テレビ番組に出たのが昨日。放送は3日後。だから仕事が増えるわけもなくいつも通り暇なわけで。浮気調査やペット探しの依頼は何件かあったけど、仕事に慣れてきたせいか予想より早く終わった。

シカマルは書類に目を通してたかと思えば、いつのまにか窓から雲を見てるし。あ、あの雲たい焼きの形してる。食べたくなってきた。


「シカマル!わたしたい焼き買ってくる!」

「おー」

「あ、晩ごはん何がいい?」


今日の当番は確かわたしだったはず。そもそも建物の造りが1階は事務所2階は普通の部屋。それでわたしは住み込みで働いてるからシカマルと半同棲状態。だから晩ごはんは順番。

だけど最近は残業だとかシカマルが用事あったりだとかで、全然一緒に食べてなかったから、いつもより心臓がドキドキがしてる。


「鯖の味噌煮」

「分かった」


シカマルって鯖の味噌煮好きだよねぇ。作れないわけじゃないから、全然いいんだけどね。むしろ好きだし。

だけどシカマルが鯖の味噌煮食べたがる時って何か迷ってる時か何かのことに覚悟をしたかのどっちかが多いんだよなあ。多分今回は前者だと思うんだけど…
でも何で迷うことがあるんだろう?


……あるとすればこないだの理不尽なクイズ番組……?いやでも、さすがにそれは無いか。たまたまだろうし、今さらどうすることもないしナルトは結局一楽のラーメン食べれるわけだから問題はないはず。


「名前」

「ん?」

「気をつけていってこいよ」

「…うん?」


あれ、シカマルっていつも心配してくれてたっけ?何か久しぶりすぎて前の感覚忘れちゃった。でもこういうの新婚さんみたいかも。

…普通は立場が逆な気がしなくもないけど。顔緩んでないかな…
とりあえずもう買いに行かなきゃ。


「いってきまーす」









よし、鯖も買ったし、たい焼きも買ったし、おまけで酢こんぶも買っちゃったけど買い残した物はないよね、うん。さっさと帰ってシカマルに作ってあげなきゃ。


「あ!おいっ!そこの女!」


わたしじゃないよね?こんな声の人知らないし。


「お前だって!シカマルんとこの!」


シカマルんとこの…?シカマル…?え、わたし…かな…?ちょびっとちょびっとだけ振り返ってみて状況をみて逃げよう。そうしよ。


「そう!お前だ!」


うげ。目がばっちりあったし。しかも指差されてる時点でわたしじゃないか!いやでも、この人知らないし。じゃあなんでこの人はわたしを知ってるんだ?


「えっと、会ったことありましたっけ?」

「いや、ねぇーぜ!」


満面の笑みで言われてもどうしていいか分かんないんですけどーっ!え、どうしろと?わたしにどうしろと?


「何かようですか?」

「ああ、ちょっとな」

「何ですか…?」

「お前にじゃなくてシカマルに用があんだけどよ」


そうですか。なら直接事務所に行けば良かったんじゃないかな。わたしに用があるとか思った自分がちょっと恥ずかしいんですけど。


「じゃあなんでわたしに話しかけたんですか?そもそも直接事務所に行けばすぐ会えますよ?」

「事務所の場所しらねーからよ。どうしようか迷ってたら、お前に会えたってわけだ」

「つまりわたしに案内させろと?」

「分かってんじゃねぇーか」


わたし何で買い物きたんだろう。大人しく事務所に居れば良かった。というかこの人本当にシカマルの知り合いなのかさえ曖昧なんだよね。

ま、いっか。シカマルが何とかするだろうし。


「じゃ、ついてきて下さい」

「おー」



にしても会話がないのは辛いかなあ…しかしこの人と話す内容なんて…あああ!あった!


「あ、あのっ」

「?」

「シカマルと知り合いなんですよね?」

「幼なじみみてぇなもんだな。いのやちょうじよりは、付き合いあせぇけど」

「いの…?…ちょうじ…?」


わたしシカマルのこと詳しく知らないのかも、なんてぼんやり思った。そしたらちょっと悲しくなったけど今はそれより聞きたいことを聞くことにしよう。


「シカマルの小さいときってどんなんだったんですか?」

「あいつ授業サボって屋上行ってたくせに頭良かったんだよなー。ったくどんな頭してんだっつんだ」


やっぱり昔から頭いいんだ。今のシカマルを小さくした感じなのかな?小さい頃見てみたいなあ。


そこから色んな話し(主にシカマルのこと。むしろシカマルの話だけ。)をしてシカマルのことを前よりも知れた気がした。

その会話でこの人はいい人だと判断しましたよ。だってシカマルのこといっぱい教えてくれたもん!

シカマルが酢こんぶ好きなのは昔からだとか、いつも雲眺めてるだ(あれ、これって前から知ってたか)とか、将棋が好きだとか。でもお父さんのシカクさんにはいつも負けちゃうこととか。

この人に感謝だね。



「あ、もうそろそろ着きます」

「おう」


ちょっとお喋りし過ぎたかな…いつもより時間かかっちゃった。シカマル心配してるかな…?


「ここです」

「奈良探偵事務所って、まんまかよ!シカマルらしいっちゃらしーがな」

「…ま、どうぞ」


独り言なのか会話なのかいまいち分かんないのがちょっと問題かな。


「ただいま」

「名前、随分遅かったじゃねぇーか…って…」

「よっ!」

「シカマルに会いたかったらしくて連れてきちゃった」

「はぁ…」


あれ、ため息ついちゃうの?久しぶりの再会で、こう何か盛り上がったりしないの?



結局この人は誰?


(この人と知り合いなんだよね?)
(まぁな…)
(感動の再会とかは?)
(んなもんねぇーよ)




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