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家に着くと一番にテレビをつけた。
簡単な事件だったんだろう、もう逮捕してインタビューを受けてる。

薄い箱の中で輝くヒーロー、あの人が私を好き?いやいやあり得ないっしょ。平々凡々な生活、顔はお世辞にも美人とは言えない、仕事仕事で女子力下がりまくり、最近いつ新しい服買ったかしら、ヒールはもう足が痛くて勝負時しかはけない、そもそも勝負時がない、しおっしおの枯れ女、そろそろ自分で言ってて辛い。
そんな、私。

『釣り合う訳ないじゃん、ぶわぁか…』
画面ごしに愛想良く笑うバーナビーさんに呟く。勿論伝わる筈もなく1人の部屋に虚しく響くだけ。1人暮らしの枯れ女はテレビに向かって話しかけるのがデフォなんだよ、二次元が友達なんだよ。そろそろ小型犬とかハムスターとか飼い始めちゃうんだよ。

分かってる。これはきっと一時の事、長くなんて続く筈ない。
月9のドラマみたいなシンデレラストーリーに選ばれるお姫様は私みたいな子じゃなくて、もっと綺麗で可愛くておしとやかで非の付け所がない子なんだって知ってるもの。

ジワリ、考えたくなんてなかった現実が頭の中いっぱいに広がって涙が出てきた。
『…ズビ、…アホくさい!なんで私がこんな奴の為に泣かなくちゃならないのよ!この年になると泣くのもキツイんだからね!ばぁーっか!』

テレビ画面に向かって思いっきり叫びながら中でキラキラと輝くバーナビーさんめがけ指を差す

すると、不意に彼と目が合った、気がした。

ドキリ、心臓が跳ね上がる。

『な、なによぉ…文句が有るなら……………会いに来て、直接言え…ぶわぁーか…』

これだから恋なんて嫌なんだ。無駄に泣けて無駄に独り言が増えて無駄に夜が酷く怖くなる。

それら全部から逃げるように、ベッドの中に潜り込んだ。

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