どこ行ったの犯人ー!事件でしかも犯人だなんてワードが出てきて少なからずちょっとドキドキしてる自分がいる。不謹慎だなあ、とも思うけどこれは仕方のないことだと思う。逆にシカマルは犯人が見つからなくてちょっと苛立ってる。だから、さ、犯人さん出てきてくれませんか?シカマルの苛立ちが、わたしにとんできたら嫌なんだよね。だからお願いします出てきてください。


「どこ行っちゃったんだろうね…」

「まだそう遠くには行かねぇだろーし…」


そう言えばシカマルは立ち止まって突然考え始めて、しばらくしたら閃いたような顔して。


「近くにたこ焼き屋あったよな?」

「うん」

「多分そこだ」

「え、ほんと?」

「少なくとも行ってみる価値はあると思うぜ」


にやりって効果音が似合いそうな顔で確信したように言うシカマル。なんかいつもより楽しそうに見えるのは気のせいでしょうか。気のせいじゃないよね、コレ。絶対楽しんでるよね。探偵としてどうなの!?って人のことは言えないので黙っておいた。うん、きっと正しい判断。ってああ!置いてかないで!

にしても、シカマルが探偵の仕事でこんなに楽しそうなの初めてみた。いつもの仕事より何百倍も違うとかそういのは無いけど、どことなく楽しそうというか…。この差を分かるのがわたしだけだったらいいなあ、なんて。


「…あ…い、いたよ!ねぇ、シカマルいた!」

「んな言わなくても分かるっつーの」


いや、だってつい…。あるよそういうこと。自分でも意識はしてなかったけど自然と顔が俯いてて、気づいたらシカマルが頭ぽんぽんしてくれてて、なんか分かんないけど元気でて心が暖かくなった。シカマルがボソッと、んな気にすんなよって言ってくれた。それになんか安心した自分がいる。って言っても気にするようなこと言った本人にそう言われても。とも少なからず思いましたげどね。そこは考えないであげましょう。(いや、もう考えちゃったか)


「すんません」


ぐだぐだ考えてるうちにも着々と犯人と思われるお客さんに近づいてたのに、シカマルが声をかけるまで距離をつかめていなかった。探偵の助手としてどうなんだろう、とふと思ったり。それよりも今は犯人確保が優先だよね。頭の中を切り替えて身を引き締め直す。


「なんでしょう?」

「今何やってたんすか?」

「何って…君は面白いなぁ。見て分かるだろう?両替だよ両替」

「両替というなの詐欺っすよね」


詐欺と断言するシカマル。でもどこが詐欺なのかまだわたしにはよく分からない。レジをしている店員さんも全く理解出来ていない様子だ。


「…君はなかなかいい頭をしているようだ」

「そりゃどうも」


不適な笑みを浮かべながらそういう犯人にシカマルは軽く受け流す。


「僕にとっては君が初めてだよ」

「?」

「見破られたのがね。君とはまた会えそうだ。その時を楽しみにしておくよ」

「逃がすわけねぇだろ」


うーん。とりあえずお客さんが犯人なのは間違いない。…よね。自分で見破られたのはー…とか言ってたし。でもシカマルが言う通り逃げれるはずはない。犯人をわたしとシカマルと店員さんで囲んでいるから。なのに犯人は余裕の笑みを浮かべている。なんで?この状況で笑みを浮かべるなんて逃げ切れる自信があるからじゃなきゃ考えられない。でもどうやって?シカマルも同じことを疑問に思ってるらしく、犯人との距離や回りにあるもの注意深く観察してる。ニヤリとでも効果音がつきそうな顔を浮かべれば突然犯人は店員さんを見る。店員さんはそこをそっとどく。…ってえええ!?なんでどくの?お店のお金取られてるんだよ?え、え、え?シカマルもさすがに理解出来ないらしく唖然としている。


「それじゃあ僕はいくよ」


犯人がダッシュで駆け出す。シカマルもわたしも追いかけたのだけど、迷路のようなデパートの構造を利用されて捕まえることが出来なかった。


「店員さん…」

「……あ、あれ…」


さっきからずーっと様子がおかしい。ぼーっと立っているだけというか。


「さっきのやつはどこに行ったんだい?」


シカマルと顔を合わせる。


どうやら店員さんは記憶がないらしい。さっきのことを説明すれば店員さんは信じられないといった表情で頭を抱える。


「どういうこと?」

「なんかしたんだろ」


意外にも冷静ですねシカマルさん。え、わたしがおかしいの?わたしがビックリしすぎてるだけ?


「冷静ですねぇ…」

「まぁな…」

「犯人逃がしちゃったね」

「ぜってぇ捕まえる」

「…うん…?」


探偵魂に火がついたのかな?なんか捕まえる気満々ですよね。でもこういうちゃんとした事件って久しぶりだよね。というか、わたしは初めてだよ。ドキドキする…これから色々あるのかなあ、なんて。でもさ…また会うことなんてあるの?犯人は確かにまた会うかもてきな言葉は言ってたような気がするけども。まさか、まさか本当にあったりしちゃうの?いやいやいや…


「探し出して捕まえんだよ」

「あ、探し出すかんじですか」


まるでわたしの心を読んだかのようにシカマルが言う。その目は何か面白そうな楽しそうな、そんな物を見つけた時の少年のような目をしていた。小さい時のシカマルってこんな感じなのかなあ、なんて不意に思う。そんなシカマルを見ていたら自然と笑顔になっていたらしい。それに気づいたシカマルは目線をわたしから外した。


「シカマル…」

「あ?」

「耳まで真っ赤だよ」

「…うるせぇ」


照れてる照れてる。何かこういうの何て言うんだろう、くすぐったいって言うかなんというか。心がほあんって。

ん……?


「そういえばさ」

「?」

「なんであの人が犯人って分かったの?」

「あいつ4000円も多く貰ってたんだぞ」

「…4000円!?」

「おう」


どうしてそうなったのか良く分からなくて、理由をしつこく聞いてみたのだけど、もう疲れたからとか何とかで、明日ちゃんと説明してやるよ、とか言って今日は聞けなかった。明日はしつこく聞いちゃうからね。うん。

 


また明日


(6:00の電車のんぞ)
(はやっ…)
(通勤ラッシュとかぶりたくねぇんだよ)
(…あ、そう)
 
 




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