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【伽樓羅+しますぐ】


「なぁ、もう一応役目果たしたんやろ?」
『うむ』
「………長いこと和尚が世話になっとってこんなん言うのもあれやけど、なんでまだおるん?」

ピヨピヨと宙を浮遊している一匹の鳥らしき悪魔。名を伽樓羅という。勝呂の寺の件で公になった和尚の「秘密」。その一部がこの伽樓羅であった。

『いては不快か?』
「いや、そんなことまったくあらへんけど」

伽樓羅は一件が片付いても消えることなく勝呂の傍にいた。勝呂の頭の上を自分の定位置にしている。時々肩にいることがあるが、伽樓羅は頭の上が気に入っているらしい。もちろん本人(本悪魔?)に聞いたわけではないが。
勝呂も伽樓羅がいることを疎ましいとか思ったことはないし、寧ろ低級悪魔なんて邪魔だなと思った瞬間消し炭にしてくれる。疲れていたら気遣いの言葉をくれるし、静かにしてくれていて勉強の邪魔なんて一切しない。ただ、たまに力を貸してくれたりもするため、勝呂は自分は伽樓羅になにも与えていないのに良いのか、と考えていた。

『ではなぜそのようなことを聞く』
「和尚は秘密をお前にやっとったんやろ?俺はなんもあげてへんやんか。それやのに俺の傍におってくれるんか?」
『ふむ、そうだな』

勝呂の横に着地し、考えるそぶりをする。それを勝呂は黙って待っている。
どたどたどた、と足音が聞こえるとそっちの方を見るとひょっこり廉造が柱の影から姿を現した。

「ぼーんー。夕ご飯らしいですよー」
「おーすぐ行くわ」
「どないしたんですか?」
「いんや、なんもあらへん。伽樓羅、行くで」
『契約しよう、達磨の子』
「へ?なん……ぅお!?」

カラスのような大きさであった伽樓羅はむくむくと大きくなり、180cmもある勝呂よりも少し大きく、人型になった。少々すまし顔の端正な顔立ちで、顔の横から垂れてきた長い髪を鬱陶しそうに背中へと避けさせたその動作だけでも「良い男」と言われるであろうかっこよさ、美しさだ。

「な、な、な……」
『志摩の小僧、達磨の子をしばし借りる』
「あっかーん!借りるやったらちっこい鳥のままでええやないか!なんでそんな人にならんといかんねん!!」
『よく吠える小僧だな』
「伽樓羅、ほんまにええんか?」
『構わん』
「……志摩、俺ちょっと飯遅くなるって言うとって」
「坊!?」

どうすればええんや、という勝呂に誰も来ない部屋に案内しろと伽樓羅。それをぶるぶる震えながら見守るしかできない廉造は苛々とそわそわで頭が爆発するかもしれないと考える。

『またな、志摩の小僧。さぁ行こう竜士』
「りゅ………!!!???」

勝呂の腰に手をあて、廉造の方を流し見、にやりと笑ってそのまま勝呂と奥へと行ってしまった。


(なにすんねん!なにすんねん!坊と人型になった伽樓羅でなにするんよ!!)
(これだけでも十分に芥が喰えるな)



<了>

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