サイト掲載分 | ナノ


野郎どものコイバナ01【青黄・火黒・紫赤】


R指定していますがただ下品な話してるだけ。



ミンミンと蝉の鳴き声が夏を告げる夏。外はその鳴き声と太陽の日差しによって殺人的な暑さである。コンクリートの上で生活させてもらっておいて何だが、照り返しが辛くてコンクリートを剥ぎたくなってしまうほどである。
そんな灼熱地獄から解放されたいと思い、人は皆建物の中に入っていく。その中でも食べるものがあり、席が十分にあり、クーラーがんがん、長時間いてもまぁあまり怒られない、という利点からいく場所が決められていく。
さらに社会人であればまだその範囲も広がるだろうが、学生ならば限られた金銭しか持っていない。つまりはファーストフード店が一番心地良く長居できる場所となるのだ。そう考えて火神もこの場所を集合する場として選んだ。

「つかなんであんたらがいるんだよ」
「そりゃこっちの台詞だ、ここ部活帰りに寄ってんなら休みくらい違うとこ行け」
「ちょっと峰ちん、もう少し詰めてよ」
「おお、悪ぃ」
「しかも相席…」
「混んでて座るとこねーんだから文句言うな」

平均身長よりもかなり長身の男が3人、6人掛けの長机に腰掛けている。それだけでもかなり圧迫感があるのにも関わらず食べる量もかなりの多さで机の上が山盛りになっている(主に3人中2人のせいなのだが)(さらに一人はお菓子が良いといちゃもんをつけている)。
火神が良く行く場所、つまりマジバには珍しい面子がそろっていた。

「青峰とかここより違うとこあんだろ」
「黄瀬が黒子の通ってるマジバに行きたいって言ったんだから仕方ねぇだろ。俺の指定じゃねーし。それよりは紫原のがどうしてここにいんだよ」
「俺も赤ちんがここがいいって。なんでか知らない〜」

部活のライバル校に所属する2人は平然と答えて目の前のジュースをぐびぐびと飲み干す。
火神は始め一人で座っていた。混み始めたため席を6人席からカウンターに移動しようと店内を見渡したときに青峰と目があって目の前に座られた。いきなり座ってきた青峰に文句の一つも言おうかと言うときに、知ったでかい身長のやつがいると言い出してその方向を見ると紫原が頭2つ3つ飛び出して立っていたのだ。
結局3人になって席も移動できずに今に至る。

「紫原はどうせ赤司と二人だろ?火神は黒子か?」
「まぁ、」
「どうせって言わないでよ。会うのかなり久しぶりなんだから」
「お前ら遠いもんな」
「そう〜。遠恋まじ辛い」
「え、遠恋…!?」

火神はごふごふと食べていたバーガーを吐きそうになったが、青峰も紫原もなにを今さらといったような素振りである。

「なんだ知らなかったのか」
「そんなん知るかっ!」
「俺、赤ちんと付き合ってるよ。高校遠いから会えるのって年に数回なんだよねぇ」

何回会えるかななんて言いながら大きな手を広げて数えていく紫原にあいた口が塞がらない。
火神は青峰と黄瀬が付き合っているというのは薄々感じていたし、黒子からも聞いていた(本人たちも特にキセキ世代に隠してないようであったし、黒子は別に火神くんに言ってもなにも言われないでしょうなんて楽観視していた)。当の火神も黒子と付き合っているため同性愛の偏見は一切ないが、あまりにも身近に同じ趣向の人がいると若干違和感すら覚えた。この国は閉鎖的だと思っいたがこういうお国柄なんだなと訳の分からない納得をしながら火神はそうなのかと一言返事をしただけに留める。

「紫原ンとこが一番長いんじゃね?」
「なに、こいつも誰かと付き合ってんの?黒ちん?」
「そうそう。最近だろ確か」

にやにやと嫌な笑顔で話を振られてまぁ、と濁す。
なんだかこのメンバーでこのような話はむず痒い。バスケの話やバスケをするならばこんな気持ちにはならないだろうが、普通の友人のように恋愛話に花を咲かせるのはいつもと違って戸惑う。

「峰ちんとこは別れたり付き合ったり忙しいよね」
「それは黄瀬が悪い。俺は悪くない」
「え、別れたことあんのか?」
「もう3回くらい別れてるっつーの。あいつがぐだぐだ言うから」

青峰が言うには、最初は些細なことで喧嘩を始めるのだがどんどんお互いがヒートアップしてきて止まらなくなるらしい。その時に売り言葉に買い言葉、普段ならなにも気にならないこともその時にねちねちと言ってくるものだからどちらかがぶちギレて「別れる」と言って別れてしまった事が3度もあったのだ。それでも最後は仲直りして元通りになる。

