あっと言う間に過ぎた授業。今日1日ほとんどは放課後のことばかり考えてた。何で呼ばれたんだろう、とか気まずい空気にはならないかな?とか、ただ授業のことで呼ばれたのかな?とか考えだしたらきりがなかった。


「先生来ましたけどー」


ノックして化学室に入る。さっき職員室に行ったら化学室行っちゃったよ、なんて他の先生に言われたから。というか職員室にいてよ。めんどくさいじゃん。ほんと自由人だな。


「てか、いないじゃん」

「誰が?」

「うわっ!」


突然現れないでくれませんか。てか隠れてたの?え、もう何なの?


「おせぇよ」

「これでも終わってから急いで来たんですけどね」


ていうかSHL先生だったんだから、そんな時間たってないの分かるんじゃね?てか職員室から化学室に来るまでが早すぎると思うんですけど。


「名前」

「…はい…?」


突然名前で呼ばないでください。ドキドキするんで。ときめいちゃうんで。ほんとに。あ、あれですかギャップ狙ってるんですか。


「お前、タメ口宣言したんだよな?」

「…は?」


今更それについて説教か何かですか?


「しましたけど」

「緊張、不安、礼儀」

「…え…?」


何が言いたいのかさっぱりなんですけど。


「とにかく平常心じゃねぇとき」

「…?」

「タメじゃなくて敬語になんだろ」

「…!」


確かに言われてみればそうかもしれない。自分でも気づかないうちに、無意識にそうなってたんだ。先生がそのことに気づいてくれたことが嬉しくて。


「良く気がつきましたね」

「今のはちょっとした照れから」

「…あ」


図星をつかれ余計に恥ずかしくなる。自分にこんな癖あったなんて知らなかったからか、すぐに直せない。というより、年上を好きになるのが初めてだったから、そんな癖を知ることが出来なかったのかもしれない。

先生を好きになって初めて知ることがたくさんある。自分の知らない自分。好きという気持ち。不安、嫉妬。他の人が知らない先生は、まだわたしもあんまり知らない。でもこれから知れたらいいなあ、なんて。


「百面相してんぞ」

「え!?あ、いやっ、別に…」


先生のこと考えてました、なんて言えないし。というより言いたくないし。


「俺のことでも考えてたんだろ?」

「…!?」

「図星かよ」


おかしそうに笑う先生。かまかけたな。うん、絶対そう。てか、先生ってこんな…Sっ気のある人だったっけ?こう、なんかもっと…違った気が…いや好きだけどね!


「…わたしMっ気あった?いやいやいや。むしろSだよね?」

「…ドMか、そりゃあ良いこと聞いたな」

「え?は?声でてました?というかドMとは言ってないんですけどおおおお!?」


先生こんなんだったけ?あれ幻覚幻聴?これ幻?あ、夢オチ?もーそーゆーことなの?びっくりしたなあ…「夢じゃねぇだろ」


「ですよねー!あはは…あ何で私呼ばれたの?」

「一緒に帰るからだろ」

「なに当たり前だろ的に言ってんのさ」

「嫌ならいーけど?」

「…嫌じゃないです」


くっそ!そんな笑顔するなあああ!ああもう絶対先生には敵わない。てかわたしもめげるなよ!もっと頑張れよ!先生の余裕なくすってこないだ宣言したばっかなのにー…ちくしょう。



貴方の手のひらで躍らされる