濡れ縁にて【金勝♀】 「…(すんすんすんすーはー)」 「…神よ、汝我が魂を……」 「……♪(ふんふんっふんっ)」 「魂を……我が魂を……あーあかん!金造カンペ!」 「神よ汝我が魂を陰府より救い我をながらえ〜」 「あーそうや!陰府より救い我をながらえしめて、や。そこあかんで金造」 濡れ縁に座り、足をぶらぶらとさせながら金造の高校の教科書を見ていた。部屋を整理していたら出てきたと言っていたので少し拝借させていただいたのだ。金造も全然ええですけど、と言っていたので嬉々としてその教科書を見た。部屋の掃除を終えた金造は濡れ縁に座っている勝呂の後ろに座り足の間に彼女を収め、彼女の髪のにおいや肌の柔らかさを堪能していた。 教科書で「暗記!」とマーカーしている致死節を覚えようと先ほどからずっと教科書と睨み合いをしている(この丁寧さは明らかに金造の文字ではない)。その顔は至極楽しそうだ。 「えーええやないですかぁ」 「お腹はやや!……ぷよぷよやし」 「そうですか?」 タンクトップ一枚の勝呂の二の腕を触ったり、太ももを触ったりしていたのだが、腹はNGらしくペシっと手を叩かれた。普通であれば恋人でもない男に二の腕や太ももを触られるのだなんてもっての外だが、この二人の仲ではこれが普通だ。 「やぁや!触るんやったら退いて」 「お嬢構ってくれへんねんもん。いい加減むくれてしまいますえ?」 「やって、これ面白いねんもん」 教科書を見て面白いという奇特な子は彼女だけだろうと思う。本人が楽しんで笑顔で教科書を見ているのだから、金造も嬉しい。けれど、構ってくれないのは嫌だ。 「そんなん来年いっぱい見れます。来年俺はお側におれんのやから今のうちにいっぱい遊んでください」 すりと頬に頬を合わせて目を合わせると、勝呂は持っていた教科書を閉じて手放した。 「…そうやな、堪忍え?」 「とりあえずお嬢、乳揉んでもええです?」 「あは、お前いっぺん死んで来い」 (む、胸は彼氏にしか触らせへんもん!) <了> |