小説 | ナノ





結局あの後、ロックバイソンさんに引き連られトレーニングを開始し続いてスカイハイさん含め皆各々トレーニングマシンに向かい始めた為大した会話は聞けなかった。

卑怯なやり方だと、陰湿なやり方だと分かってる。
けど僕にはカミングアウトする勇気も今更止めるつもりも無いから、ただ傍観者のふりをして二人の関係に確実なヒビが入るのを待っているんだ。…それに値する、大きな種をまいて。

『すみません、今お時間よろしいでしょうか?』
…吃驚、した。なまえから声をかけて来る事は最近余りなかったから。跳ね上がる心臓と、嬉々と緩む顔を抑え込む様に一度息を飲んだ後いつもの顔を浮かべて

「…はい、何ですか?」
『玄関に会社の方がお見えになられてますよ、折紙サイクロンを呼んでくれと』
嗚呼、そういえば仕事の資料を届けに来るとか言ってたっけ。ぼんやりと頭の片隅で思い返してはみるものの、今目の前にいるなまえを眺めては昨日の情事やどこを見てもいつ見ても可愛い姿にじわりと熱が浮かぶ。

僕だけのものに出来たら…

そんな考えを吹き飛ばす様に困った顔をして首を傾げるなまえ。
僕が気持ちを伝えたらやはりこんな顔をするんだろうか。眉を下げて言葉が見つからないみたいに口を少し開いたまま戸惑い揺れる瞳を、僕に向けるんだろうか。

『あの…』
「あ、すみません。…分かりました、有り難うございます」
痺れを切らしてもう一度僕に声をかけるなまえに、漸く空想から返り待たせてしまった謝罪と伝言のお礼を告げて言われた通り玄関に向かう。

途中、スカイハイさんと目が合った、気がした。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -