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※もしも比嘉長編の夢主と木手が付き合っていたら

「キミは自分の仕出かしたことを理解しているんですか?」
「うぁい…」
「何度忠告したら分かるんですか。俺は再三繰り返していますよね?」
「うぇい…」
「もう少し自覚を持って行動しなさいよ」
「うぉい…」

さっきから延々と木手くんに説教されている。
ちらっと時計見たけど、木手くんがうちの部屋に来てからもう30分は続いてるね。なっげ。
昔みたく正座はさせられてはないけど、だからって目の前で仁王立ちして怒らなくてもいいじゃんね!?
昔みたく言い方は高圧的だし相変わらず顔も怖いんだからさー!

「聞いてるんですか」
「いひゃいいひゃいいひゃい!!」

ほ、ほっぺたギューって引っ張られた!

「す、すみまひぇん!きーてまふう!」
「まったく」

ふん、と鼻息も荒くしながら木手くんが手を離した。
くっそー、前に比べて力加減はされてんの分かるけど、それでも痛いもんは痛いんだからな!?

「…と言うか、まじで木手くんの沸点が分からん…」
「いきなり何ですか」
「いやそーじゃん。今日だって別にうちやましいことしてないし!なんで説教されないとイカンの!?」
「充分しているじゃないですか。今日も平古場クンと親しげに話していたでしょう」
「親しげって…今日は天気の話しかしてなかった気が…」
「それに甲斐クンとの距離がいつも以上に近かったじゃないですか」
「はっ?え、そうか…?」
「普段より2.5センチ近かったですよ」
こまかっ!

2.5センチて!
てか目測で2.5センチって分かるもんか!?
…木手くんなら出来そうなのが恐ろしい…。

「…木手くんってさぁ」
「何です」
「見かけによらず結構嫉妬深いよね」
「それの何が悪いんですか」

否定はしないのか…。
木手くん、初めはうちをさんざん足蹴にしてたってのになんか気付いたら彼氏という立場になってたんだよなぁ。不思議なもんだ。
そのせいなのか何なのか、前よりかは何気にやさしーく?なったような?気もしなくもない。
でもそれに加えてやたらうちの行動に口出しするようになってきた。
説教されることは前からだったけど、最近はその内容がもっぱら今みたいに誰との距離が近いとか馴れ馴れしく口を聞いてたとかだ。
あの木手くんが嫉妬!?とかはじめはビビったけど、あの木手くんが嫉妬という概念を持ってくれることが嬉しくないなんてことはない。
いや、まあ、うん。
はっきり言って嬉しいです。

「…何ニヤニヤしているんです」
「しっ、してないし!?」

あぶないあぶない顔が緩んでた。
ま、どーせ木手くんのことだ。
うちが何考えてるかなんか分かってるだろーね。
だからこそいつもの木手くんより今は顔付きが怖くない。
若干だけどね。
それに気付けるようになったうちもすごいと思うわー。

「…とにかく、今日のことはあの2人にまたきつく言わないといけませんね」

またなんだ。
前もしたのか。

「調子に乗った彼らがキミに手を出そうものなら、俺は手加減が出来る自信はありませんからね」

なんだそれ。
それも嬉しいんだけど。
…じゃなくて!

「い、いや木手くん。あの2人が手ぇ出すとか思えないから」
「何故です。彼らの手の早さはキミも分かっているでしょう」
「そうだけどさー…でもうちに手出す訳ないって。木手くんが居るんだから」

木手くんに逆らったらどうなるかなんて目に見えてるだろうし。
下手したら命の危機とまでになるかも知れないのに、そんな危険を冒してまでうちに手ぇ出すわけがない。
うちにそんな魅力ないしな!?

「……まあ、そうでしょうね」

お、木手くん納得したっぽい。
良かった、うちのせいで人が死ぬところだった。

「では向こうを潰すのは止めましょう」
「潰すて…」

や、やっぱ恐ろしいこと考えてたんだな…。
止めてくれるんならそれでいいけどさ!

「代わりに」
「ん?」

木手くんがうちの目の前に屈んだ。
代わりに?

「キミを躾けることにします」
ゲッ!?

う、嘘だろ!?
矛先がうちに向いた!

「えっ待って待って!?充分躾られてるから!もー充分過ぎるから!」
「幾らしても充分ではありませんよ。…この先何が起こるかなんて、分かったものではない」

こ、こわいこわい!
木手くんの声のトーンが下がった!
これガチのヤツやん!
や、やだよー叩かれたくも怒られたくも説教されたくもない!
だったら平古場くんか甲斐くんを潰してくれた方がいいわ!
自分本位だって?そりゃそーさ!
痛い目なんかあいたくないんだからっ!

「覚悟してください」
「ひ、ヒィ…!」

木手くんのコッワイ顔が目前まで迫ってきた!
覚悟ってマジ何する気なんだ!?
叩かれても何されてもいいように歯ぁ食いしばってギュッと目を瞑る。

「ん」

……でも想像してたような痛みは来なかった。
来なかったというか…別のものが来たというか…。

「…え」

目を開くと目の前には木手くんの顔が。
そして唇にまだ残ってる感触。
え?き、キスされた?

