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約束の指輪だとか、夫婦になったら結婚指輪をしなくちゃいけないだとか女の人みたいに夢を見てる訳ではいのだけれど。
ペア=同じもの
流君とお揃い!という安易な考えをしていいのだとたら、
ちょっと、ほしい……。
と思う。
「……欲しいのか」
「えっ…ぁ、」
如何にもどうでも良いという風に流君がそう聞いて来て、今更ながら自分が声に出していた事に気づいき口を覆った。
「…………」
じっと見て来る流君に、根負けするようにぼそりという。
「…欲しい、かも」
「ククッ…ほら見ろ。式は挙げれねぇんだからそれくらいしてやれ」
え?式?
「伊呂波ちゃん?飛びっきり高ぇの強請ってやんな。オーダーでもいいぞ」
そう言って低く笑う日向さんは、後から颯爽と来た雑賀さんに「仕事して下さいよアンタは…」と呼ばれて連れて行かれてしまった。
な、なんだったんだ一体…。
何だが分からない内に
頷いていたけど、どういう事だったの。
◇◇◇
「どうぞ、お手にとってお選び下さいませ」
あの後、「適当に宝石店」と黒塗りの車に乗り込み運転手さんにそう言いつけて連れて来られたのは"五代目御用達"らしいお店。裏口から通されて広い部屋に案内された。
アンティークな小物なんかが壁を沢山飾っていておしゃれな部屋だ。
そこの机の上には、指輪やアクセサリー類がずらっと並べられて目移りする…VIPな気分。
流されるがままにソファに座っていたら、指輪の説明の為に控えてる人を流君が手で下がらせた。
宝石の説明されても良く分からないけど、
それよりも
どれにも値札がない。
値段聞きたかった…けど怖いので止めときたい。
「…流君はどれがいい?」
クラシックの音楽が掛かった部屋で少し気まずい。
「…………」
興味なさそうだな流君…。
でも折角の同じ指輪だし一緒に選びたかったり。
もう一度机に目を落とす。
「…えっと、これとか」
ちょっと冗談で、宝石5つがくっ付いた花の可愛らしい指輪を見せてみた。如何にも女の人が好みそうなピンクのリング。対になってる指輪も、色がピンクで無いだけで花形の可愛い指輪には変わりない。
ちらりと流君を覗き込むと
「それで」
即答。
「や、やっぱ違うのにするっ」
流石に頷かないだろうと思ったのにあっさり承諾されて焦った。
流君これペアなのわかってるのかなっ?
…ん?
…という事はだ。
流君に似合うものを選ぶ重要な役割になる。
ちょっと変な使命感に燃えてきた。
「……えっと。流君、手貸して」
取りあえず色々付けてみる事にして、流君の指に触れる。
元の形はきっといいのに拳の骨が磨り減った凹凸のない手。
…やっぱり流君は
かっこいいのが似合うよね。
まず、この青い石の。
次に、珍しそうな紫色の宝石が嵌め込まれたもの。
じっと見て、こてんと首を傾げる。
んー…なんか違う…
むむむ。
これは結構苦難しそうだ。
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