面倒な男 「ふんふんふーん」 「上機嫌だね、環くん」 ホテルのカードキーを扉に押し付けて解錠。すぐに中に入って荷物を投げ捨て、ベッドにダイブ! 後ろでそーちゃんが物を投げないと怒ってるのが聞こえるけど、俺は嬉しくてそれどころではない。環くん聞いてる? と寝転ぶ俺と目線を合わせるように屈むそーちゃんは不満げな顔をしているけれど、それすらかわいく思えてしまうほど、嬉しい。 嬉しい原因が、この不満げな顔のそーちゃんだからな。 「今日の夜二人きりで、明日オフだな」 内緒話をするように片手を口に当ててこそりと事実を伝えた。 すると白い肌をほんのり赤らめて、何事もないように努めてそうだね、という答え。素っ気ないただの返しだけど、その目は泳いでいて、俺の言った言葉の意味をちゃんと汲み取っての返事だと思うとまた嬉しさが込み上げて足をバタつかせてしまった。 勿論これも埃がたつからと怒られたわけだけど、そんなもの今の俺にはきかないぜ、ふふん。 MEZZO"は超超仲良しだか、超超超仲良しだかなんだかと言われているらしい。最初はそうでもなかったけど、最近はそのとーり! 正解! と言った人全てに拍手を送りたいくらい同意する。 だって、超仲良し通り越して好きになっちゃったんだもん。さらに言えば想いが通じて恋人、なんて関係性に収まってしまってたりする。ファンの人はそこまで要らんって思ってるかもだけど、表向き普通に仲良しなんだからそこは許して欲しい。恋は盲目だかんな。 そんな俺たちの本日のキーワードは明日はオフ……まぁ午前中だけだけど、んで地方のホテル、同じ部屋、夜、二人きり。はいこれ、もう最高のシチュエーションだろ。付き合ってるからそういうことも致してるんだけど、最近忙しかったり寮に人がいたりとなかなか出来なくて今日という日を楽しみにしていた。今からは荷物を置いたらすぐに出ないと行けないけど、仕事が終わってご飯食べたら早めに解散だ。 「ほら、もう行くよ」 「うす」 帰ってきたらご褒美が待っていると思うと、自然とやる気が出てくる。ちゃんとスタッフさんに挨拶するのと、よろしくお願いしますって言うのは忘れないようにしないと。挨拶回りもついていって、コメントに気を使う。で、最後にありがとうございました、だ。そうしたらそーちゃんが嬉しがってくれて、俺も嬉しい。 「環くん、機嫌良いね」 「おう。絶好調」 「今日は時間は短いけど生放送だし頑張ろうね」 「ん」 俺のやる気マックス、そーちゃんも機嫌良い。生放送だから気を使わないといけないことが多いし緊張するけど、ローカル番組ながらに知ってるベテランタレントさんもいてくれるから、良いように回してくれるだろう。天気が曇りで風がぴゅうぴゅう強いこと以外は全部順調。ああ、今日はきっと良い一日になるな! 「そーちゃん上がったぁ」 「あ、うん。ドライヤー持ってこようか」 「ありがとー」 「僕が上がる前にちゃんと乾かしておいてね」 おかしい。 今日一日を振り返っても明らかにおかしい。出来すぎるほど良い一日だったのだ。 そーちゃんの言う事を聞いてお利口さんにしてたから神様が良い一日にしてくれたのか? と思ってしまうほど良い日だった。ホテルを出てからタクシーで現場に行くまで信号がほとんど青信号で、生放送は短い時間なのに大爆笑で、出てる俺たちも楽しかったし来てるお客さんもめちゃくちゃ楽しそうだった。スタッフの人にも良かったですよって高評価を貰って、その番組のスタッフさんのご飯会に混じって美味いもん食えたし、そーちゃんは俺がいるからって酒を我慢してくれてなんとまだ素面! スタッフさんも無理に勧めなかったことが勝因だ。