Krk | ナノ


8。再開



昨日、赤司からの電話で教えてもらったのはある場所の住所



「まぁ。そこに行けば会えるよ。あとは大輝、君次第だ」



あいつはそう言って電話を切った。










今日は休み。


教えてもらったのは昨日だが、俺はやると決めたら即行動するタイプだ。



起きてすぐに準備をする。と言っても時刻は12時を回っていた。


そして、準備を終え玄関まで来て足が止まった。





「っ……なんて言えばいい」




何を話せばいい?


今更、会いたかった?いや……向こうは顔も見たくねぇーかもしれない。

じゃぁ、子供の事を聞くか……って、駄目だろう!俺の子供な保証もねぇーし。第一、久しぶりに会って、子供がいて、パニクッてんのは俺の頭だし…わけわかんねぇー事言うに決まってる。





・・・・・・・・・・・・・・・・。















人生でこんなに物事を真剣に考えたのは生まれて初めてかも知れない。玄関兼、、キッチンを行ったり来たりしまくって、気づけば橙色の西日が玄関に差し込んでいた。






「あぁ!!くそ!考えてもしょうがねぇー!とりあえず会う!」





そう叫んで気合を入れると、赤司に聞いた住所を頼りに駅へと向かった。


















教えられた住所は、都心から少し離れた静かなところ。自分の実家に近いちゃー近い場所、マンションまでの道をキョロキョロと探しながら来る途中、やたらとファミリーが帰宅する姿が目に付いた。





「ここ……か。」





目的地のマンションまで来るとココの住人であろう人物がセキュリティーを解除して入って行くところだったので、それにすかさず便乗した。




中に入ると、エレベーターに乗りたどり着いた502と書かれた扉の前に立ち一呼吸置く。





そして――――







――――――ピーンポーン♪








「はいはぁーい」






チャイムを鳴らせば、どこか軽快な声とともに誰かが扉を開ける。





しかし、思っていた人物はそこにはおらず







「レオ姉ー早かったじゃーん………って……」








「「は?」」














どこかで聞いた名前を口にしながら顔を見せたのは。高校時代にバスケで何度か戦った相手で。愛実が居なくなって初めて気づいたが、愛実への恋心を持った男……いや、持っていたか?
















「あっれー……青峰君じゃん…どしたの?」





多少の動揺はしたものの、警戒の色を濃くしたまま探るような視線で俺に問いかける。


あぁ、こいつは変わってないな……






「お前っ!高尾!?なんで……ここに!?は?ここお前ん家?」






いや、てか、なんだ?どういうことだ?愛実の住所だとばかり思ってたんだけど……ちげーの?


もしかして……こいつと今は仲良く暮らしてます…的な?




俺の中で何かがむなしく崩れ去りそうになったその時





「和成?どうしたのー?レオ姉じゃなか…た……って。………大…輝!?」









中から懐かしい声がして、顔を出したのは会いたいと何度も願っていた相手で







「愛実……。よっ……よう。久しぶり」










けれど、伝えようとした言葉は一瞬で消え去り。



放つことができたのは、乾いたのどから絞り出すように言ったしょうもない再開の挨拶だけだった。





























「とりあえず、何か飲み物出すから、座ってて」





緊張し、喉さえ乾くほどの俺とは違い、愛実はどこか落ち着いていて。俺を部屋に通すとそそくさとキッチンへと向かう。



残されたのは、俺と今だ警戒を解かない高尾。お互い向かい合って座るが、なかなか会話が始まらない。




何となく目を合わせ辛くて、あたりを眺めることにした俺は、無意識のうちに高尾の生活の痕跡を探っていた。



それは高尾にもばれていたようで…彼が先に口を開く。





「安心しなよ。俺は一緒に住んでないからさ………今は」




「は?」




愛実も冷静だけど、こいつも探りを入れるくらい冷静だ。





「今ってなんだよ……」




「そのままの意味だけど?……てか大体今さら何しに来たわけ?」




「それは………」




言葉に詰まる俺に、高尾はさらに続ける。




「俺さ、本気だから。愛実の事、本気で行くつもりだから」




「俺だって……愛実の事、真剣に……」




「真剣になに?真剣に考えてます?それとも真剣に探しまたとか?けど、今まで見つけらんなかったんでしょ?……本気で会いたいならいくらでも手はあったんじゃね?」




確かに、赤司にもっと早く聞けばよかった。実渕にも連絡を取り次いでもらえばよかった。ありとあらゆる方向から彼女に接触しようと試みなかったのは俺の落ち度で、弁解の余地もない。


俺が黙り込んでいると、高尾は今までより一層真剣な表情で告げた。




「俺、一度手放した奴に負ける気しねーから……」





あぁ、本気だ。


高尾の目とその言葉からその重さが伝わってきた時、子供の鳴き声が部屋中にこだました。




それと同時に、リビングの扉の音がして一人の綺麗な男が入ってくる。













「あら、色々修羅場じゃない……」










その男、実渕玲央は入るなり俺と高尾を見た後、無言で子供の所へと向かい、泣き出した子供を抱き上げる。それから振り返るとそう呟いた。
























おまけ



※ちょっとギャグです、イメージ壊したくない方は無視で。




大丈夫な方はどうぞ↓↓

















★愛実のうちに向かう途中の青峰★






電車から降り、携帯の地図とにらみ合いながらキョロキョロト周りを見渡す青峰




青峰「あぁーどこだよ……地図わかりずれーよ…」




その際家族ずれと何度かすれ違う。





女の子「ねぇーママ、挙動不審な人いるよーお巡りさん呼ぼう」



ママA「こら、指さしちゃダメ!ああ言うのは関わらないほうがいいの」



青峰「(あ?お巡りさんならここにいるけど…不審者か?←自分の事と気づいてない)」





更にさ迷い歩く



青峰「この辺…家族連れ多いなぁー(俺も…愛実と再開できたら…こんな風に…ニヤニヤ)」



男の子「ひっ!……ママ、あの人一人で笑ってる。怖いよ…」



ママB「見ちゃだめよ」





しかし、気づかない青峰。



極めつけは


他人に紛れセキュリティーを掻い潜った後



住人A「ねぇ。あの人、一緒に入ってきたけど…見たことないわよ人相悪かったし…大丈夫かしら。」



住人B「そうだな…悪人面だったな……一応管理人さんに伝えよう」



青峰「(悪人面?おい、ここに愛実住んでんだろう…心配だな。まぁ、今日は俺いるし大丈夫か)」





いや、お前だよ。

最後まで気づかない春から警察官予定の強面の青峰君でした。
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