濡れ縁にて【しますぐ♀】 「幕府の政治の最高職は?」 「えーと、あー……ろ、老中?」 「…正解」 「よっしゃー!ほんならええですよね?」 「しゃーないな…約束や」 失礼しまぁす!と廉造は勝呂の膝の上に頭を置いた。 廉造のテストの成績は悲惨なことになっているため、勝呂がテスト勉強を手伝っていた。最初は机に向かって必死に勉強をしていたが、この勉強してますという空間がもうだめだということで濡れ縁に座って一問一答で勉強をしている。 そして現在、十問連続正解をすればご褒美に膝枕(廉造の希望である)をしてやると言われ、そのご褒美をもらっている最中だ。 「やればできるやんか」 「ご褒美があれば頑張りますぅ」 「こんなん褒美になるんか」 「なりますよ!今めっちゃ幸せです」 お嬢の膝枕〜と腰に腕を巻き付けている廉造はこのまま往生しても未練はないというくらいの幸せそうな顔をしていた。そんな顔をされてはなにか言ってやろうという気も失うというものだ。 「休憩したら次は数学やで。これは机に向かってやってもらうからな」 「えー……ご褒美」 「なに、今度はなにして欲しいの」 我儘な男やで、とおでこをペチリと叩くと自分の要望を聞いてくれることにさらに笑顔になって一言言った。 「お嬢からのキスしてください」 「……」 「やってくれたら俺めっちゃ頑張れる気がする」 「……あほか」 足を素早く横にスライドさせ、廉造の頭の支えをなくす。ごつん、と鈍い音を立てて床に頭をぶつけた廉造は涙目になりながら「しくったちょっと調子付いてもた…」と小声で呟いた。 「わーん、お嬢見捨てんといてえ!」 くるりと後ろを向いてしまった勝呂にすんませんちゃんと勉強するんで一緒に、と弱弱しい声で頼み込む。 「男がそんな声出すな」 小さく柔らかなその掌で顔を包み込むように持たれ、そのまま勝呂の唇は先ほど叩いたおでこに触れてそっと離れた。 「…っ!」 「ここに欲しかったら全教科80点以上とってみぃ」 人差し指でむにっと自分の唇を触れられ、にやりと笑う勝呂に顔が真っ赤になった。 「あ……ぁの」 「ほなうち先行っとくで」 「お、おれも行きます!80点取ります!!」 どの教科(保健体育以外)も50点取れれば万々歳な点数しかとらない廉造が80点をとるという。 「せいぜいおきばりやす」 結果は本人らのみぞ知る。 (お嬢の、キス!お嬢から!キス!) (なんやこいつけったいな鼻息して勉強すんな) <了> |