2
と、そんな事を思ったその時だ。
バタンッ
と、玄関の方から扉の閉まる音がした。急に響いたその音でビクリと肩が跳ねる。帰ってくるのは、勿論流君しかいない。
慌てて、作ったチョコを冷蔵庫の奥へ入れてリビングへのドアを開けにパタパタとスリッパを鳴らした。
「お、お帰りなさい!」
今日は
9時頃じゃなかったっけっ?
まだご飯の支度してないっ
「今日は早いんだねっ」
内心焦り気味にそう言いながら、ドアを先に引いて流君の顔を見ずに、持っていた銀の書類ケースを持とうと手を差し伸べた。
「あの、先にお風呂─んぅッ」
焦ってお風呂に促そうとしたら顎を掴まれて、口を塞がれた。軽く上唇を噛んで、さっと何事も無かったかのように流君の顔が離れていく。
「…喚くな。うるせぇ」
「ご、ごめんっ」
チラリと目が合って気まずさに反らした。
ち、ちょっとテンパり過ぎた…反省。
少し俯いて自分のエプロンをぎゅっと掴んだ。その間に流君が横をすり抜けていく。
振り返ると、コートを脱ぎ捨て硝子テーブルの上にケースを無造作に置いて、ソファに深く沈んだ流君がいた。
それをドアの前でぼーっと眺めていたら不意に流君の目線が此方に向いた。
「…何やってんだ」
「えっ!?…あ、ううん」
急に話し掛けて来たから肩がビクッと震えた。慌てて返事をして、脱ぎ捨てられたコートを拾い両手で抱えておずおずと流君の隣に座った。
今日は、失敗してばっかだ…
「あのね今日晩ご飯作るの遅れててさ。まだなんだけど…流君ご飯食べてきた?」
こてんと首を傾げて聞くと、流君は何も言わずに内ポケットから煙草を取り出し火をつけていた。
…多分、食べてないかな
「じゃあ今から作るね」
そう言ってオレはキッチンへ行くべく立ち上がった。
と、その前にコートを掛けないと皺になっちゃう。
今日は何がいいかなぁ。
キッチンで何を作る考えて、腕を組んだ。
えっと…確か、冷蔵庫に牛肉が残ってたような…。
と、思って振り返ると
先程までソファで寛いでいた流君が、煙草を銜えながら冷蔵庫に手をかける所が目に入って、どくりと心臓がなる。
ちょ、
「ちょっと待って!!」
prev next