そして早めに帰らせてもらって今に至る。 これは神様が毎日忙しかったでしょ、今晩はいちゃいちゃしなさいって言ってくれてるとしか思えない。 とりあえずこんな良い日に怒られるのは嫌だから、ドライヤーは当てとこう。あとバスタオルも敷いてナニがどうなっても良い様にだけしておこう。 「はっ! どっきり!?」 まさか実はどっきりに巻き込まれてる? 俺だけ知らされてなくて寝る前とかに『この良い一日はどっきりでしたー!』とか言われる? なにそれ泣く! あと今日なに言ったか全然覚えてねー! やばいことは言ってないと思うけど! ぶおんぶおん温風が顔にあたって痛くなってきた。大体乾いたし、もういいか。まずカメラが仕掛けられてないかだけ確認しよう。 「……なにしてるの?」 「いや、どっきりカメラがないかと思って」 「え、どっきり仕掛けられてるの!? あっ言っちゃった! こういうのは自然にした方が良いんだよね? 今のところカットしてもらえるかな」 「や、俺が勘繰ってるだけ……って、そーちゃんパジャマは?」 棚の後ろを調べ終えたところでどっきり良い一日でした、の線は消えた。じゃあやっぱりそーちゃんといちゃいちゃしなさいって神様が言ってるんだと遠慮なく抱きつきに行こうと思ったら、お風呂上がりなはずなのにてろてろパジャマでも俺みたいなバスローブでもなんでもなく、仕事に着ていった服をそのまま着た彼がそこに立っていた。 「いや、あの」 「風呂は入ってたよな?」 シャワーの音もしてたし、そーちゃんの髪の毛濡れてるし、長風呂してたし。顔が少し火照ってピンク色になってるのが可愛い。 「入ったよ。その……環くん、あのね」 そーちゃんの言いたいことがいまいち分からなくて、たぶん変な顔をしていたんだと思う。ちょっとこっち、とベッドの縁に呼ばれて一緒に座ってから、あーとかうーとか言い方を考えてるそーちゃんが俺の顔を見て決心したような顔付きになった。 「言いたいことまとめてくれた?」 「うん。つまりね、恥ずかしいんだ」 おっけ、まとめすぎて分からん。 そーちゃんは面倒くさいこと考える癖があるけど、結構分かりやすく説明してくれたりしてくれる方だ。なのに今回はまったく分からない。馬鹿な俺でも言ってしまう。 「しゅ、主語、なに」 久しぶりに主語なんて言葉使った。いおりんに言ったら棒読みながらに偉いですねって言ってくれるレベルだな。 「今日……す、……うん」 「言いかけて納得して止めないで!?」 「う……、その。す、……する、だろう?」 ホテルの敷かれている絨毯の毛一本一本を見るかのように下を向いていた紫水晶のような瞳が、ちらりと横にいる俺に向けられる。 なにをする、なんて無粋なことは聞かない。 少し膜を張ったその潤む目と、風呂で火照っただけじゃない顔を赤みですべてを察する。 「うん、俺はしてぇなって、思ったよ 。久しぶりだし」 俺が性欲強いだけなのかもだけど、週に一度は最低でもしたい。触りたい。気持ちくなりたい。勿論誰でもいいわけじゃなくて、そーちゃんと。 皆がどんくらいの頻度でしてるのか分かんないけど、許されるなら週の半分やりたい。でも流石にそれができないことだってのは分かってるから週に一度。 そんな俺が今回は二週間くらい我慢してるのだ。いや、二週間以上だ。しまくりたいに決まっている。 「そ、そう、そうだよね」 「そーちゃんやだ? 気分のらない?」 気分っていうのはとても大切だと思う。俺がしたくても相手がしたくないのならしちゃいけないとも思う。それは、したい方が我慢するかしたくない方をその気にさせるか二択だ。 