「…意味わかんない」

妬きもち妬くのってみっともないことだと思う。

「だから、違うって言ってるだろ! ただ普通に次の試合の事話してただけだ!」

「じゃあなんでそんなにでれでれしてたの!?」

「そんな風にはしてないって!」


男の嫉妬は醜い、なんて言うけど女も同じだと思う。だって私、ただの嫉妬でこんなに当たって、全然可愛くなんかないんだもん。これじゃあ、嫌われても可笑しくないなあ。

「…もういい、私先に帰る」

「え、おい、なまえ!!」

馬鹿だな私、春奈ちゃんに妬くなんて。でもそう思っててももう止められなくて、こんな今にも泣きそうなひどい顔を見られたくはなくて、嫌われたくなくて。だから走って一郎太が追ってきてないのを確認して、河川敷の芝生の上にゆっくりと腰を下ろした。

「馬鹿みたいだ、私」


絶対、あんなこと言って嫌われた。こんな感情なんか知らないふりして、黙ってれば良かった。頬を滑り落ちてきた涙をカーディガンの袖でゴシゴシと拭いて、ため息をついた。

ほんとに嫌われてたら、どうしよう。
なにやってんのかな私、ちょっと我慢すればよかった話なのに。


その時、ふと後ろから感じた温もり。
腰に腕が回されて、ギュ、と力を入れられた。

「…何泣いてるんだよ」


誰だかなんて見なくてもわかる。これは、

「一郎太…?」
「ああ。 …ごめんな、泣かせたりして。だけど本当に違うんだ。音無とは、ただ試合の事聞いてただけだから」



なんで私があんなに酷い態度とったのに、一郎太が謝るんだろう。
なんでこんなに優しくしてくれるの?

「…ごめん私、勝手に決めつけて迷惑かけて」


「いや、…お前が言った、でれでれしてたってのきっと本当だ」

「…、」

「音無とお前の事話してたから」
「へ、」

自分でも顔が真っ赤になっていくのがすぐにわかって、顔を伏せたけど一郎太に「耳、赤すぎ」って笑われた。







伝わる温もり



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