先生と一緒に帰り始めてかれこれ1週間ちょっと。先生の車の中は前より快適になった。会話も増えたし、わたしの好きな音楽流せるし、お菓子も食べれるし。とりあえずわたしが過ごしやすい(車の中だけど)環境が整いつつある。
それと同時に先生と付き合ってる、そんな実感もあるはある。(確実に前よりは)


「なぁ…」

「ん?」

「日曜日暇か?」

「…多分暇だと思う」

「…出掛けるか」

「え?」

「めんどくせぇな、デートだよデート」


…え…?…信じられない…デートだって、デート。しかも先生から。明日天気でも悪くなるのかな。ていうか何がめんどくさいのかわたしにはさっぱり分からない。


「…楽しみにしてる!」

「おー」


友達からも親からもまだ何も言われてないし、このまま予定入れないでおこう。先生とのデートを想像以上に喜んでいる自分がいる。ほんとにわたしどうしたんだろ…先生と会って色々変わったなあ、なんて思う。


「どこ行くの?」

「決めとけよ」

「え〜」


そんな勝手あってはいけないと思う。てか決められない。無理。


「俺は授業の用意とか忙しいんだよ」

「言い訳〜」


あ、先生って先生か。何か先生なんだけど先生じゃない気がするんだよね。あれ、これってダメじゃない?授業中間違えてタメ口とかで話したら色々終わる気がする。


「じゃあ、やめっか?」

「…やめないです」


そういうのずるい!断れないの知ってるじゃん!初デートだもん!(もん!って何か自分が言うとキモい気がする)今から楽しみになってるのにさ。


「拗ねんなよ」

「拗ねてませーん」

「拗ねてるだろーが」

「拗ねてないってば」


しつこい男は嫌われますよ先生。わたしは嫌いにならないけどさ。先生にもう胸を鷲掴みされちゃってるから。


「俺も…楽しみ…だからよ」

「…!」


ふ、不意討ち!しかもちょっと照れながら言うとかなんなんですか。狙ってるんですか?やばい、顔赤いかも…恥ずかしい…ってどんだけ乙女に成長しちゃったの自分!


「だからちゃんと考えとけよ」

「うん!」


これだけで機嫌が良くなる自分って単純。(先生を好きになってから単純って思う回数が絶対に増えたと思う)

とりあえず、ちゃんと考えなきゃ。あ、いのにちゃんと言わないとヤバいかな…殺されちゃうかな…いや、それはないか…でもちゃんと言おう、うん。
それで雑誌買ったり服買ったりするのついてきて貰おうかな。


「名前!」

「はいっ!?」

「話聞いてたか?」

「え?」


違う世界に飛んでました…ごめんね、先生。


「日曜日のこと前日にまたメールすっから」

「あ、うん。ありがとうございます」

「緊張してんの?」

「へ、あ、うん」


先生にこの癖がバレてから先生に今の感情がバレやすくなった。こんなんで日曜日大丈夫なのかな。ずっと敬語になったらどうしよう。あ、意識すれば大丈夫かな…
ってもう家着いちゃった…早いなあ…


「ありがとう。また明日…」


先生は毎回わざわざ車から降りてくれる。それが素直に嬉しい。


「名前…」

「…?」


振り返ればドアップでうつる先生の顔。びっくりして後退りすれば背中に手を回されて密着する身体。気がつけば唇に触れる柔らかい感触。


「じゃ、また明日な」

「…は…ぃ…」


先生はしてやったりって顔をしてもの凄い笑顔で帰って行った。わたしはしばらくそのまま放心状態。



ファーストキスが奪われたと気付く5秒前