかりに言う甲斐くん。
でもそっくりなんだから仕方ないよね!
「でもかわいーから良くない?この中で一番可愛いと思うんだけど!」
そうはっきり言うも甲斐くんは首を傾げる。
「…分っかんねーなー」
「分かれよ!…いいなーあれ…欲しいけど取れそうにないし…」
UFOキャッチャーなんて器用なこと出来ないしなぁ。
欲しいけど、何千円使っても取れないだろうな…。
「うーん…でも…ううぅ〜ん」
「やんねーの?」
「いや…うーん…でも…」
うんうん唸る。
欲しいんだけどなー、でもなー…。
「…いや、いいや。うち下手くそだしさ。たぶん取れないしね。行こーか」
そう言ってUFOキャッチャーの前から離れる。
というか今からは甲斐くんの案で佐世保バーガー食べにいく予定だったし。
ここでお金使ったら食べれなくなっちゃうからね。
「ねぇ甲斐くん、そのお店ってどこにある……って、あれ」
振り向いたら甲斐くんが居なかった。
てっきりついて来てると思ったのに!
どこだと思ったら、まださっきのUFOキャッチャーの前に居た。
え、なにしてるの彼。
「何してんの、行かないの?」
わざわざ戻って聞く。
うちって偉いな。
「ん、ちょっと待ってろって」
「え?って何してるの」
うちが甲斐くんの所へ行くと、何故か甲斐くんはUFOキャッチャーをしていた。
あのうちが見てた犬のぬいぐるみのUFOキャッチャーだ。
「あれ欲しいんだろ?」
「え、ああ、そーだけど…え?甲斐くんこういうの得意なの?」
「あー、あんましたくとぅねーらん。けどま、これくらい出来るさぁ」
「まじか!えっ、じゃあ取って取って!あの甲斐くん!」
「いやアレわんじゃねーし。ま、任されー」
なんか凄い頼もしいな甲斐くん!
これならホントにあのぬいぐるみ取れるかも知んない!
そう思ってる間にも甲斐くんが器用にぬいぐるみのチェーンにアームを引っ掛ける。
これいけるんじゃね?って思った…矢先。
「あっ」
するっとアームからチェーンが滑り落ちた。
ころんとぬいぐるみの山に甲斐くん…じゃない、ポメラニアンが転がった。
「あー、惜しかったねぇ。てか甲斐くんマジ器用じゃん!」
「…やてぃん取れてねーし」
甲斐くんを見れば不満そうな顔をしていた。
「後少しだったんだけどねー」
「…決めた。ぜってー取る」
「は?」
急に意気込んだ甲斐くんに驚く。
「え、何そのやる気。なんで急にやる気スイッチ入ったの?」
驚いてる間にも、甲斐くんはお金を入れてまたUFOキャッチャーに向かった。
おーい、うちの話聞いてくれー。
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