対等な関係
イギリス郊外
戦後を思わせる荒れ果てた廃墟が幾重にも建ち並んだ隠された一角。
名も無い無法地帯。
そこには、活気溢れた賑やかな街とは正反対な─物、人間、人の裏にある全てがあった
─ルールが無いのがルール
それは暗黙の了解だ。
例えば、金・食糧・銃・人々売買・盗品・麻薬…―世間でも広まれない、憚られる、非合法そんな狂喜と狂気が渦巻いている。
人殺しは日常で、殺人鬼、強盗、ごろつき。はたまた監獄に収まりきらない囚人の捨て場にも成っている始末。
そんな底辺を這うような奴らがここには居る。
ましてや、殺しても殺されても咎は無い。
そんな場所なら違う場所で暮らせ。そう問うたとすると百発百中、こんな場所しか生きれない奴がここに行き着くんだと答えるだろう。
――そんなありふれた底辺な場所に、年端も行かない少年が居た。
髪は赤黒い液で固まって、艶一つない。瞳は、一見映すのを忘れたように何処までも平面な黒。だが一度捕らえられてしまえば、ねっとりと絡み付く漆黒。
瞳だけがこの場所に不釣り合いで、幼くともわかる整った顔立ちをより一層作り物じみて見せていた。
子供がこの場所に存在する事は、特に珍しい事でもなく、戦争孤児か取引材料か…それ以外だったとしても禄な事じゃないだろう。
かく言う少年も身を任せての偶然で、多くの中の一人に過ぎない。
少年は、この場所にいい感情も負の感情も何も湧いてはいなかった。
ただそこに居た。
生きたいのか死にたいのかも知れない少年は、今日もゴミ溜めの中にいる。
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