「そうじゃなくて……だから、恥ずかしくて」 「……。……そーちゃん処女でも童貞でもないじゃん」 「なにその処女でも童貞でもない男は恥ずかしがる権利もない、みたいな言い方」 「そうじゃねーけど、ねーけどさ」 女の人とも経験があって、俺以外の男の人とも経験があって。かといって俺は童貞そーちゃんに食われてそのままずっとそーちゃんしか知らない。全部そーちゃんの味しか知らないのだ。 そんな経験のない俺みたいな男の前で恥ずかしいだなんて。俺が言うなら分かるけど、あんたが言う? みたいなね。どうしてもそんな気持ちになるよな。俺悪くない。 「そうじゃないならなんなの」 「どこが恥ずかしいって? もう全部見てんじゃん」 そう、全部。ぜーんぶ見た。それはそれはもう隅から隅までしっかりと。薄暗い中でだけだけど、えろい首筋から薄いけどしっかりしてる胸板、括れた腰に白い太もも。細っこいのに筋肉がのってるふくらはぎに、あとは言えないようなところがぐっじゅぐじゅのぐっしょぐしょになるところまで全部。そこまでしといて、なにを今さら恥ずかしがるのか理解できない。 「正気に戻るというか、いきなり恥ずかしいと思ってしまうときがあるんだよ。日が空いてるから」 「はぁ、じゃあしたくない?」 「したくないというと語弊がある。そうじゃなくて裸を見られるのが恥ずかしい」 めんっっっっっっっどくせー! っていう本音を言うときっとそーちゃん余計にうだうだし出すに五百円。 でも、やりたくないっていうならお手上げになるけど裸になりたくないならやりようがある。 「じゃあ、そーちゃんの肌見るのは我慢する」 「う、うん」 「でも、えっちしたくないわけじゃねーんだから、このままやろ」 ずりずりとそーちゃんの座っている後ろにいってぎゅっと抱き締めた。チェックシャツのボタンを下から三つだけ外して、その中に手を突っ込む。 「わ、ちょ……っこのままって、」 「なんだっけ着たままえっちするの……着衣プレイ?」 「えっえっ、あ、わ……っ」 チェックシャツで俺は肌が見えないけど、その代わり掌でそーちゃんの温かさと感触を楽しむ。首筋に鼻を寄せると同じシャンプーとボディーソープのにおいがするはずなのに、俺なんかよりすげー良いにおいがする。きっとそれは彼特有のにおいが混ざってるからなんだろうけど、良いにおいで幾らでも嗅ぎたくなってしまう。 「そーちゃん、かわいー」 「……におい、嗅ぐの禁止っ」 「なんで? すごいコーフンする」 スンスン、と肩から首筋、うなじと進む。 やっぱり良いにおいで、優しいにおいなのにどんどん興奮していくから、俺って変態ってやつなのかなぁって思う。 「あ、うぅ」 「ちゃんと見てないから」 「なん、か……それはそれで恥ずかしくなってきた」 「そーちゃん我儘」 そんな口は喋れないようにしてしまおう。 空いた手でそーちゃんの顔を横に向けてそのまま今日初めてのキスをした。むにゅって触れるだけのやつ。すると我儘ばっか言う口は黙ってくれて、スタンプを押すかのようにちゅ、ちゅ、ちゅってキスを落とした。 ふふふ、と笑い声が聞こえてきたところで舌をちょんと彼の唇につける。するとまるで反射のように小さな口がうっすらと開くから、その隙間に舌をねじ込んだ。 つるつるの歯に舌を滑らせて、上顎をちろりと舐める。そーちゃんの熱い舌が構ってというように控えめに絡み付いてくるから、勿論ちゃんと可愛がってやる。勿論、そーちゃんの好きな舌の裏っ側も舐めるのを忘れずに。 「……ん、ふ」 小さな吐息が漏れるけど、それすらも逃したくなくてさらに深く口づけた。 一度そーちゃんに「キスのとき、たまに眉間に皺寄ってるよね。