や ば い !
非常にやばいよ。つか昨日のうちに気づいとけよ、わたし!服が無いから買いに行くのにそれをシカマルと行ってどうするのよ。何を着てけばいいのさ。仕事じゃないのにスーツはアレだし、いつもの格好もなあ。しかも只今の時間は、09:30で家から事務所までは15分。うん、これはやばいね。あと15分でなんとかなるかな…。とりあえずタンスの中にある服を掻き出す。どれもイマイチ。ああ、もうどうしよう。
ああ!!そーいえば確かこの辺に…あった!こないだ友達がワンピース送ってくれたんだよね。まさか着ることになるとは思ってもみなかったけど。
よし!髪も巻いてみたし薄くメイクもしたし(いつもしてるけど)完璧。時間はー…09:50…5分遅れくらい…よくないですよねー。ははははー。相手はシカマルだし不機嫌のまま買い物なんて嫌だ!どうか間に合いますように!
うげ、信号ひかかったし、踏切にひっかかったし、やばいやばいよコレ。
う、やっと見えてきた事務所。もう時間なんて見てる暇ないからダッシュで事務所に向かってドアを勢いよく開けた。
「ま、間に合った?」
「おせぇ」
「う、ごめん」
「なーんてな」
時計を見てみれば、長針は1を指してる。つまり5分。だから遅刻は遅刻なんはずだけど。
「5分遅れたくれぇでいちいち怒んねぇよ」
わたしの心情を察したようで、呆れながらもそう言ってくれて。
「ありがとう」
自然にもれた笑顔と一緒にそう言えば、シカマルはさっさと行くぞって言って背を向けて歩き出した。シカマルは服装とか髪型とかについて何も言ってくれないけど、多分気付いてくれてるんだろうな、なんて考えてみる。まあ、シカマルとは仕事仲間って関係でしかないけど。いつかはー…なんて考えてたら思わず笑みがこぼれていて、振り返ったシカマルは頭にハテナマークが浮かんでいる。何でもないよ、っていう意味をこめてシカマルの手を引っ張って歩き出した。
「シカマルー、これは?」
「いんじゃねぇーの」
「こっちは?」
「いんじゃねぇーの」
「さっきからそれしか言ってない」
あんまりいい加減に扱われると拗ねるぞコノヤロー。
「名前なら何でも似合うんじゃねぇーの」
「へ?」
「な、なんでもねぇよ!」
ごめんシカマル。聞こえてた。でももう1回聞きたかったから意地悪しちゃった。けど照れるじゃないか。本気だか冗談だか分かんないけど、本気だと信じる単純なわたし。
「シカマルはどっちのがすき?」
でもやっぱりシカマルのすきな服の方を着たいし、その格好でシカマルの横を歩きたいと思うの。
「こっち」
「じゃあコレにする!」
シカマルが選んだのは、花柄のワンピース。ほんわかしてるパステルカラーのやつ。わたしに似合うかは分からないけど、思いきって着てみることも大切だよね、と自分に言い聞かせて買ってみることにした。
それからは、デパートを適当にぶらぶらして、外にあるクレープ屋さんに行きたいっていうわたしの我が儘に付き合ってくれて、クレープを食べることになった。
「生チョコ1つ下さい」
「まかせろってばよ!」
「「ナルト!?」」
え、こんなとこで何してんのさ。あれナルトって何の仕事してるんだっけ。
「おう!バイトしてんだ!」
「ナルトって会社とかに勤めてないの?」
「向いてんのがなくてよー」
「あ、そーゆーこと」
喋りながらもテキパキとクレープを作っていく。本人いわく、一応唾が飛ばないようにマスクもしてるらしい。なんだ、クレープ作るの普通に上手いじゃん。ちょっと心配して損した。
「380円だってばよ!」
「はい」
「まいどありー」
立べ歩きもあれだから休憩も含めて、クレープ屋さんの回りに設置されてるテーブルとイスに座ることにした。
「おいしいっ」
「そーか」
頬杖をつきながら見てくるシカマルにドキドキしながらも、幸せだなあ、って実感する。
「これ4つくれるかい?」
「千円だってばよ!」
声のする方を見れば、お客さんがいて、ちゃんと儲かってるんだなあ、なんて感心して。でもあのお客さん髪の毛が薄い紫で眼鏡してて1つに縛っててつり目でなんか怖そうだな。ってわたし知らない人に対して失礼でしょ。
「五千円お預かりして、四千円のお釣りだってばよ」
「悪いんだが、それにもう千円だすから五千円に変えてくれないかい?」
「わかったってばよ!」
ナルトがお客さんに五千円札を渡して、お客さんの五千円(千円札5枚)を預かる。そのお金をナルトがレジにしまう前にお客さんがその五千円にこの五千円(つまりさっきナルトから貰った五千円札)で一万円にしてもらってるお客さん。それでやっと満足したのか軽い足取りで帰っていく。
わたしは随分めんどくさい両替してるなあ、としか思わなかったのだけど。
「あれ、金が合わねぇ」
ナルトが突然そんなことを言い出しかと思えばシカマルも口を開いて。
「さっきの両替おかしくなかったか?」
「え?さっきのお客さん?」
「ああ」
突然顔をしかめて悶々とし始めるシカマル。さっきの5千円があれでー…とかぼそぼそ言ってると思えば、突然立ち上がった。
「さっきのやつが犯人だ!捕まえんぞ!」
「は、犯人?」
「説明はあとだ。早く探しに行かねぇと」
「う、うん」
犯人はお客さん
(こっち行ったっけ?)
(こっちだっつーの!)
(うそ!?)
(嘘ついてる暇なんてねぇよ)
(…はい)