頭の中が混乱し過ぎて真っ白でやり過ごした一日、公共機関等…ましてやポセイドンラインの乗り物で帰る気になんて更々なれず、少し長い道程を歩いて帰る。
スカイハイさんが全てを知っていた事は、きっと何ら不思議では無いだろう。
僕自身がそう仕組んでいたのだから。…結果は自分の浅はかさに首を締められたものだったけれど。
嗚呼、本当に、浅はかという言葉がぴったりだ。
考えもよらなかった。いつもにこやかに笑っているスカイハイさんが、僕と何等変わりない男としての独占欲や顕示欲を持っている事すら。現状から言うなれば、同列ではなく僕より遥かに当たり前の欲求ではあるけれど。
家路をなぞる足取りは重く、下ばかり向いていたせいか首が痛い。市内のネオンも今は煩わしくて、苛々する。
様々などす黒い感情が僕の中を占めるけれど、今明確に一つどれかを挙げるとしたら
敗北感。
自分が人より何かに秀でてるなんて思ってやしない。ヒーローの中でもお荷物な事くらい分かりきってる。人としての個々とした才能は勿論ネクスト能力だって僕はいつでも劣っている事は、分かってる。
だけど、だからって、どうしてこうも何一つ上手くいかないんだっ…
淡い淡い期待に過ぎなかったけれど、スカイハイさんに事がバレたらそれを機に別れてくれたら…なんて思ってた。例え僕が能力を利用していた事が公になったとしても、そうすればなまえが誰かのものだという現状を打破出来ると思った…のに、現実はこうだ。
スカイハイさんの僕なんか眼中にない顔が脳裏にこびりついて離れない。
擬態なんて能力、持つんじゃなかった。
結局どうしたって"僕"自身は求められないじゃないか。どう足掻いたって何かの誰かの身代わりでしかないじゃないか。"僕"は僕を棄てないといけない能力なんて、持つんじゃなかった。
なんて、惨めなんだろう…。
不意に、歓声が聞こえる。
嗚呼、パトロール中だったスカイハイさんが万引き犯を捕まえたのか…もう、そんな事どうでもいい。
ただただ、優雅に高らかに上から僕を見下す様に鳴るジェット音に頭が割れそうに痛かった。