い……嫌、かな?」って言われたことがある。キスするときに目を瞑るんだよって教えたのあんたなのに、それを破ったのかよ!と驚いたのと嫌だったらするわけねーじゃん! と憤りを感じたのと同時に、やっぱり皺寄ってたかという気持ちになったのをよく覚えている。 俺はそーちゃんとキスするのが好きだ。薄い唇が開く瞬間も、そこから見えてくる白い歯も赤い舌も、全部にどきどきする。あと、たくさんキスをしていくとそーちゃんが小さく声を上げるのが好きだ。あ、とかう、とか言葉にもなれなかった言葉たちが漏れていくのが最高にえろくて、可愛くて、心臓がきゅーっ! てなっていくのだ。 だけど、それと同時にそんな言葉が出ちゃうほど俺とそーちゃんの間に隙間があるのも許せなくて。 キスしたい。ぴたりとくっつきたい。声が聞きたい。聞いたらくっつけない。そういった葛藤をたまに一人遊びみたいにしてるときがあって、その時に眉間に皺が寄ってしまう。 「ごめ、久しぶり、だから、がっついちった」 キスに集中し過ぎて手は脇腹を触るだけのおざなり状態。失敗したかな、と思ったけれどそんな考えは一瞬だけで終わる。 そーちゃんはふうふうと肩で息をしていて、ぽーっと目を潤ませて完全に無防備になっていた。手は俺のバスローブを握ってて、唇は激しいキスで艶やか。少し捲れたシャツから見える腹筋が最高にえろくて、服を着ているのにも関わらず、この男は俺を惑わせてくる。 「ん、だいじょうぶ。……たまきくん、じょうず」 そんな顔で良い子良い子って頭を撫でてくる。ああもうこの人は! まだキスしかしてないのにもう下半身がいたくなってきた。 服を全部剥ぎ取って触らないところがないくらい触り尽くしたいけど、それは今日のそーちゃんの気分じゃないから我慢だ。 「触らせて」 見えないけど、それでも触れる興奮がある。先ほどおざなりだった横腹をまさぐってた手はどんどん上にいって、チェックシャツに包まれて色も分からない乳首に到達する。感触だけでそこをくにくにと刺激していると、どんどんとつんと上を向いているような気がした。 「……っ、たまきくん」 「なぁに?」 「で、電気消そ?」 今、俺たちは部屋の電気を煌々とつけながらこの行為に耽っている。いつもならそーちゃんが最初に電気を小さくして薄暗いところでやんだけど、今日は少しいつもと違う。 「でもさ、そーちゃん服着てるし今俺後ろにいるから別に良くない? なにも見えないじゃん。俺は明るくても良いし」 「そ、いう……問題じゃあ、ぁう」 カリカリ、と乳首を引っ掻けば反論と一緒に甘い言葉が漏れた。それに気分が高揚してもう片方の手もシャツのなかに潜り込ませて、もう片方をいじる。 きゅうってつねったり、ぐにぐに潰したり。舐めて噛むことができないのは残念だけど、その分後ろからになるけどそーちゃんの横顔が凝視できるのは良いな。声がなくても、どこが良いのか表情で一目瞭然だ。 「そういう問題。たまにはこういうのも良いじゃん」 「ん、で、も……はずかし……」 本当に生娘みたいな台詞をこの男は……。そして言葉だけじゃなくて顔も生娘みたいにするものだから騙されてしまいそうになる。騙されるな、俺。相手はえーと、百戦錬磨のつわもの、なのだ。 しかし、この話が続くと絶対に消してと言ってきかなくなるから、無理矢理にでも話をぶったぎらなければならない。せっかく顔がはっきり見れるのに消されてたまるか。 「そーちゃん、そろそろ座ってないでベッドに上がらない?」 「あ、ぅ……うん」 「どうぞー」 今は座ってるそーちゃんの後ろから俺が抱き締めてる状態だったから、そろそろ真正面から抱き締めたい。 四つん這いでそろそろと上がってくるそーちゃんのベルトを抜き取って、ズボンにも手をかける。 「た、たまきくん!?」 「ねー、外雨降ってるくね?」 制止させられそうになって違う話をふる。そーちゃんは律儀だからその質問に対して耳を澄ませてホテルの外の様子を伺おうと真剣だ。その間に俺はズボンを抜き取っておく。 「本当だ。雨降ってる……ぁ、ちょ、やっぱり恥ずかしい、ひゃっ!」 下着もずり下げると、ぷるん、と下着に収まってたそーちゃんのが出てきた。かたくなってて、そんなに興奮してくれてると思うと嬉しい。そーちゃんが感じてくれてるのを見るのがとても嬉しいしホッとする。ああ、俺だけが良いんじゃなくて二人で良くなってんだなって。 「そーちゃんって、本当にどこもかしこも色素薄いよな」 「〜〜で、電気! 消す!」 もうここまで来てしまえばこちらのものだ。ベッドヘッドのライトまでいこうとするのを阻止するように、ピンク色したちんこを軽くしごく。 「もうだめですー。今日はこのまま、な?」 「ああぅ、……ゃ、だぁ」 「やだ、じゃねーの」 「う、あ…ぁ、ふ」 枕元に用意してた袋のローションをとってたちあがってるそれと後ろに塗り付ける。後ろにまず慣らすようにして。それからマッサージするみたいに入り口を柔らかくしていってゆっくりとそーちゃんの中に指が入っていく。 「そーちゃんの中、あっつい」 「んんん……っ」 恥ずかしさがまだあるのか、シャツの裾を必死に掴んで隠そうとしてる。それだけの余裕があるのがなんか悔しくて、指を少し早めに動かして二本目も入れる。 久しぶりだからやっぱり後ろは柔らかくなくて、傷付けないように慎重に。 「痛くない? へーき?」 「平気、だけど恥ずかしくて、ばくはつする」 「はは、そーちゃん爆発しちゃうの?」 右手はシャツの裾、左手は真っ赤な顔を隠してこくこくと頷いた。 ローションを全部後ろに使ってゆっくりと三本目。そろそろ良いところを探そうかと意図的に指を馴染ませていく。本当は最初から良いところを触ってあげたいけど、慣れてないときに体が大きく動いたら切れちゃうかもだしな。解れてからじゃないと怖くてできない。 「ぅー……たまき、くん。見られてるの、やだ、でんき、消し……あ、あ!」 「聞こえなぁい」 「そこ、そこだめ……ッぃ、ぁあ!」 「気持ちいい? 良かった、良いところ忘れてなくて」 「う、ぅ〜〜〜、ぁあ、は、あ!」 内壁を擦るとそーちゃんの体がびくびくと震える。くん、と腰が上がって、快感を逃そうとするみたい。それでも俺は同じところを攻め立てる。気持ち良いのが我慢ならないらしく、顔や下を隠そうとしていた手はいつの間にか性器を触っていて、こしこしと必死に擦ってる。 「こら、勝手に出そうとしないで」 「だって……なんで、はぁ、今日、触ってくれないの、」 「触るよ。もうちょっとしてから」 もう一本入れようかと思ったけど、そーちゃんがやだやだとぐずりそうな気配を察知したのでにゅるりと指を抜く。淡白そうな彼は、意外とスイッチが入ると快感に従順だ。分かってっけど、ちゃんと男だなって思ったりするくらい。ちゅ、と額にキスを落としながらローションと一緒に置いてあったゴムを着けようとする。顎を持たれて口にキスをされて、ちょっと手元が見えないけど、見えなくてもちゃんとつけれるくらいにはたくさんゴムつけたかんな。 「ん、ん」 「いれていー?」 「は、ぁ……うん」 電気が灯る中で、俺のがそーちゃんに入っていくのをみていると酷く興奮した。なんていうか、思った以上に生々しくて、赤くなってる縁から飲み込んでいるって表現するのが正しいくらいずぶずぶと俺のがそーちゃんの中に入ってく。 