小説 | ナノ





少し長引いた仕事を終えて溜め息混じりにアポロンメディアのイントランスへと向かう途中、見かける愛しい姿に驚いた。

「なまえ、」
そう彼女の名を呼べば俯き気味に下を向いていた顔がぱっと上がり、古い表現なのだろうけど花が咲いたように可愛らしく笑った。

『バーナビー。お仕事今終わったの?遅く迄お疲れ様』
「有り難うございます…それより、何故ここに?」
『バーナビーと一緒に、帰りたくて…駄目だった?』

駄目、なんてどうしたら言えよう。
何時も素直じゃなくて憎まれ口を多く叩く彼女からの、お誘い。それに上目遣いと小首を傾げられては、お手上げだ。…可愛い。

駐車場迄共に行き、愛用している赤い車の前に立ち助手席のドアを開けてやると笑顔で乗り込んで座るなまえ。一言注意を告げてからゆっくりとドアを閉めると自分も運転席へと乗り込んだ。

『ねぇ、バーナビー。今日、泊まってもいい?』
よく晴れた夜空を眺めながら問いかけられた質問に自然と頬が緩むけれど、二人きりのこの車内では気にする必要はなくそのまま穏やかな口調で彼女に肯定を告げた。
「なまえから言ってくれるなんて、珍しいですね。勿論、構いませんよ」
構わない、だなんて少し余裕のある言い方をしたけれど内心少しのスピード違反は許して欲しい程に気が急いていてアクセルを踏む足に力が入る。

『ふふ、珍しいでしょう?今夜だけ、何時もより30%増量でバーナビーに甘えるの』
「…今夜、だけ?……嗚呼、」

楽しそうに笑うなまえを横目で盗み見て、その意図に気付いては頷いた。
そうか、今日はスーパームーンだ。

気付いてから目の前に浮かぶ月を見上げれば確かにどことなく何時もより大きく見えて、それを確認しては車道に視線を戻しアクセルを踏む力は増して早く早くと帰宅を急ぐ。

上がった速度に悪戯な笑みを浮かべる彼女を、月明かりが照らしていた。





漸く自宅へ辿り着き玄関をくぐれば直ぐさま、小さく柔らかななまえの身体を抱き締めた。
性急だろうと分かっていたけれど、だからといって止められるものではない。啄むように唇を重ね合わせ、その度苦し気に吐き出される吐息さえ逃したくはないのだから。

『バーナ、ビ…ちょっと…ん、待っ…』
嫌だ。と口にする事もなく拒む言葉を発する唇に何度も何度も口付けを落とす。
舌を割り入れ口内を好き勝手に動き時折柔らかななまえの舌を吸って、上から自分の唾液を流し込み
『っ…ん、く…』
ごくり、となまえの喉が鳴る。

こういった行為は初めてではなくて、なまえの快楽を引き出すのはわりと得意だ。
密着した身体に深く激しいキスの嵐。ほら、これだけで蕩けていく。

潤んだ瞳で弱々しく背中へ手を回すなまえを、今日は特別30%増量で何時もより近く感じようか。

次の日きっと立てない貴女から叱られるのは覚悟しておこう。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -