鏡越しの君に | ナノ



『あ、いたいた仙蔵』

「何の用だ一樹」

仙蔵と文次郎の部屋を覗いてみると、運良くうるさい文次郎いなかった。おお、ラッキー 不運な俺でもいいことあるじゃん。

『来週さ うちの組 女装の試験あるんだよ』

「回りくどい言い方をするな
結局なんなのかはっきりしろ」

仙様厳しいな、おい。

『すいませーん つまり、女装の練習手伝ってくださいってこと』

「…仕方ない、この私が直々に手ほどきしてやろう ありがたく思えよ?」

なんか一瞬考えたぞ仙蔵 嫌な気がするけど赤点取りたくないし それに今日の俺はラッキーだしな。

『ありがたく思ってるって!
今度なんでもおごるからさっ』

「いるか そんなもの」

『すいません、はい』

「はやくはじめるぞ 貴様に時間を割くほど暇ではないんだ」

といいつつ用具準備してくれる仙蔵はやっぱりいい奴だな、って思う。人より少し正直になれないだけなんだろうなあ

『ありがとな仙蔵』

「どうした気色悪い ああ悪いいつもだったな」

し 正直になれないだけ なんだよな







『おー 仙蔵の言う通りにやったら本当に女みたいになった』

「当たり前だ これで赤点でもとってみろ
どうなるかわかっているな」

『も もちろんです』

「では行くぞ」
『え どこに』

「とりあえず 留三郎と伊作のとこにでも行くか」

『待ってくれ仙蔵 化粧だけ落としていいか』

「それでは意味がないだろう?
せっかく着物も貸してやったんだ お前だとバレないようにしろよ」

そ そういうことか仙蔵 やっぱり不運だ俺

『いや ほんとにそれだけはっ
頼む仙蔵っ 』

「そこまで言われたら やるしかないだろう バレなきゃいいんだ 適当に声を変えてやり過ごせ そうだな、それが女装の手ほどきをしてやった礼でいいぞ?」

『せめて他の奴にしてくれっ
なんで留三郎と伊作なんだよっ』

「そうか?なら五年や四年あと一年の良い子達で」
『ごめん 俺が悪かったよ!
留三郎と伊作の部屋行ってきますっ』

「わかればいい」





やっぱり不運だった
(あーつらい 頑張れるかな俺)
(うまくやれよ?)




20140325*



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