デートは明日。今日は土曜日だし会うこともないはずだった。普段なら。でも昨日補習があるから学校に行かなきゃ行けない。昨日のあのとき…先生達を見るまでは楽しみと嬉しさでいっぱいだった。なのに今は真逆。先生を見たくもない。会いたくない。でも、サボる勇気がない。いや、あるけどいのもいるから。(補習は希望者もいるから)もう極力先生と会わないようにしよう。


それなのに重大な事を忘れていた。今日の補習は数学と国語。でも国語の先生が体調不良で代理がシカマル先生になったのを。


「プリント終わったら提出して帰っていいかんなー」


なんていい加減なんだ、この人は。ていうか泣いちゃいますよ?それにやっぱり見たくもないし会いたくないけど、いたらいたでチラチラ見てしまう。いのにも大丈夫?なんて書かれた紙を渡されてしまうほど、わたしは重症らしい。

……逃げよう


「先生…体調良くないんで保健室行ってきます」


これで楽になれるかな…


「1人で大丈夫か?」

「大丈夫です」


ていうか逆にこないで下さい。ほんと泣きそうだから…


「やっぱ心配だから一緒に行くか」


いや、何でそうなるの?逆に1人にしてほしい。でもそんなこと直接言えなくて。


「名前」

「なんですか…?」


わたし声震えてるよ…お願いだから先生は何も気づかないで…


「体調そんなにわりぃのか?」

「ちょっとだけです、大丈夫です」

「なんで敬語なわけ?」


あーやっちゃった。


「別に理由はないで…ないよ。多分具合が良くないから」

「……」

「もう1人で大丈夫なんで」


目からこぼれてしまいそうな涙を堪えて、バレないように、ゆっくりゆっくり自然に足を進める。


「名前!」


突然名前を言われて立ち止まる。顔を見せないように俯きながらゆっくり振り返る。


「なんかあったら言えよ」


コクリと頷いてすぐさまそこから離れるように歩いた。

全部全部先生のことなんだよ?先生は知らないでしょう?こんなにもわたしが悩んでいることを。

別に悲劇のヒロインとか演じるつもりも無いし、同情してほしいわけでもない。自分が一番不幸だとも思ってない。だけど、だけどね、やっぱり先生には色々わたしのことを気付いて欲しいし、わたしだけを見て欲しい。わたしを一番にして欲しかった。先生の前では泣かないって、困らせないって約束するから。それをいい子ぶってると思われても仕方ないけど、でも約束するから。だから、今は泣いてもいいですか?



保健室のベッドで声をころしながら泣いたら、泣き疲れたのか、いつのまにか寝ていた。
気が付いて起きてみたらベッドの横にはわたしのかばんといのの姿。先生じゃないとがっかりするわたしがいる。ごめんね、いの。
近くの携帯を開けば何件かのメール。その中には先生もいて、用事があるから看病出来ない、ごめんなって。
先生はまたあの人の所に行っているのだろうか。それと同時に浮かぶ昨日の先生達の光景。いくら忘れようとしても目に焼き付いて離れない。


そこからの記憶はあまりない。多分いのと帰って…後でお礼言わなきゃな…


ああ、明日行きたくないな…こんなうじうじしている自分が嫌で嫌で仕方ない。



それでも貴方が好き