とりあえずソファーに座ってもらったのはいいけど、結局誰なんでしょうか、このヒトは。


「名前はコイツ知らねぇよな?」


ソファーに座る人を指で指しながら、そりゃあとてもめんどくさそうに聞いてくるシカマルにコクリと頷いた。


「高校まで一緒だった「犬塚キバってんだ!よろしくな!名前!」

「キバ、お前」


シカマル目がまんまるになってる!驚きすぎだよ、いくら言葉を遮られたからって。ん?遮られただけだったら、いつもはため息してなかったっけ?あれ?何に驚いてんの?


「キバ、お前なんで名前の名前知ってんだ?」

「んな睨むなって!」


そう言えば確かにそうだ。わたしは犬塚キバという人に会ったこともなければ会話もしたことがない。ついさっきまでは。


「…も…しかしてストー「それはねぇな」

「俺がするわけねぇっつーの!」


ちょ、そんな断言しなくてもいいじゃないか。


「で、結局どこでわたしの名前を?」

「テレビだよ」

「「テレビ?」」


クイズ番組のやつかな?でも、あれはまだオンエアされてないよ。でもテレビなんてそれ以外でたことないし。


「そーいや、ナルトがキバのやつカメラマンになったとか言ってたな」


シカマルが思い出したかのように言えば、キバさんは、じゃあ話がはえよ、みたいな顔しながら喋りだした。


「そんでよー、こないだの収録のカメラマンに俺もいたってわけだ」

「だからわたしの名前知ってたんですか」

「そーゆーこと」


記憶力いいな。収録のときって結構な人数がいた気がするんだけどなあ。


「で、なんのよーだよ」

「あー…謝りに来たっつーかなんつーか」


謝りに?シカマルに何かしたのかな。


「は?」


いや違う感じだね雰囲気的に。シカマルは何のことだ?って顔してるし、キバさんもやっぱそーなるよな、みたいなこと言ってるし。見てるこっちもさっぱりだ。


「番組の内容変だったろ?」

「…理不尽だったな」

「俺のせいなんだよなー」

「「は!?」」


それからキバさんは、シカマルが探偵をやってることをナルトから聞いていて、いつかはテレビ局の誰かにバレるかも知れないから、プロデューサーに話して強引に負けさせたこと、シカマルに色々と気を使ってしてくれていたこと。リハーサル中にシカマルに辞退するように言おうとしたが、カメラマンということもあり、伝えられなかったこととか、詳しいことを全部話してくれた。

ちなみに、すぐに謝りに来ようとしたらしいんだけど、探偵事務所の場所が分からなくて悩んでいた時にわたしを見つけたらしい。


「ったく、めんどくせぇーことしやがって」

「悪かったって」


でもシカマルはここ最近、どうしてあんなに理不尽だったか凄く考えてた。(多分…)だけど、それが解決したからか前より清々しい顔をしてる気がする。良かったね、シカマル。


「まぁ、ありがとな」

「おー」


シカマル地味に照れてるし。それみてキバさんは、嬉しそうだし。むしろ笑う寸前といった方が正しいのか、これは。


「そんでよー、詫びっつーのもあれなんだかよ、これやるから2人で行ってこいよ!」

「「?」」


キバさんが差し出してきたのは茶封筒。お金?…行ってこいって言うんだから違うか。ま、まさか旅行とかかな…。シ、シ、シカマルと2人で旅行…旅行…うええええ!2人きりだなんて心臓がいくつあっても無理!いや、落ち着け。落ち着けわたし。まだそうと決まったわけじゃないんだから。こういう時こそ深呼吸だ。すってーはいてー…2人が変な目で見ているのは、気のせいということにしよう。


「開けてみろよ!」


なんでキバさんがそんなに楽しそうなの、と直接は言えないので心の中で言ってみる。

あ、シカマルが今、茶封筒を…茶封筒を…開けたあああああ!!
ってわたしはバカか。


「「温泉旅行…?」」

「おー」

「疲れも取れるし、シカマルは人混みとかきれーだろーし丁度いんじゃねぇーかって思って温泉旅行にしたんだぜ!」

「…わりぃな」

「じゃあ、俺は帰るぜ。楽しんでこいよー」


そういって手をひらひら振りながらキバさんは帰っていきました。ちゃんちゃん。ってちがーう!…旅行…旅行…しかも温泉旅行。シカマルの浴衣姿…。やばい鼻血でるよ。


「名前も行くだろ?」

「う、うん!」


断るなんて出来ません。頭の中で、緊張して死ぬ、とか無理とか思ってたけど、シカマルの浴衣姿を見たい気持ちにはあっけなく負けましたよ。それに、デートみたいじゃん。


「あ、いつなの?」

「明後日」

「え……あ、明後日!?」

「名前、うるせぇ」

「う、あ、ごめん」


明後日っていくらなんでも早くない!?心の準備ってものがあるでしょうが!それに可愛い服とかも持ってないよ。普段は基本スーツとか動きやるい格好だし…どうしよう。ん?ってことはシカマルの私服もバッチリ見れるってことじゃん。うわっ、ドキドキしてきた。…それより今は自分の服の心配が優先。


「明日休みとかには…」

「あ?何か用でもあんのか?」

「いや、ちょっと買い物とかしたいなぁ、なんて」


ははははー。無理ですよねー。仕事は優先だもん。


「んじゃあ、一緒に行くか」

「…え、どこに?」

「買い物行きてぇーんだろ?」

「へ、あ、うん!」


まさか、まさかシカマルから許可がでるなんて!しかも一緒に行こうって!

もう本当にキバさんありがとう!



モヤモヤは解決したようです



(明日10時にここに集合な)
(うん!)
(遅刻すんなよ)
(分かってるって!)







- ナノ -