「し、躾って、こういう…?」
「それ以外に何があるんですか」
「えっ…と…いや…木手くんのことだから、説教されるか最悪叩かれるのかと…」
「キミはどんな目で俺を見ているんですか」

木手くんの眉間にシワが寄った。
いや、さっき平古場くん達のこと潰そうとしてたじゃないか…!

「力での支配で繋ぎ止められるものなど高が知れています。そんなもの俺は望んではいません」

普段から木手くん、力ですべてを支配してる気がするんだけどね…。

「…またなにか失礼なことを考えていますね」
「え゛っ!?い、イヤベツニー…?」
「…全く」

はあ、と木手くんにため息つかれた。
うちが顔に出やすいってのもあるけど、木手くんはまじで心読むのプロだから困る。

「まあ、それも含めて躾てしまえばいいだけですがね」
「ウェッ?ちょ、…んっ」

うちが言葉を発するより先に、またキスしてきた。
木手くんに対抗…反抗なんか出来るわけがない。
されるがままに床に押し倒された。
上手いことクッションが下になって痛くはなかったけど…。
木手くんはこんな見た目してて、怖くて横暴で偉そうで言動に有無を言わせない強制力があるってのに、キスはやたら長くてしつこい。
いや、しつこいは言い方が悪いか。執拗?
…とにかく、何度も何度も、こっちの息が続かなくなるくらいに、長い。
それも嫌じゃないんだけど…むしろ、苦しくなるくらい続けてくれる木手くんに嬉しくなる、んだけど…。
ああだめだ、頭がくらくらしてきた。
それに…。

「き…て、くん……木手く、ん」
「…何です」

途切れ途切れだけど声掛けたら離れてくれた。
やっと酸素が満足に吸える…。

「め、眼鏡……当たる…」

さっきからほぼゼロ距離だったから、木手くんのアンダーリム眼鏡が顔に当たるのなんのって。
それを伝えたら木手くんも気付いてなかったのか「ああ」と言った。

「それは申し訳ありませんでした」

そう言って眼鏡を外してテーブルの上に置いた。

「…」

たったそれだけの動きだなのに、なんか目で追ってしまう。
それだけの動作だけでも格好いいし無駄に色っぽいって。
なんなんだ。ほんと何なんだよ木手くんは…!

「…どうしたんです?」

うちの視線に気付いた木手くんに聞かれてしまった。

「……躾、とかさ…別にもう今更じゃん…うちが木手くん以外見れないのなんて分かってんじゃないの…」

怖いとか、偉そうとか思うけど。
逆らえないとか思うけど。
でも、いつでもそばに居てくれるし、何があっても助けてくれるし…全部をひっくるめて好きなんだよなぁ…。
本当に今更、木手くん以外は見れない。

「…そうですね」

少し驚いた顔をしてた木手くんだったけど、ふっと笑った。

「分かっていますが…それでもキミが欲しくなる時があるんですよ」
「え…」
「キミは無いんですか?俺が欲しくなる時が」

木手くんが手で、手の甲でうちの頬を撫でた。
触れるか触れないかの所を、わざとらしく。
くすぐったい…というか、うわ、なんかぞわぞわする…っ!

「どうなんですか?」
「…っ」

木手くんが目を細めた。

「ある…けど…さ」
「でしょうね」

で、でしょうねって…!
も、もー!なんなんだホント!その偉そうな笑みはぁ!
これ確実に言わされたやつだよ!

「……ほんっと、木手くんてずるい…」

悔し紛れに言ってやる。
はっきり言うと何言い返されるか分からないからね。

「…どちらが狡いんでしょうね」
「…え?」

どういうことだ?

「……いえ、何でもありません。それより今日は寝かせるつもりはありませんので」
「エッ!?ま、まじですか」
「覚悟してくださいと言ったでしょう」
「言ったけど…」

あれはこういう意味だったのか…!
木手くんがこう言って途中で切り上げた試しはない。
だから本当に今日は寝れないんだろうなあ…。
それはもう言われた通り覚悟するしかない。

「あ、あの、木手くん…」
「何ですか」
「…あ、あんまり…激しくはしないで…ください…」

と、なんとも気弱にもごもご言う。
は、恥ずかしいけど、木手くんのことだから前もって言っとかないと何されるか分からないし…!
だけど木手くんときたら、口の端を上げるというなんともむかつく笑みを浮かべた。

「…保証は出来ないですね」
「えっ!?な、なんで!」
「俺を煽るようなことを、俺を誘うような顔で言うからですよ」
「誘っ…べ、別にそんなつもり…、ちょ、木手く…っ、くすぐったい…!」

木手くんがおでこやら瞼にキスしてくる。
くすぐったいし、それよりまず恥ずかしい…!

「ほら、そういう顔のことを言っているんです」
「うぐぅ……させてんのは木手くんじゃん…」

恥ずかしさのあまり顔を手で隠して呻く。
ううぅ、顔が熱いんですけど…!

「…ふ、そうですね」

笑った声が聞こえる。
顔を覆っていた手を剥がされ指を絡められる。
おずおず視線を向けると、珍しい…こともないけど、木手くんはすごく優しい笑顔で。
それについ見蕩れてたら木手くんの顔が近付いた。
自然に目を閉じたら、それと同時に唇が重なる。
温かくて、木手くんの匂いがすぐ近くにあって、ぎゅっと手を握れば優しく握り返してくれて。
…なんか悔しいんだけど、木手くんのことがすっごく好き、なんだよなぁ…。


おわり