短編集 | ナノ
俺の日常…か?


あの夜の出来事は一生忘れない。きっと墓の中に入っても忘れないと思う。あ、俺って重いかな?うわ…泣く。
でも、それくらいに感動した。憧れの人が直ぐそこに居たんだ。ていうか最早本当に人間だったんだなとか。

心臓の音が他のすべての音を掻き消して、感動に指先まで震えてた。


だからこそ。


ドッカー様の為にも、あの場所はお譲りすべき。何やらドッカー様は、引っ越しして来たばかりだという。俺の愛が引きつけたに違いない。うんうん。まぁそれは神様にお祈りしといて置いとくとしてだ。
幸い俺にはまだ踊る場所がある。明日からはそっちに踊りに行こうと思う。


「いっちー、機嫌いいね。何かいい事でもあった?」


明日の計画を練りつつドッカー様との夢のひと時を思い出していたら、横から聞き慣れた声。
うぬ。邪魔をするでないよ。
あードッカー様ー

「むふッ」

「うわ…」

「むふふふふ」

「…きめぇよいっちー」

やべ、にやける。

「………いっちー普段の二割増に可笑しいしきもい」

「何とでも言いうがよいよ!ふはははは」

「いっちーが拗ねないなんて珍しい」

驚きに目をぱちくりするコウ。俺がバイトしている居酒屋兼軽食屋の同僚である。結構仲が良い。確か俺より一つ下だったと思う。
俺とコウはここが長いのでホールもキッチンも一通り出来る。
そして今日はキッチンへと回された。偶に店の書類整理とかもやらされる辺り、多分社員に引き込まれる可能性がありうる。まぁ、そっちの方が都合がいいけど。バイト就職素敵!



今日のバイトが終わって、家に帰った。
そして、PCを起動。
この高揚をどうしたらいいんだー。とニヨニヨ生放送を立ち上げた。
と、同時にコメントが右から左へと流れ出す。この一つ一つが俺の唯一誇れるもの。


「今日、俺の人生の運を使い果たした。もう俺はどうしたらいいんだーー!ヒャッホーイ!」


開口一番意味不明発言。それに付き合ってくれるリスナーに感謝。

──なに?

──馬鹿っぽ

──はよおどろ


「皆様、皆様。理由は伏せますが俺は昨日、一生の運を使ってしまいました。この高揚を高ぶりを興奮をどうしたらいいと思いますか……」


──踊ってくれば?

──むしろここで踊ってくれ!


「ここアパートだから!無理よ!お隣さん怖い!」


──壁ドン不可避ww
──前科あり


あの光景が目に焼き付いて離れない。


あぁ。


そして、なによりも、なによりも…なんだ?


「踊ってきます」





30分後、久し振りに投稿用の動画を撮ろうとルンルンで前使っていた場所を訪れた、

のだが……

「あちゃー…。ここも、もう駄目かー」


偶に使っていた工事途中で放置された空き地は、先日工事が再開したらしい。まさかとは思ったがあの噂は本当だったとは。完全に封鎖されていて、抜け道もない。

あの公園はもう使えないし、また新しい場所見つけないといけない。素晴らしく落胆する。


うーむ。






「「どうしよう」どうすっかなぁ」」



ナイスはもり!



「え」
「うぉ」


声がハモった。
右を向けば
昨日見たはずの愛しの、


「ドッカー様……?」

え?このイケメンからドッカー様の声がする。なにこれおかしい。





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