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 比嘉中と小旅行(出発前)

翌日の朝。
今日も炎天下で部活かぁ…やだやだ。
ちなみに望んでもないのに朝は平古場くんが家まで来る。
んでもって途中で甲斐くんを拾って学校へ行く。
なんでだろうね。
小学生の集団登校でもあるまいし。
でもこれが日常になってるから、今更変えるのも出来ない気がする。
仲良しか!
…とかひとりツッコミを入れながら家を出た。

「おう」
「おー名無しー」
「…え?あれ甲斐くん?今日は早いな」
「まーなぁ」

平古場くんの隣に甲斐くんもいる。
いつもは甲斐くん家に行っても寝てることがあるってのに、珍しいこともあるもんだ。

「……え。というか、なんか2人とも荷物多くない?」

2人とも、いつものテニスバックに加えて大きいカバンを持っている。

「あー、夏休みの宿題でも詰めてあんの?木手くんに進捗聞かれて終わってない課題持って来いって言われたとか?ははっ!計画性ないと大変だなー!」
「ふらー、そうじゃねーらん」
「というか荷物ならやーこそ少な過ぎやし」
「少な過ぎぃ?」

少な過ぎとはどういうことだろうか。
いつもと変わらんスクールバッグだけども。
たかがマネージャーだしテニスラケット要るわけでもなし。
前に手ぶらで言ったら木手くんにしこたま怒られたから、ほとんど飾りで持ってるようなもんだ。
このどこが少ないって言うんだ。

「そんなんで一泊出来るんばぁ?スゲーな!」
「現地調達でもするつもりかよ…いなぐ(女)としてどうかと思うさぁ」
「…………はっ?

感心した顔の甲斐くんと、呆れ返った顔の平古場くん。
え、ちょ、ちょっと待って。
一泊?

「待って待ってどういうこと?一泊ってなに?」
「は?もしかして旅行のくとぅ知らねーのか?」
「旅行のことは聞いたけど……え?旅行って…今日…からとか言わないよね?」
「ちゅー(今日)だぜ?」
「…エッ」

思考が停止する。
なにそれ旅行って今日?今日から?一泊?
アハハ、だから2人とも荷物多めなのね。
なるほどっ!
…いやなるほどじゃねーよ!!

「ォゥエエエエェェ!!?聞いてない知らないなにそれ!?」
「え?ちぬー(昨日)あびただろ?」
「言ってねぇがな!第一甲斐くん!時間あるって言っとったやん!!」

てっきり数日はあると思ってたよ!

「ちゅーまで時間あっただろ?」
「ねぇよ!昨日の今日は時間があるとは言わねーよ!まってまってやばい何も準備してない!」
「しんけんか…」
「じゃあなま(今)からすりゃいいだけの話さー」
「軽っ!おま、一泊旅行の準備を数分でしろと!?」
「そりゃそうするしかないだろ?」
「そ…うですけども!くそー!東京旅行なら準備念入りにしたかったよ!新しい服とかっ…」
「こうやって無駄話してるヒマあんなら準備して来いよ。遅れたら永四郎にぬーあびられるか分かったもんじゃねーらん」
「……くっそぅ!」

平古場くんに至極真っ当なことを言われた!
その通りだよ!
今はブツクサ言っている場合じゃない!
出たばっかの家に転がり込み、手当り次第荷物をカバンに詰め込み始めた。





「うう……絶ッ対忘れ物ある…」

あれから約5分で荷物をまとめて家を出た。
母ちゃんにも一応泊まりの旅行ってことを伝えたら「そ。じゃあお土産よろしくー」って軽〜く手を振られた。
親としてどうかと思うよねっ!

「そんな鞄膨らむほど荷物詰めといて忘れ物とか笑えるな」
「うるさい金髪。ふん、いいもんね!もし忘れ物あったらあんたらから強奪してやる!
「強盗かよ」
「わんもなんか忘れてたら凛に借りるつもりさー」
「やったー他力本願過ぎんだろ…」

平古場くんの顔が呆れ返ってる。
知ったこっちゃないし!
こちとら準備する時間なかったんだからな!


…平古場くんと甲斐くんの持ってた荷物を優に超えるくらいのバカでかい荷物を背負って、なんとか学校に着いた。

「危ねー、ギリギリだったなー」

時計を見た甲斐くんがあんまり焦ってない声で言う。

「名無しが鈍いからだろ」
「いやいや鈍くないしむしろスピーディー過ぎたし!?」

速さに関しては褒められても良いくらいだよ!
正確さは置いといて!

