「ねぇ、なんで泣いてるの」


「ひっ、く…っ」


また、君が泣いてた。
階段の隅で膝を抱えて、1人泣いてた。


「名前ちゃん、言わなきゃ何も分かんないよ」


そう言っても彼女は何も言わない。
僕なんか忘れたみたいに、ただひだすらに泣いてる。

「はぁ…」

僕がため息を漏らすとびくりと跳ねる肩。
そんなに怯えなくても良いのに。


「だ、ってっ、しゅ、しゅうっやが」

「うん、僕が?」

しゃっくり混じりに喋り出す彼女。
ねぇ、今日はどうして泣いてるの。
"なに"で泣いてるの?

「わたっ、わたしみちゃって、っぅ」

「何を」

「っ、知らないっ女の人とっ、きすしてた」

最後の方の言葉は小さくて聞き取れなかったけど、大体彼女の言いたい事は分かる。
だってそれは事実だから。

「そうだよ、それが?」

そう告げると一層強くなる泣き声。
あぁ、少しめんどくさくなってきた。


「わたしのことっ、きらいなの?」

「はっ?」


涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔。
そんな顔も可愛いくて可愛いくてたまらない。

「何でそんな事聞くの?」

「だっ、ってわたしのこと嫌いだからそういうことするんでしょ」

可愛い。
そんな事で悩んでたんだ。
本当名前ちゃんは可愛い。
可愛いすぎてぶっ壊したくなる。

「そうだよ。僕は名前ちゃんが嫌い。むしろ大嫌いってやつ?」

僕がそう言うと真っ青になる名前ちゃんの顔。
大好きな大好きな君のその顔。

「でもね、名前ちゃんは僕のだよ」

「誰にもあげない」


僕は知ってる。
こうやって甘い言葉を囁けば君が、僕から離れられない事。
どんなに酷い言葉を言ったって、どんなに酷いことをしたって君は僕から離れられない。
離すこともないけどね。

でもね、1つ謝っとくよ。
僕は君の泣き顔が好きなんだ。
君の絶望した顔なんて最高だね。
これが僕の愛し方だからさ。
名前ちゃんなら分かってくれるでしょ?
僕等お似合い同士だもんね。

ああぁ、君を早く壊してあげたい。



ねぇ、愛してる


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