明日から高校2年生なんだから。なんてお母さんに言われた。もちろん、だから何なんだって感じでお母さんを見たら、お金渡されて牛乳買いにコンビニまで行ってきてなんて言われた。全くもって高校2年生とか関係ないと思う。でもお母さんに逆らうと色々大変だから、ここは素直に言うことを聞いておく。


わたしも欲しい雑誌とか新発売のお菓子欲しかったから、ちょうど良かったといえば良かったんだけど。



「…さむい」



もう4月だけどまだ温度差がある毎日で、今日はいつもより寒い。夜だからっていうのもあるけど。


家からコンビニまでは歩いて5分くらいだから、まだ頑張れる気がする。走るのもやだから空見ながら歩いてく。今日は満月だからいつもより明るい。



「あ、名前じゃない」

「いのじゃん何してんの?」



いのとは1年のとき同じクラスで親友てき存在。家もまあまあ近いくらいで決して遠くはない。けどこんな時間に会うのは今日が初めてだ。…多分…。



「コンビニにお使い頼まれたのよ」

「奇遇だね、わたしもなんだー」


やんなっちゃうよね。とか色々いいながら一緒にコンビニに行くことにした。というか流れで。いのだから全然嫌じゃないし、というかむしろいて楽しいから大歓迎だけど。でもいの恋バナだいすきだからなあ。



「名前も高2になるんだから、好きな人作りなさいよ」

「いい人がいたらねー」

「名前の好みってどんなのなわけ?」



うーん、好みって言われてもなあ。好きな人じたいあんまりいたことがないし。最後の恋なんていつだったかも明確に覚えてない。恋愛に興味がないわけじゃないんだけど。好みね…。



「…好きになった人?」

「それはそうだけど、はあ、名前に聞いたあたしがバカだったわ」



え、ちょっと酷くない?ため息までつかなくてもさあー。でもいのがサスケくんのこと好きなのとか間近で見てると自分も恋したいなあ、って思うんだよ?いのみたいにアタックしまくるのは無理だけどさ。



「来年も同じクラスだといいなあ」

「そうねー。でも、もし違っても愛しい名前のために毎日会いに行ってあげるからね!」

「ははは、ありがと」



そしたら毎日退屈しないよ。いのに感謝だね。



「名前」

「ん?」

「あんた笑顔とくに可愛いんだから…」

「は?」

「すぐに彼氏できるわよ」



何を突然言い出すんですか。好きな人とか全部すっ飛ばして彼氏ですかい。わたし彼氏いない歴イコール年齢ですよ。属にいうKIRINってやつなんですけど。そんなのに彼氏出来たらびっくりだよ。



「幸せになって欲しいの!」

「え、あ、うん」



そんなわたしの事を考えなくてもいいのに、とか思うけど、でもそれよりも嬉しい気持ちが勝る。


いのに満面の笑顔で言われたらそれだけで幸せになれる気がしてくるわたしもどうかとは思うが。


隣でそもそも名前は告られても好みじゃないとか言ってたくさんふってるし、チャンスはたくさんある気がするのに、それを逃してるのよ!とか何とか言ってるのは聞かなかったことにしよう、うん。


そもそも好きでもない人に告られても、嬉しくもなんともないんだもん。うん、ごめん今までの人達。というか、そこまで告られてませんけど。


いのさん、勝手に脳内で色々と事実を変えるのはお願いだからやめてね。



「いのはサスケくんと同じクラスになれるといいね」

「そうなのよ!今日たくさんお願いして寝なくちゃ!」



ああ、失敗したかも。おまじないもたくさんするわよ!とか言っておまじないの内容全部言い出しちゃったよ。これ永遠と聞かされるパターンだよ。ま、今に始まったことじゃないし聞いてあげるけどね。






コンビニに着くのが早く感じるのは、やっぱりいのとの会話が楽しかったからだと思う。こういうとき友達とか会話だとか凄いなあ、って柄にもなく思ったりする。恥ずかしいから誰にも言わないけど。


いのは入ってすぐに雑誌コーナーに行った。やっぱり今日発売の雑誌だ。いのが買うなら後で見せて貰えばいっかなあ、なんて考えが浮かんだから、新発売のガムを見ることにした。


後ろには店員さんと他のお客さんがいたから、ちょっと間隔が狭かったけど我慢してガムを見てた。



「32番を2箱」

「820円になります」



たばこ買ってる…。なんとなく耳に入ってきた声なのに。お客さんの声に胸が高鳴っていて、ぎゅっと痛くなった。咄嗟に振り替えってみたけれど、もうそこにお客さんはいなくて見慣れた店員さんしかいなかった。


ただ声をほんの少し聞いただけなのに、体が胸がおかしい。どこの誰なのかも分からないのに、なんでこんなにどきどきしてるの…?


「名前、決まった?」

「あ、うん」


咄嗟に取ったガムは新発売の甘い甘いイチゴ味でした。



「どうかした?」

「あのさ…」



帰り道やけに挙動不審ぎみなわたしを心配したいのに、この胸の痛さを言うべきか迷ったけど、原因が分からないから、いのなら分かるかな?という希望をのせて言ってみよう。



「胸が痛くてどきどきしてて、何か変なんだけど」

「それって」

「やっぱりやっぱり病気かな!?」

「恋じゃない?」

「…は?」



恋ですか?この胸の痛みが?恋って痛いんだっけ?確かにあのお客さんの声を聞いた瞬間に痛くなったけど。まさか声だけで恋するなんて、ありえないありえない。


いのは隣でなんかニヤニヤしてるし。違うって言ってもそれは絶対に恋よ!なんて言うから、もう面倒になって否定するのもやめた。





いのと別れて家に着いてお風呂入ったり色々としたけれど、やっぱり頭の中はあの声のこと考えていて。もう一度聞きたいと思う自分がいる。それから顔も気になるなあ、なんて思い始めてしまった。


ベッドの上でいのの言ってた言葉を思いだす。



「恋かあ…」



声を聞いただけで?いやでも只単にわたしが声フェチだったとか。でも今までそんなフェチ無かったか。なんであの声だけこんなに頭に残るの?何をしていても頭の片隅にひょっこりっと存在していて。


ああもう!いのが恋だとか言うから余計に意識しちゃうじゃん!



もう一度聞きたい。会ってみたい。





恋をしました