ベッドに潜り込んだら寝てしまう訳で…
ああ、やってしまった。
家に帰って来たままの格好だから服がシワシワだし、メイクはドロドロだし…兎に角、酷い見た目。
重い溜め息を吐き出しながらゆっくりと身体を起こしてとりあえずお風呂場に向かう。
今日はちょっと良い入浴剤でも入れようかな…そう思いながら付けっぱなしにしていたらしいテレビが視界に入る。
深夜番組が放送されていて、いつの間にか終わったらしいヒーローTVの事を思い返し彼は今日も一日無事に仕事をこなし終えているのだろうと自然に安堵の息が出た。
と、同時に…自嘲の笑みがもれた。
自惚れも大概にしなきゃ、痛い目を見るのは自分だって分かってるんだよ。
いつからかバーナビーさんを中心にばかり物事を考えるようになってしまったこの癖を、直さなくちゃ。
またジワリと浮かび上がってしまいそうになる涙をぐっと下唇を噛んで堪える。
すると、訪問者を告げるベルが鳴った。
こんな時間に誰だろう、非常識だな。今深夜2時だよ?天体観測にでも誘いに来たんだとしたら待ち合わせ場所は踏切の前でしょうが。…ああ、私疲れてる。
一人でぐるぐると下らない事を考えていたら不用心にドアを開けてしまった。
目の前に現れたのは…
「誰かも確認せず扉を開けるのは感心しませんね、みょうじさん」
ドアと一緒に開いた口が塞がらない。
『え?な、んで…』
「帰り際、貴女が寂しそうな顔をしていたので」
『うん、違う。聞きたい事はソレじゃない。…なんで私の家を知ってるのよ!?』
住所なんて全く教えてないのにどうして!
予想出来る答えとは違うものを期待してはいるのだけれど…
「ちょっとヘリペリデスファイナンスの個人情報を拝借しまして…ハッキングで」
『やっぱりか!犯罪!ソレ犯罪です現役ヒーローさん!』
「ヒーローだなんて堅苦しい呼び方は止めてください。バーナビーと呼んで…今だけはみょうじさんだけのヒーローなんですから」
『スミマセンちょっと何言ってるかわからないです帰ってください』
「え?中でお茶でも?そんな気をつかっていただかなくても…じゃあ折角なので」
ちょおおお!勝手に上がらないでよ!
『ば、バーナビーさん!ちょ、駄目です!中は本当に駄目なんですったら!』
「…………」
足早に靴を脱ぎ玄関先に入った所で私の声にピタリと止まってくれたバーナビーさん…良かった、話せば分かる人だったのね!
『だから帰っ…』
「みょうじさんに"中は駄目"なんて言われると興奮しますね」
『なんの話よ!なんの!』
「え、ナニ『黙れ変態ヒーロー!』
ああ、あのまま穏やかに眠っておけば良かった!