「俺、冗談でも別れるなんて言えねぇ」
「うんうん。そんなん言ったらどうなるかわかんない」
「いや、その時は本気だから」

それからもこの珍しい三人は恋愛話という珍しい話の内容で珍しく話が弾んだ。
火神と黒子は付き合ってまだ一年も経っていないということ。紫原と赤司は付き合って2年以上経っていて、住んでいる場所が遠いのが本当に苦痛だということ。こういうところが好きになった等、ここは女子会かという程の花の咲きようだ。周りもこんなでかい男子が揃いも揃って恋愛話に花咲かせているとは思ってもみないだろう。

「つーか黄瀬は会えなさ過ぎなんだよ」
「あーモデルもしてるし」
「部活ない時仕事してるし部活の後に仕事入ってるときもあるし、俺の事二の次とかいい度胸してんじゃねーのっていつも思う」

黄瀬はモデルの仕事も本格的にではないが行っている。毎日毎日学校部活と忙しくしているのにさらにモデルの仕事があれば恋人に裂く時間などごく限られたものだろうと安易に予測できる。別れた理由に勿論会えない時間が多すぎるというのも含まれていた。

「最近も雑誌出てたもんね〜」
「高校もちげぇし、二週間以上会えないのがザラにあるしさ。俺の下半身の処理どうすんだっつーの」
「ちょっと峰ちん、それ俺の前でゆうー?」
「お前良く我慢出来てるよな」

学生でバスケに没頭しているキセキ世代はアルバイトなどする暇もなく部活に通っている。紫原も練習は嫌いだが赤司がバスケをしているし一緒の事をしたいからやっている。そうすると金欠はいつもの事で、とても会いに行く交通費なんて出せない。

「だって赤ちんが我慢しろってゆうからさー…我慢してる」
「お前が我慢!?」
「だってどう考えても毎日会えないもん」

紫原の言っている意味が理解出来ないというような顔で青峰はありえねー…と溢した。好きなものはとにかく手に入れたがる子供のような紫原の性格を知っているからこそ、会うことを我慢しているだなんてこと考えられないのだ。

「俺週一でも腹が立つってのに」
「それ贅沢だよ。あーえっちしたいーっ!」
「ちょ、でかい声出すなって!」

紫原の口にバーガーを詰め込んで黙らせたのは火神で、顔を真っ赤にしている。

「なんだなんだ、火神こういうネタ乗り気じゃねーのかよ」
「昼間のこんなとこで話す話題じゃねーだろ!」
「お前男ならいつどこでも話せよ。黒子とはどうなんだ?あ?」

今日一番の下世話な笑顔で火神の事を笑う青峰にありえないというような引いた顔で対応する。火神も思春期の男子なのだからそういう話は嫌いではない。けれど時と場所によるだろう。この家族連れもいるような賑やかなファーストフード店で大きな声を出して話すような会話ではない。

「気になるー。なに、あんたが突っ込まれる方?」
「つっこ……!?馬鹿か!!」
「えーだって黒ちんたまにすごいぎらぎらしてるよね」
「あーあいつな。たまにな。なんだやっぱり火神が上か」
「当たり前だ!」

黒子は確かに試合中ギラギラしているところもあるが、それはスポーツマンならだれでもあることだしそこは上下の関係はあまり関係ないだろうと火神は思う。それを言うならば体格差だとか身長差だとかそういうことを考慮してほしい(たまに逆になりそうだという不安は実は毎度付きまとっているが)。

「ヤった?もうヤった?どんな感じ?」
「〜〜〜!そ、そういうお前らはどうなんだよ!」

あまりにも不躾けな質問の横行に火神がオウム返しで答える。さすがにこれでこの話の流れは止まるだろうと予見していたのだが、その考えはあっさりと打ち砕かれた。

「俺も付き合って別れてってしてるけど結構長いんだぜ?なんでもやることやってんに決まってんだろ」
「黄瀬ちんビッチっぽいよね」
「お前いきなり人の恋人になに言ってんだ。合ってるけど」

ねーそう思うっしょ?とするっと答えてなおかつ同意を求められてしまったのだから火神は完膚なきまでに負けた。この下世話な話は打ち砕けない。乗るしかないのだ、変に恥じらうより適当に乗ってしまった方が楽なのだという事をついに悟った。

「び、ビッチっつーか、慣れた感じしてそうだよ…な」
「あーまーそうかも。つーかあいつマジで声でかいからな」
「うるさそうだねー」
「青カンにここまで向かねぇ奴も珍しいわ」
「とか言いながらやってるくせに」

青カンという言葉からどういうところでやっているのかという話になり、火神は自分の部屋と妥当なところを答えた。青峰&黄瀬カップルはホテルに行ったり互いの部屋が多いが、たまに体育館倉庫でもという火神の常識を覆すような事をいってのけた。そこでダメージを負っているとさらに追い打ちと言わんばかりに、紫原&赤司カップルも体育館倉庫はたまに使うと言い出し、教室も使用したことがあるというキャパオーバーな事を言ってのけたのだ。