「きつ……」 「はぁ、はぁ、はぁ…ん、んぅ」 「は、もうちょい、いれさして」 「も、いい、お腹いっぱい」 「まだ半分も入ってねぇから」 うそぉと半泣きで言ってくるそーちゃんは悪いけど無視して、もっと奥に奥に進む。痛いとかじゃなさそうだし。ちんこの先っぽがめちゃくちゃ熱くてやばい。奥にいくに連れて包まれてる感じが強まって、暴発しそう。 「ぁ、は、ぁ……ぁ」 「だい、じょーぶ?」 「ん、待って……このまま、待って、ね?」 「いーよ、ちょっとだけね」 そーちゃんがこのままをご所望だからとりあえず動きを止める。でも中がうねって長くはこの状態無理なんですけど、むしろもうやばいんですけど。 ちらりと様子を伺うとふうふうと息を整えてて、そろそろ大丈夫なんじゃね? ってことでそっと腰を動かしてみた。 「ん、動く……?」 「うん。もういーよな?」 ぱちん、と目があった。切羽詰まってる顔をみられたと思うとすごく恥ずかしくなったけど、そーちゃんの方は動揺してキョロキョロと左右を見てから顔を両手で隠し、最後にようやくこくん、と頷いてくれた。 手と腰に力を入れてゆっくりと動き始める。 ローションの力を借りてぬるぬると動き、馴染んできたと思ったら良いところを探すのだ。ただ、両手で顔を隠して口も塞いでしまってるから楽しくない。これはいけない、やだ、許せない。顔と口に当てている両手をがっちり掴んでこれで顔も見れるし声も聞ける状態になった。 「や、なに? たまきくん、手離し……!」 「手がどうした、の?」 「ひ、っ、ん、ぁっ」 手は恋人繋ぎでシーツに沈め、じっとそーちゃんの顔を見た。そういえばこんな明るいなかでするのなんて初めてだから、感じてるそーちゃんの顔を全部みれるなんてとても貴重だ。 離してと言いながら手をほどいてくるけど、絶対に離してやらない。離してと言われる度によりきつく握りしめる。 「かわい……そ、ちゃん…すげー、えっちなかお」 「ば、かぁ…っあ、や、ぁ、ん、んん〜!」 「もっと深くすっから」 ぐりぐり、と奥の壁を抉るように動いてやったら、すっごい甘い声であああ、と声を漏らした。 なんて、なんてなんて、なんて声! こんな声聞いたことがないかもしれない、というくらい甘くてやらしくて、腰にくる。顔も無防備でその全てを俺に晒してくる。はふはふ、と必死に息をして、胸を上下させて、ぱちぱちと瞬きをするとつつ、と涙が耳に零れていく。全てが作り物のように美しくて、作り物じゃないから愛おしい。 「たまき、くん。はぁ、ああ、ぅ、いきたい、あつい」 「ん、いこーね。後ろで」 「ちが、前、まえさわって、ん、ぁ」 「後ろでいったあと触ってあげる」 本当は俺も最初に射精させてあげるつもりだったし、楽にしてあげる予定だったんだけど、なんせ俺がもたない。そーちゃんの体から出るのは嫌だし、かといっていかせてしまえば中が凄いことになって俺が耐えられなくなるのは目に見えている。悪いけど、そーちゃんに我慢してもらう。 「や、あ、動いちゃだめ……!」 「ごめん、そろそろ、な?」 「あ、ぁあ! そこ、だめ、だめ、ぁ、ひっ!」 なんもしてないのにそーちゃんの顔だけ見てて暴発、なんて恥ずかしいことになる前に動いてしまおう。手が汗で滑って繋ぎにくい。それでも離してと言っていたそーちゃんの手は自然に俺の手を握ってくれている。 「か、わい……っ」 「あ、たぁき、くん、ちょっとだけ、手離し……!すこ、しっ、少し、だけぇ」 「なんで、握ってくれてたじゃん」 「は、はぁ、はぁ……シャツ、脱ぐ」 「脱ぐの?」 