自分のくじ運の無さを恨みたい。男女ごちゃごちゃの席替えで何が嫌で男子と隣にならなければいけないのか全く持って理解出来ない。が、そんなに悪くも無かったかもしれないぞ。お隣さんはサボりで有名な奈良くん。ってことはほぼ1人確定じゃないか。テンション上がってきたから今日はケーキ買って帰ろう。しかし運悪くなぜか週番に任命。アスマ先生はわたしに恨みでもあるのか。あ、こないだ先生のタバコを水没させたのをまだ気にしてるのか。なんて心の小さい男なんだ…紅先生にちくってやろう、と思ったけど仕返しされそうなので諦めた。


「学級日誌とか何も書くことねぇよ」


思わず口にだしてしまった。なんて恥ずかしい。とかどうでもいい。とりあえず埋めないと。こういう時は奈良くんじゃなければ、と心から思う。あー…今日は雨で気分が下がりました。席替えでさらに下がりました。でも隣が奈良くんだったのでちょっとテンションが上がりました。このまま隣の間は1度も現れてくれなければ今の席が大好きになれそうです。それからタバコのこと引きずってんじゃねぇーよ

うし、我ながら完璧。さっさと帰ろう。


「………」

「………」

「君は誰ですか」


突然背後に立ってるとかいけないと思うよ、少年。


「お前名字だろ?」

「なぜわたしの名前を?」

「俺このクラスだし」


え、ごめん。誰だか全然分かんない。そもそもうちのクラスサボりとか多すぎて分かんない。アスマしっかりしろよ、ボケ。


「…で、誰ですか?」

「奈良シカマル」

「あ、君が奈良くん」


名前しか知らなかったからさ。うん、ごめんね。多分覚えておくよ。忘れなかったら。というか会いたくない希望は粉々に打ち砕かれたよね。意味分かんないよね。


「お前さ、俺のこと嫌いか?」


開いたままの学級日誌を指差す奈良くん。見られたら仕方ない。


「嫌いです」

「知り合ったのさっきだよな?」


驚きを隠せない奈良くん。反応おもしろっ。というか奈良くんって見た目あんまりサボらなそうなのに。人は見かけによらないね。まあ、少なくともわたしだって知り合って間もない人に嫌いなんて言われたら殴りたくなるのは当たり前だけど。


「すいません、語弊があります」

「……?」

「奈良くんが嫌いというより男が嫌いです」

「へぇ」


なんでとか聞いてくると思ったけど奈良くんは意外とそういうタイプじゃなかったらしい。でもこれできっと席に座ることはなくなったはず。嫌われてるのに来たら相当なMだと思う。