「これがその写真だ」


ネジさんからシカマルに手渡されたその写真を覗き込む。写真には、確かに手紙のような紙が写っている。縦長の便箋に書かれた文。


文の内容は

俺はもう後先長くない。
お前達に、これだけは申しておかなければならない。
人の未来など、誰にも分かるハズがない。例えば、その日の午後に何かがおこるかもしれない。私が突然死ぬかもしれないし、息子達が大病を患うかもしれん。
成功するには、川が上流から下流へと流れるが如き時の流れを朝夕同じように読まねばならない。
そして、何事も最初が肝心だと言うことを忘れるな。
それにしても咳が一向に止まらん。どうやら私が演じてきた人生の舞台に幕を下ろす時がきたようだ。
最後に私の財産全てが入った金庫の暗証番号を記しておく。
それはこの、


以上が文の内容。いたって普通とでも言うべきような文章の手紙。暗証番号が書いてあるような気配もない。


「どこにも鍵の内容は書いてないよね?」

「…いや」

「え?」


眉間に皺を寄せて考え出すシカマル。この文で何か分かったのかな…。やっぱり探偵なんだなあ、なんて思う。って助手らしいこと何もしてない。何か出来ることないかな…


「名前」

「はい!?」

「紙とペン」

「う、あ、はい!」


シカマルが紙とペン持ってないの珍しいな、なんて思ったけど考えてみれば、今はお風呂上がりで浴衣姿。だから持ってなくて当たり前。あ、わたしは、たまたま持ってたんだよ。たまたまね。
シカマルは紙とペンを受けとれば、すらすらと何かを書いていく。


「分かったの?」

「確かめねぇとまだ何とも言えねぇな」


気になる。凄く気になる。で、紙を覗こうとしたけど、サッと隠された。そこまで徹底しなくてもいいじゃないか、と心で呟く。ほんとにちょっとだけね!


「とりあえず金庫あけてみっか」

「は?」


ネジさんも目をまん丸にして驚いてますよシカマルさん!金庫あけてみるって言っても肝心の鍵の秘密分かんないじゃないですか。ん?あれ、でもさっき紙とペン使ってたから分かったのか。ってか暗証番号分かったってこと?


「ネジ、女将さんに許可得られるか?」

「やってみよう」


ネジさんはすぐに女将さんの所に走っていった。


「開くの?」

「俺の考えがあってたら開く」


どこかわくわくしているように見える。宝探しでもしてるみたいに。今さらだけど、シカマルって探偵に向いてるんだなあ。頭いいし、キレもいいし、尾行も何だかんだで上手いし。完璧じゃん。


「自信あるの?」

「どーだろーな」


曖昧な返答だけど、声や表情からは自信ありげに聞こえる。これでもし開かなかったらどうなるんだろう。落ち込むのか、楽しげにまた解き始めるのか。でも、ただなんとなく、開く気がする。


「女将も一緒、という条件で許可がでた」

「じゃ、行くか」


金庫は旅館とは少し離れた倉庫とでも言うような、そんな場所にあった。今は夜で中は薄暗い。女将さんはそっと横にあった電気を付ける。


「これがその金庫ですか?」


ネジさんが冷静に、まだ戸惑っている女将さんに問いかける。


「…ええ、そうです」

「…失礼します」


ネジさんと女将さんの間をシカマルが通って金庫の前に行く。金庫はネジ?何か回すやつがついてて数字に合わせて回していく感じのやつ…かな…。シカマルはさっきの紙(わたしに見せてくれなかった紙)を見ながらネジを回していく。

カチャッ

鍵が開くような音。
皆の視線が一気にシカマルに集中する。


「開いたぜ」


得意気に、あ、違う、ドヤ顔。そう、まさしくアレはドヤ顔。シカマルもドヤ顔なんてするんだ、なんて新たな発見に喜ぶ。


「なぜ分かった?」

「そ、そうだよ」


肝心なこと忘れてた。危ない危ない。あの文章で何が読めたのかわたしだって気になる。


「とりあえず出るか」


シカマルに促されて、とりあえず部屋へと戻る。(金庫はまた一旦閉めた)


「なんで鍵の番号分かったの?」




(シカマル早く!)
(焦んなよ) 
(無理!) 



 

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