「ん……」 その言葉にラストスパートをかけようとしていた俺も流石に止まって、一生懸命に力の入らない手でボタンを外すそーちゃんを手伝った。 「脱いでくれるの嬉しいけどなんで今? 」 「ん……」 「はずいって言ってたじゃん」 「恥ずかしい、けど、」 「けど? 言わなきゃこのままだかんね」 誤魔化そうとしてる、と思ってそーちゃんのたってるそれの根本をぐりぐりと押してやる。ぴゅっと精液が少し出たけど、完全に出しきれないのは辛いはずだ。 「ぁあ、いじわる、しないで……!」 「なんで脱いでくれる気になったの?」 「ひん、くるし、ぃ! 言うから、言う!」 中々口を割ってくれないから、根本をぎゅっと手で持って竿をしごく。くん、と背を反らして助けを求めるように手が宙をかくけど、許してやらない。 そーちゃんがなにを感じて、なにを思って、なにをどうしたいか。俺は逐一それを知りたがっている。こうやって言わせるのはだめかなって思うけど、この方法を身を持って教えたのはそーちゃんだからたぶん悪いことじゃない。 「うん、教えて。なんでこんなに乳首可愛いことになってるの、見せてくれる気になったの?」 わざと煽るようなことを言うと、そーちゃんはもう赤くならないだろうという限界まで顔を赤くして俺の肩を足でげしっと一発蹴ってきた。地味にいてぇ。 「す…………れる」 「うん?」 「動くと、擦れる、の、です」 「擦れる。…………ちくびが?」 「そ、そう……」 「……、…………」 もう、痛い。 ちんこもう痛すぎてやばい。あとなんか本当にこの人魔性っつーか、なんつーか、なに恥じらってんのとか、そんなこと言う? とか、憎まれ口を叩いて誤魔化したいのに可愛いが溢れてそんな言葉すら出てこない。 環くん? なんて顔色を伺ってくるのも可愛いし、変なこと言ってごめんねって慌てて謝ってくるのも可愛いし、やっぱり着たままの方が良いかな? なんて斜めなこと言ってくるのも可愛い。この人に可愛くないところなんてあんの? 今見せて欲しい。じゃないと俺の俺がやばい。 「たまきくん、たま、あ!?」 「俺の、こんなにした責任とってもらうかんな」 「や、ん、痛、あ……っ」 つんと尖ったそこを指で摘まんで転がして。そのまま腰をガツガツ動かした。本当は噛みついてやりたいけど、体位的にちょっと難しいから手で触るので我慢してやる。 こんなえろい顔して、えろい声して、もう顔を隠すでも声を抑えるでもなく、俺にしがみついてくるこの男を心底愛しいと思う。 ローションがじゅぶじゅぶとやらしい音を立てて、もう俺も限界に近かった。ぷるぷると動く度に揺れるそーちゃんのも触ってやりたかったけど、もう触る余裕すら俺にはない。 「ごめ……い、きそ………いく……ッ!」 「たまきく、好き、あ、ああ、だいすき、たまき、く、や、ああっ!」 ぎゅうううって締め付けられて、もう我慢できなくてゴムの中に思い切り吐きだした。搾り取るようにして中が動いて、そーちゃんもぴくんぴくんって痙攣したみたいに震えてる。ぎゅって強く俺にしがみついてた手もくたりとシーツに落ちて、もう一滴も力が残ってないことを知らせた。 お互いの荒い息遣いと、ホテルの外の雨音と。 世界の音がそれっぽっちになったところで、ゆっくりとそーちゃんの上から退く。 「後ろでいけたな」 「……っ、……ん、」 「今度前でいこーね」 「え、ちょ……待ってっ」 たぶん、まだ後ろの気持ちいいのが残ってるんだろうなぁって実は分かってる。後ろでいくとなかなか気持ちいいのから降りてこられないっていうか、気持ちいいのがずっときてる感じがするって前に言ってたから。