ただ今の時刻は05:50、駅の改札前にいます。この間は遅刻しちゃったからね。今日は早起きして、シカマルに選んで貰った服着て髪の毛も巻いて完璧!時間にも余裕あるし。あと10分かあー。なんて考えてたら前から見慣れた顔が。ん?でもまだ10分前だよね?
「シカマル?」
「ふぁあ〜、…よう」
でっかい欠伸してまだ眠たげなシカマル。
「早くない?」
「普通だろ」
普通なんだ…。あれ…じゃあ買い物の時も10分前にはもう居たのかな…?悪いことしたかも。
「どーかしたか?」
「へ?」
「急に静かになるからよ」
「何もないよ」
満面の笑みで答える。シカマルがわたしを気にかけてくれることが、ただ嬉しかったから。もう過去のことはとりあえず気にしないでおこう。シカマルはすぐ来てくれたし、より長く一緒にいれるなんて考えたら、嬉しい以外の気持ちはないしね。
「どのくらいかかるの?」
「2時間くらいだろ」
「2時間かあ〜」
話している間に新幹線がきて、指定席に座る。こんなに近くに座ることあんまりないな、とかシカマルの横顔を改めてかっこいいな、とか考えてたら体が熱くなってきたから他のことを考えることにした。と決めたのは良いけど何を考えようか。頭の中で歌うたう?いやでも声に出しちゃうからダメだ。うーん…あ、昨日のやつ聞かなきゃ!
「ねぇ」
「ん?」
「昨日のやつ教えてください」
「…昨日なんかあったか?」
…すっかり忘れてるよ、この人。昨日犯人を絶対捕まえるとか言ってたのどこの誰でしたっけええええ!?!?もう忘れるって捕まえる気ないんですかね?
「…事件…か…?」
「そうだよ!それだよ!」
なんだ、覚えてるじゃないですか。
「事件のトリック教えてくれるんでしょ?」
「めんどくせぇ」
「教えてくれないの?」
やっぱりめんどくさいんだ、わたしがちゃんと理解すれば良かったんだろうな、なんて考えてたら自然とうつむいてた。
「教えねぇって言ってねぇーだろ?」
「…へ?」
「まあ、なんつーか…口癖のようなもんだからよ…だから…あー…」
「……ありがとう、シカマル」
必死に弁解しているシカマルが可愛く思えて、あのぐらいでしょげたりしたらダメだな、って。
「んじゃあ、トリックの説明な」
「うん!」
心臓がどくどくする。トリックを知れる、というものからきているのか、シカマルと向かい会いになって話すという行為にからきているのか。もう自分でもよくわからないけど。
「まず千円分のクレープを犯人が買って五千円札で払っただろ?」
「…うん」
多分そうだった気がする。昨日の今日なのに記憶が曖昧なんてダメじゃん。
「その後ナルトが四千円お釣りを出して犯人がもう千円だして五千円札にしてもらう、ここまでは別に普通のやり取りだろ?」
「うん」
「問題は次だ。犯人がナルトから貰った五千円札と、ナルトが犯人から貰った五千円(千円札5枚)がある。本来ならナルトはその五千円をレジにしまう。けどその五千円をしまう前に犯人の五千円札とその五千円で一万円にしてもらう。犯人は始めの五千円と四千円のお釣りに足した千円しか払ってねぇから、四千円得したっつーわけだ」
…ん?え、ちょっと理解出来ないですシカマルさん。
ん?あれ…でも…ああ!犯人の五千円札はナルトが犯人からもらった五千円を五千円札にしてあげたんだから、つまり両替として使ったお金であって、ナルトが持ってるのはお店のお金ってことになる。でもナルトは犯人からもらったと思い込んでお店のお金である五千円と犯人の五千円札で一万円にしちゃったってことなのかな。
「…分かったかも」
「かもかよ」
うん、多分理解しましたですよ。
「まあ、わかんねぇより良いか」
ふ、不意討ち!
突然、笑顔見せるなんてずるいと思う。心臓がどくどくうるさい。
「どーかしたか?」
「ううん、なんもないよ!」
「…」
そんな不審そうな目で見たいでくれませんかああああ!それにそんなに見られたら心臓がもちませんから。もうわたしを死なせる気ですよね。確実に。着くまでに死ぬんじゃないかな、なんて思えてくるよ。
「もうあと1時間なんだね」
「おう」
「早いね!」
「そーか?」
「うん」
だってシカマルといるから。時間なんてあっという間に過ぎちゃうよ。あと1時間ずっとシカマル見ててもいける気がする。でもシカマルに気づかれて無理だろうな。
「んだよ?」
「うぇ?」
「さっきからずっと見てただろ」
無意識って恐ろしい…なんて言ってる場合じゃない。わたしのバカ。なんで気をつけよう、って考えてるときに見ちゃうかなあ…
「なんでもないです」
また窓から空を見るシカマル。それにホッとする自分がいる。どうしたいんだろう、自分。もうわけわかんなくなってきた。うう…
ああ、何か眠くなってきた。
「おい。おい名前」
「…ん…あ…」
「もうすぐ降りるぞ」
「…んー……うわあ!ごめん!」
シカマルの声がやけに近くに聞こえてゆっくり顔を向ければ、正面にはシカマルの顔が真ん前にあって。どうやらシカマルの肩によりかかって寝ていたらしい。寝てしまった自分を恨みたいし(せっかくシカマルといるのに時間を無駄にした気がするからね)シカマルにとっては身動きも全然出来なくて迷惑だったに違いない。
「大丈夫だから気にすんな」
「…うん」
優しいな、なんて。一気にときめく自分は本当に単純だと思う。
ちょっとして目的地周辺の駅に着く。そこからバスに約10分乗って、目的地の温泉に到着。
「おっきいー!それに綺麗!」
「キバのやつ期待をうらぎらねぇな」
「うん!」
門をくぐり中庭らしき道を少し歩けば、入り口へたどり着く。
女将さん「いらっしゃいませ」
「わあ、綺麗な人…」
女将さん「もしかして、シカマルさんですか?」
「なんで知ってんだ?」
女将さん「テレビで見たものですから、つい」
…て、敵だ…。一番恐れていたことが起きた。シカマルのファン。だって目がハートになりつつあるもん。
しかも 睨 ま れ た !
敵が現れる
(し、シカマル)
(あ?)
(はやく行こう!)
(んな引っ張んなよ)