小説 | ナノ





『バーナビー、日本の月には兎がいるんだよ』
「…それと僕に何の関係が?」
『別に関係があるとか言ってないよー』
「…そうですか、でしたら結構」

兎、というワードを自分と関連付けられるのが嫌いな彼は過敏に反応するらしく、それが面白くて堪らない。

『バーナビーはお餅好き?』
「お餅?ええ、好きですよ」
『月の兎もね、お餅が好きなんだって』
「……忘れてました、そんなに好きじゃありません。お餅」

あはは!思わず声に出して笑ってしまいバーナビーから睨まれてしまう。
けれどそんな事気にならない位可笑しくて

『ふふふ』
「何笑ってるんですか」
『兎、可愛いのに』
「だから何だって言うんです、可愛いだなんて名称されても全く嬉しくありません」
『兎、私好きだよ?』
「………」

そう言えば黙る彼。言ったら怒るから言わないけど、可愛いなぁ。
代わりに一言

『バーナビーの方が好きだけどね』

そう言えば耳が少し赤くなっちゃう彼。嗚呼、可愛い。
だけど

「当たり前です。貴女は、僕のものなんですから」

バーナビーの後ろに浮かぶ丸い月から差す光に金色がキラキラ輝いて、そう真剣に言うものだから今度は私が赤くなる番。
狡いなぁ、結局最後は格好いいんだもん。

月ではなくて、目の前の兎さんに私の心は焦がれるの。


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