「お前ら学校になにしに行ってたんだよ!」
「バスケとえっち」
「赤ちんに会うため」

火神は勉強となってはまるで駄目だしそのために学校に行っているとは大きな声ではい言えない。しかしバスケをしたいがために今学校に通っているとは真剣に言える。なのに二人は勉強はもとよりあり得ない答えを返してきた。紫原などバスケすら入れていない。なんだか自分が唯一の常識人のように思えてきて火神は頭が痛くなってくる。

「んなことより黒子どんな感じなわけ?」
「ど、どんな感じって言われても…」
「だぁら、ここがグッとくるとかなんか感想あんだろーがよ。ヤってるときとかよぉ」

いきなり夜の営みについて聞かれてるとは思ってはおらず考え込む。
大体なぜ偶然会ったライバル校の連中にそんなことを話さなければならないのか。バスケ部の他の奴らにも言ったことがない話だぞといろいろと考えるが、ここで頑なに言わなければ空気が読めないやつというレッテルを貼られるのもまた不本意だ。

「グッとくるというか…そう、だな…好きとかいっぱい言うから嬉しくはなる」
「うっわー黒ちん超言いそう」
「お前らあれだろ、周りを顧みずいちゃついて困らせるタイプだろ」
「絶対そうだよね」
「例えそれで迷惑をかけていたとしてもお前らには言われたくなかったぜ」
「はぁ?なんでだよ」

第一学校も部活も一緒なのだ、公私混同は(あまり)していないつもりだ。こんなところでこんな話を持ち掛けるようなやつらよりは周りをしっかり見れていると火神は自負している。

「俺は紫原が赤司と付き合ってるってのが驚きだな」
「中学の時からべったりだったもんな。お前が上?」
「うんそうだよ。まぁ中学の時もあんまり本番なかったんだけど」
「は?」

紫原の話では、同じ学校に通っていた頃も普通のセックスは「ご褒美」のカテゴリーに入るらしく普段はあまりさせて貰えなかったらしい。練習を頑張っただとか試合で活躍しただとかやる気のなかった試験で良い点数を取るために努力した時は好きにさせて貰えるらしいが、それ以外はすべて赤司の思うがままにしていたようだ。

「なに、お前じゃあえっち禁止的な?抜くの一人で?」
「抜くのは抜いてくれてたよ。手で」
「て…手!?」
「足でもしてくれるけどー機嫌よかったらおくちかな」

どんな性生活を送ってんだよ、と突っ込みたくなったのは二人一致した。本人も少し不服ではあるようだが別段それを否定しているわけではないためその言葉は喉の奥にひっこめた。

「赤司が下であんあん言ってるのとか考えらんねーからありっちゃあり…か…?」
「赤ちんあんま声出してくんないんだよねー。ま、我慢してるのすごいクるからいいけど」
「あれだろ、大体騎乗位でヤってんだろ?」
「峰ちんせいかーい」

机に残った最後の一つのポテトを口に運びながらやっぱりなーとげらげら笑う青峰。その後ろの席からぬっと現れた手が思い切り青峰の両頬を引っ張った。

「いででででっ!!」
「青峰っちなにこんなところでそんな話してるんスか!」
「あれ、黄瀬?」

ひょこっと青峰の後ろの席から顔を出したのは、先ほどからビッチだなんだと言われていた黄瀬本人だった。

「ずいぶん楽しそうな話をしていたね?」
「青峰君、火神君に悪影響なことをよくべらべら喋ってくれましたね」
「赤ちん!」
「黒子もいたのかよ!」

黄瀬の横からぬっと現れたのは紫原が待っていた赤司と火神が待っていた黒子で、二人とも笑顔を張り付けているが、本気の笑顔でないことは誰にだってわかる。

「つーか黄瀬おっせぇよ」
「あんな話されたら出てくるタイミング完全に逃すっスよ!」
「敦、誰かそんな事をべらべらしゃべって良いって言った?」
「ご、ごめんなさい」
「火神くん、この人たちの言っていることはちょっとよくわかんないので何も考えず忘れてくださいね」
「お、おぉ…?」
「ということで僕たちはここで失礼します。行きましょう」

黒子と火神はあっさりとその輪の中からフェードアウトしていった。黄瀬がもうちょっと一緒に居たいッスと言っていたり、まだここに居ろよという青峰の発言は完全にスルーだ。
次に赤司が席からなにも言わずに立ち上がり、そのまま店を出て行ったため紫原も急いで追いかけ、結局そこに残ったのは青峰と黄瀬の二人きりになった。



続→

Back

×