そういうときに触るのはしんどいかなって思うけど、そーちゃんが乱れに乱れるのは一度イった後から。俺はそういうそーちゃんを余すところなく見てみたい。 「そーちゃん」 「なに、触らないで、まだ、…まだ、だめ」 「頑張ってね」 「やら、だめって言っただろ……ひっあ、あああ……!!」 後ろでいったときに少しだけ出した精液がお腹に零れた程度しか出してないそこは、まだびんびんで。 明るいから分かる、その色素の薄さ。俺のがおかしいのか? いや、たぶんそーちゃんがおかしい。大きさとかは普通なんだけど、なんかピンクで可愛いんだよなー、ここ。いじめたくなるというか、可愛がりたくなるというか。 「気持ちいい?」 「ぁ、あ! 先、先っぽだめ……ぅ、うぁ」 「先だめなの? すっげーぐじゅぐじゅだよ?」 「やあぁぁぁっ、たぁき、くん、や、も、おねが 、ひん! いく、いく……ッ」 俺の手を離そうと上に置かれるけど、引き離すだけの力はないから本当にただ置いてるだけだ。 「はずいからって着てた服、全部脱いじゃったな。乳首も、ここも全部丸見え。俺のくわえてたとこがひくひくしてるのもよくわかるよ。そーちゃん、かーわい」 「! …………ん、うああっ!」 俺の言葉と手から与えられる快感に我慢できなくなったんだろう。 びゅっ、と勢いよく白い液体が出てきて、そーちゃんの胸を汚した。それからもぴゅ、ぴゅ、って何度かに分けて出てきてようやく止まったところで俺も手を離した。 初めてちゃんと見る、そーちゃんのイキ顔ってやつ。さっきはしがみつかれてて見れなかったから、今初めて見れた。閉めることもできない口、飲み込むこともできない唾液、どこを見れば分からない蕩けた目、全ての感覚が恍惚と気持ち良さにだけ服従してる。見てはいけないものだと判断するくらい、えろくて、刺激が強い一瞬だった。 「た、たまきくん……」 「もっかいする?」 「し、しない……、も、しないよ、ばか!」 「なんで? ちょー可愛かったじゃん」 「服着てやるって、言ってた、のに」 ぜーぜー言いながらも精液をバスタオルで拭いて体を隠しているそーちゃんはキッと俺を睨んでいる。 「だからやってたじゃん。でも突っ込むときは脱がせないと出来ないし、上はそーちゃんが脱ぐって脱いだからノーカンっしょ」 「そ、それは……っ」 もう一反論くるかなって思ったけど、もう言葉が思い付かないのか唸り声が聞こえたからそのままキスして誤魔化そう。 「ちくび、痛くなっちゃった? 舐めたげようか?」 「〜〜いい! 要らないよ!」 「そーぉ? 遠慮すんなよ」 「して、ない!」 顔をそらしたそーちゃんが怒ったかもと若干慌てたけど、その耳と顔は真っ赤だったからただの照れ隠しだ。 「そーちゃん、お風呂いこ。汗かいたっしょ?」 「……」 「今度はゆっくり湯船浸かろ。二人で」 「……」 「俺、そーちゃんと入りたい気分。だめ?」 「……、僕もその気分」 「へへ、準備してくる」 ちゅう、とまだ顔を向けてくれない恋人の耳の後ろにキスしてから風呂を沸かしに行く。 風呂の中でゆっくりしてたらきっと二回目が始まるのだろう。今度は後ろからさせて貰おうかな。また恥ずかしいとか言ってきたらどうしよう。隠せるようにバスタオル一応置いておこうか。 恥ずかしくて隠したいなんて、本当にそーちゃん馬鹿だよな。隠されたら余計に暴きたくなる男の気持ち、分かってるだろうに。 ちらりとそーちゃんを見ると、まだふわふわとしているのか、顔がえろい。あとたぶん全然足りてない顔してる。 まだ夜も更けたばかりだし、時間はたっぷりとある。俺は舐めずりしながら、バスルームへと入っていった。 <了> |