「遅いですよ」
「!」

若干苛立った木手くんの声が聞こえた。

「悪ぃ悪ぃ、やてぃんセーフだろ?」
「セーフとかじゃないでしょう。何故貴方達は何度言ってもギリギリの行動をするんですか」
「わんはちゃんと時間通り家出たさー。名無しが間抜けなくとぅしてたせいで遅くなったんだばぁよ」
「人のせいか!ふざけ倒せ!」
「……名無しクン?」

生意気なこと言った平古場くんにキレてたら、木手くんが疑問形でうちの名前を呼んだ。
平古場くんの影で木手くんが見えなかったけど、一歩ズレてみると目が合った。
…なんだそのビックリした顔?

「なにその顔こわ」
「…何故名無しクンがここに居るんです?」
「は?」

なんか木手くんに酷いこと言われた。

「なんで?居たらあかんの?」
「居たらいけないというより、今回の遠征について貴女には話をしていなかったはずですが」
「そうなんばぁ?」
「てっきり直前にあびて名無しを困らせて嘲笑うもんだと思ってたさー」
「…流石の俺でもそんな悪質なことはしませんが」
「……」

しそうだから、うちも甲斐くんもそう思ったんじゃないか。

「え、それより話さなかったってことは来たらダメってやつなの?」
「…駄目と言いますか…今回は遠征ですからね。泊まりがあるのに一応とりあえずぎりぎりでも女子ではある名無しクンを連れて行くのはどうかと思ったんですよ」
「うちとしてはその言い方がどうかと思いますがね!」

どれだけ女子として認めるつもりがないんだ。
やっぱり女扱いはされないのね!

「……それに相手校は…」
「え?」
「……いえ、何でもありません。…まあ、雑用も居ないよりかマシかもしれませんね…」
「ひっど!雑用て!」
「ああすみません。言い方が悪かったですね。キミは雑用にもなりませんでしたね
「そういう訂正が欲しかったわけじゃないし!?」

なんでより蔑まされなきゃなんないんだ!

「来てしまったものを追い返すほど非道ではありませんので。来たかったら来たらいいですよ」
「え、そうなの?」

帰れ、とも言われるかと思ったけどまさかの了承がきた。
だけど来たかったら、と言うんなら行かなくてもいいんだよね!?

「うーん、じゃあ帰」
「行くよな!」
「え?ちょ、甲斐くん?」
「分かりました。好きにしてください」
「え?いやいやいや」

うち帰るって言おうとしたのに!
なに勝手に決めてんだ甲斐くん!
なに勝手に分かってんだ木手くん!

「せっかく準備したんだから行った方がいいだろ?」
「せっかくって言うほどの準備はしてないけどね!?」
「やてぃん本土とかそうそう行けねーだろ。永四郎もああ言ってんだから行っとけばいいさぁ」
「うえぇ…それもそうかもだけど…」
「うり、凛も来て欲しいってあびてるやっし」
「は!?た、たーがそんなくとぅ…」
「えー?んじゃあしょうがないナー!寂しんぼの平古場くんのために行ってやるかー!」
「ふ、ふらー!」

がつん!

「あだっ!?」

強烈な一撃を後頭部に受けた!
ほんのカワイイ冗談なのに!
ほんっとにこの金髪野郎は冗談が通じないんだからクソー!

「照れんなって凛〜」
「照れてねーらん!」
「うるさいよ。最後に来た人が何いつまでも騒いでるんです。置いて行きますよ」

気付いたら、うちら以外はバスに乗り込んでいた。
いつの間に。

「あー分かったさぁ。いちゅんどー名無し、凛」
「え、待ってよ甲斐くん!ほら行くよ照れ屋の平古場くん!」
「たーが照れ屋よ!?」

また叩かれそうになったのを既で避けてバスに逃げる。
おーこわ!

「……まったく」

騒がしいうちらを見て木手くんがため息をついたけど気にしないでおこう!
ま、甲斐くんが言ったやつじゃないけど、せっかくだしね!
東京に行けるってんなら楽しまないとね。
荷物が心配だけど、なんくるないさーってやつだ!
東京旅行楽しむぞー!