「…っ、名前!」

「はぁ、はぁ…夢か…」



嫌な夢を見た。名前が僕を置いて他の男と、どこか遠くの場所に行ってしまう夢。
夢だとしてもあまりいい気分ではない。
それに僕には、名前しかいない。
名前が僕を捨てて他の男のところに行ってしまったら…

「はぁ…」


頬には生暖かい感触がある。
いつの間にか泣いてたらしい。
乱暴に着ていた服の袖で拭く。


名前に会いたい。
その一心で自分の部屋を飛び出して名前の部屋に向かう。
真っ暗なアジトでも、迷うこと無く名前の部屋に付ける僕って凄いと思う。
もちろん、いい意味でだよ?


がちゃ


「おじゃましまーす」
小さな声で申し訳程度の挨拶をする。
うん。これで不法侵入じゃないよね。


「すぅ…」


気持ち良さそうに名前が寝てる。
名前の顔を見て僕は少しだけ安心する。




「名前、名前」

「ん、…カ、ノ」

「起こしちゃってごめんね。会いたくなっちゃった」

「大丈夫だよ。…カノ?」

「うん?どうしたの?」

「もしかして、泣いてた?」



あぁ、やっぱり名前には、適わないなぁ。



「えへ、ちょっとね」

「こっち、おいで」

「ん」

名前の布団の中に入る。
名前の匂いがして、僕は何故かまた泣きそうになる。
あれ、こんな僕泣き虫だったっけ。


「で、どうしたの?」

「怖い夢見ちゃってさ。名前が他の男のところに行っちゃう夢」

「…そうなんだ」

「すっごく怖かった」

「…カノはさ、本当に私が他の人の所行くと思う?」

「…わかんない。もしかしたら僕に嫌気が差すかも」

「じゃあ、カノは私を置いて他の女の人の所にいく?」

「絶対ありえない。僕は名前以外なんて考えられない」

「私もだよ。カノ以外考えられないし、考えた事もない。私はカノだけでいいの」


「そっか…」

「だから大丈夫だよ。安心して」




僕がいつも思ってた事。僕がずっと考えてた事。
名前もそう思ってくれていた。
それだけでこんなに嬉しいなんて。
多分僕は名前に依存してるんだと思う。
だからこんなにも愛おしくて、切ない。
だからこんなにも…君の事が欲しくなる。


「ねぇ、名前。僕に名前の全部頂戴?僕も全部名前にあげる」

「…いいよ。カノが欲しいなら全部あげる。」

「名前が僕に飽きたって絶対離してあげないよ?」

「むしろ、離したら怒るから」

「名前」

「なぁに」

「愛してるよ」

「ふふ、私も愛してるよ」





落ちて落ちて深くまで








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