ある日の午後2時30分。
気持ち良い太陽の日差しを浴びながらこの授業は終盤を迎えようとしていた。
居眠りをしている人や、授業中にも関わらず雑談している人など様々だが、教師はそんなのお構いなしにと自分の授業に没頭している。
この教室だけ、違う世界のようにうるさい。




隣の席にいるシンタローも前の黒板なんて目にもくれず、紙に何かを必死に書いていて、時々顔を真っ赤にしてぶつぶつ喋りながら頭を掻きむしっている。

何あれ、新しい黒魔術でも開発してるの?
てか、授業を真面目に受けている私より頭がいいだなんて何だが腹が立つ。

よし、暇な私がイタズラでもしてあげよう。
ふふ、喜べシンタロー。


シンタローと同じように私も紙に書いて、それを丸めてぶつける。
ふふ、きっとすごく驚くんだろうな。
あぁ、楽しいな、このまま時が止まればいいのに。キャラじゃない癖にメルヘンチックな妄想、そんな私をバカにするように紙はシンタローに当たる。





「え、な、なんだよ」

「紙見て!」


案の定、驚きながらも、私がぶつけた紙をゆっくり広げる。その姿だけで面白いとか才能あるよシンタロー。


"何必死に書いてるの?"


「…なんだよこれ」

「何って…疑問?」


しかめっ面前回で、私が書いた紙を見せてくる。それ私が書いたんだから内容知ってますよ?なんて、おちょくったら「うるせぇバカ」という有り難きお言葉を頂きました。くたばってしまえ。



「そうじゃなくて、普通に話しかけてくればいいだろ」

「たまにはそういうのも良いかなって」

「だからって近いのにわざわざ面倒くさいだろ」

「ダメだなぁシンタローは、そんなんじゃ、社会で生きていけないぞ」

「ほっとけ」

「で、何書いてたの?」

「…苗字には関係ない」

「えー、聞きたい」

「やだ」






心の中がぐちゃぐちゃになりそうになる。

ねぇシンタロー、
私、ほんとはあの紙の内容知ってるの。
必死に隠そうとしてても、シンタローってば分かりやすいんだもん。
だから、簡単に分かっちゃった。
君の好きな人。
いっつもシンタローの事見てるんだもん。
それくらい分かるよ。


私がどれだけ望んだ君の視線の先はいつもあの子。
別に、最初から付き合うだなんて考えてなかったよ。ただ、傍にいたかっただけ。君の記憶に少しでも残るだけで良かった。


でもね、もうそんな強がり疲れちゃった。
たまには、素直になってもいいよね。


…知ってる?一人で泣くのって結構辛いんだよ。



「シンタロー」

「あー?」

「大丈夫、絶対成功するよ」

「へ、?」

「アヤノちゃんとお幸せに」

「え、な、なんで知ってんだよ!」

「それとね、シンタロー」



"私も好きだったんだよ"



「は…?」





タイミング良く授業の終りを告げるチャイムがなる。
それと同時に私の恋も終わった。
これで良かった?なんて自分の心に問いかける。
うん、良かったの。良かったんだよ。
独りよがりの答えだけど、バカな私でも正解してるといいな、なんて。



「じゃあね、」

「は、おい、苗字」



シンタローの言葉を遮って、私は教室から出る。廊下には授業を終えた生徒たちが沢山いる。その中にはあの子もいて、私のいた教室に入ってく。多分、シンタローに会いに行ったんだろうな。


あぁ、私が出した答えが無情にも消されていく。
そんな気がした。





今ここに






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