「あー、死んじゃいたいなぁ」

不意に発したこの言葉に意味なんて無い。
お腹が空いただとか、眠いなんて呟く時と同じ位無意識的なものだ。

でも、これを聞いた三十郎君はえらく酷い顔をしている。
その顔あんまり好きじゃ無いのにな。

「お前冗談でもそういう事言うのはやめろ」

怒ってるんだか泣いてるんだか分からない表情で私にそう言う三十郎君。
ただでさえ冴えない顔が、もっと冴えなくなってるよと茶化しても今回ばかりは華麗に無視されてしまった。

…彼が怒ってる意味も悲しくなる意味も分かってる。
散々仲が良い人が死ぬところを見てきたんだ。
それぐらいは分かるよ。

だけど、それと同じ様に自分が生きてる事にも悲しくなるんだよ。
私を庇って死んだ親友、生きて帰ろうと誓ったその日に死んだ友人。
こんな思いをするのなら、初日にでも死んどけばよかった。
今度こそ三十郎君の前で、これを言ったら彼は怒るだろうか。

三十郎君の肩に頭を預けると、彼の匂いが私を包む。
あぁ、落ち着く。

「…俺は、お前が生きてくれていて嬉しい」

うん。

「単純に好きだからってのもある。死んでほしく無い」

うん。

「だから死にたいなんて言うのはやめて欲しい」

三十郎君の肩が少し揺れる。

「ごめんね」

聞こえないくらい小さな嗚咽。

「もう言わないから」

泣かないで。


私だって好きな人が死ぬのは嫌だ。
三十郎君だけはどうか生き残って欲しい。

三十郎君が私にも生きて欲しいと願うなら。
三十郎君が私が死んだら悲しいと言うのなら。

私も頑張って生きてみるよ。


だって、三十郎君の泣き顔ぶさいくだからね。

「おい」

ふふ。


この言葉の意味を


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