正直名前の事なんて何とも思ってなかった。
マリーよりドジとか、よくカノにからかわれてるなぁぐらいでしかなかった。


でも、笑った顔とか可愛いと思うし、最近名前に会いたくてギルドいくし。
その、なんていうか多分好きなんだろうな俺。


あぁ、そうか好きなのか。


1回自覚してしまうと待ってましたと言わんばかりに赤くなる俺の顔。

あぁ、ダメだって。
アイツが来る前に戻さなきゃ。
今の俺はアイツにとって恰好の餌食だ。

普段は神なんて信じてないけど、今日だけは神に祈る。
戻れ戻れ戻れ、


「あっれー、ご主人茹でだこみたいになってますけど」

高らかに俺を笑う声。
神を信じたはずが、どうやら悪魔を召喚してしまったようで。
自分の運の無さを呪うべきか、神を呪うべきか迷ってたらエネがいつものにやけ顔でさっきと同じ会話を俺にぶつける。


「もしかして名前さんの事考えてました?」

「なっ、おまえ」

図星ですねと言わんばかりのしたり顔で俺を見るエネ。
だから今こいつには会いたくなかったんだよ。


「ふっふーん。ご主人は分かり易いですからねぇ」

「ほっといてくれ‥」

「あれぇ、いいんですかぁ?折角ご主人に、いい事教えてあげようと思ってたのに」

「なんだよ」

「教えて欲しいですか?」

もったいぶるようにエネが尋ねてくる。
多分こいつの事だ。
大した事ではないのだろうが、やはり気になるものは気になるので早く教えろと急かすと俺の返答に不満があったのか横を向いてしまった。

「"教えてください。エネ様"と言わなきゃ教えてあげません」

なんだこいつ。

「おしえてくださいエネさま」

「棒読みなのが不服ですが、まぁ、よしとします」

もう一回言おう。
なんだこいつ。


「ご主人って、名前さんが好きなんですよね?」

「ばっ、ちが」

「違うんですか?」

「いや、その、違わないけど‥」


確かに俺は、名前の事好きだけど俺もさっき自覚したばかりだし他人の口からましてや、こいつの口から言われるとなるとやっぱり恥ずかしというか、なんか屈辱というか。


「なら朗報ですよ!」

「悲報の間違いじゃないか?」


どうせ、名前には好きな奴がいてそれは俺じゃないんだろ。
読めてんだよ。

「違いますよ。相変わらず卑屈の塊ですねご主人は」

「ほっとけ」

「あーもう、話がそれちゃったじゃないですかぁ」

「お前のせいだろ。で、なんだよ」


俺が再度聞くとわざとらしく咳払いを一つし、いつもより三割増しのにやけ顔で俺を見る


俺、やっぱこいつ苦手だわ。








「エネちゃんエネちゃん!どうだった?」

「いやぁ、名前さんのおかげで久々に凄く面白いものが見れました」

「そ、そうなんだ。何か言ってたりしてた…?」

「いえ、ご主人に名前さんの言葉を伝えたら気絶してしまったので聞けてないです」

「えぇ!それ大丈夫なの?」

「大丈夫じゃないですか?倒れた後幸せそうな顔してましたし」

「幸せそうな顔…」

「ふふ、いいお返事聞けるといいですね」

「うん!」





"「名前さん、ご主人の事好きみたいですよ」"



ディスクールの恋


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