『私が好きなあなたのままでいてね』

 
 
 
 
 
旅をしているからか季節を気にしていなかった私は今が冬だという事に最近気がついた。寧ろこの時期ってクリスマスじゃない?トリグラフでサンタとかトナカイの衣装を着てる人がいるし。そっか…そういう時期か。


「名無し」


今日も分史世界を壊してきた私達は一日トリグラフで各自様々な休み方で休む事になった。私はとある人を捜して歩いていたのだが、不意に名前を呼ばれて振り向く。そこにいたのは今回の旅の中心的存在の男性と小さな女の子。ルドガー、そしてエル。見た感じ買い物をしていたみたいだけど。
左右のツインテールを揺らしながらこちらに近づき手をのばすエル。まるで何か頂戴なんてねだってる様に見える。…いや、実際そうなのかも?


「クリスマスプレゼント。無いの?」

「やっぱり?ごめん、用意してなかった。それにいい子にしていればクリスマスプレゼントはサンタさんがくれるから、ね?」


チラリとルドガーに目を移せば困惑していた。多分ルドガーが夜中にこっそりプレゼント置いてるだろうし。とぼんやり考えていたのだがエルはあまり納得がいかない様子。頬を膨らませて私に聞いたのが馬鹿だったなんて発言する。う、ううん…そこまで言われると流石にムッとするのだけど。何かあったかなぁ。
あの人を捜してるのに…そう考えながらも鞄の中にお菓子でもいいから無いか漁ってみる。すると唯一中にあったのは。


「…はいエル。クリスマスプレゼントだよ」

「ありがと…って、飴!?」

「名無し…」

「ルドガー、あなたオバちゃんとか思ってるでしょ。その目は絶対そうでしょ」


言っておくけどいつも持っている訳じゃないからね。偶然鞄の中に入ってただけだし。そんな想いを込めてルドガーに言えばブンブン首を横に振る彼。否定するのに必死すぎる。絶対思ってたな。
飴でも納得がいかないエルはまだ何か言ってるがいつまでもここに留まる訳にはいかない。


「ガイアス見なかった?」

「ガイアス?ああ、向こうで会ったよ。まだいると思う」

「ありがとう。それじゃあ二人共、メリークリスマス」


二人に笑顔で言えば返してくれる。その声を聞きながら私は背中を向けてルドガーが教えてくれた方向へと歩き始めた。私が捜している人はリーゼ・マクシアの王様。前の旅で最後に戦った人でもある。でも今はとても頼もしい私達の仲間…。
寒い中着ている服のポケットに手を入れて歩いていると明らかに目立つ人の集まり。その中心にいるのが正に捜していた人物、ガイアス。どうやらトリグラフの人達と何か話しているみたいだ。


「あはは、楽しそう」


以前は敵対していた為ああいう一面を見るなんてもってのほかだった。だからなのかな。街の人々と話しているガイアスを見ると嬉しくなる。
緩む顔を何とかしながらガイアスとの距離を縮めていけば向こうが私に気づいたみたいで名前を呼んできた。手を横に振り隣に立つがガイアスはトリグラフの人が持つサンタの衣装を見て何やら真剣に悩んでいる。


「まさかローエンに着させたいとか?面白そうだけどやめてね、ガいふぁふ!?」


ローエンのサンタ衣装とか想像すると面白い。だからほんの少し笑いながら言っていれば口を手でふさがれた。勿論ガイアスに。突然過ぎて驚く私だったけどずっと口を大きい手で塞がれるのは恥ずかしい。相手がガイアスだから、余計に。


「アーストだ」


何とか離してくれないかと目で訴えていればガイアスが言う。ああ、つまり私がガイアスの事をアーストと言わなかったからか。ついガイアスって呼んだのが駄目だったんだね。
わかったの意味を込めて手で小さく丸を作る。それを確認するとガイアスは手を離してくれた。い、色々な意味で危なかった。


「で、着るのかい?」

「...え?ガ...アーストが着るの!?嘘でしょ!?」

「悩んでいる所だ」


冗談ではなく本気でガイアスが着るかどうか迷っているらしい。いやあの、王様がサンタの衣装するの...?というか王様がコスプレとかしていいの!?ガイアスなら似合いそうだけども!そっとプレゼント置いてそうだし!
心の中で動揺のあまり自分自身わからない事ばかり思っているとガイアスが決めたのかサンタの衣装に触れて一言。着る、そう告げた。


「ローエンがいたら間違いなく写真撮ってるなこれ...」


それから暫くして私は道具屋で必要なアイテムを購入していた。後ろには人々の楽しそうな声。主に子供の声かな。原因は...と体をそちらに向ければ赤いサンタの衣装を着ているガイアスが映る。そう、彼だ。現時点でこうしてトリグラフでサンタの衣装を着て歩いているのはガイアスしかいなく、子供達はガイアスが本物のサンタだと思ってしまったらしい。おかげでガイアスは子供達に囲まれている。しかし本人も悪い気はしないのかヒゲも付けてきちんと対応していた。まあ子供好きだもんね。


「名無し。何を笑っている」

「別にー?何でもないよ。それよりもういいの?」

「ああ。今から返しに行く」

「じゃあ私も行く。楽しかった?」


ニヤニヤしながら問えばどう見ても満足げに肯定するガイアス。本人が楽しかったのなら良かったか。私も貴重な所を見れた気がするし。
ようやく二人で話す事が出来る。こうして歩いているだけでも嬉しいけど、やっぱり話したい。


「ガイアスのサンタ姿を見れて良かったよ。似合ってたし」

「...俺らしくないと思っていなかったのか?」

「え?全然思わなかったよ?」


寧ろ何故そんな問いかけをされたのかわからない。どんな姿でもガイアスなのは変わりないんだから。それに...私はガイアスの事を知りたいから。もっともっと色々なガイアスを見ていたい。ガイアスの傍で。だからーーー。
そう言葉に紡ぐ度に顔が熱くなっていく。まるで告白みたいだ。ガイアスは分かっていないだろうけど。...でも、最後にこれだけでも伝えたい。


「私が好きなあなたのままでいてね」


言った後に後悔した。いくら何でも"好き"は駄目だろう。どう思っているのかな...とガイアスを見る。何故か驚いた表情で私を見ていた。え、何...?


「名無しはこの姿が好きという事か?」

「違うんだけど...まあいいや」


やはり伝わっていなかったらしい。恋愛ごとには疎いから仕方が無いんだけどさ...ちょっと残念。
時刻はもう夜。トリグラフが綺麗なイルミネーションに包まれる。


「メリークリスマス、ガイアス」

「ああ。メリークリスマス、名無し」


焦る事は無い。まだまだ彼といられる時間はあるのだから。それが隣にいるサンタさんからのクリスマスプレゼントかな。


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雪華ゆり様リクエスト、言ってほしい言葉は夢主の『私が好きなあなたのままでいてね』でガイアス夢でした。
内容は...人々に触れ合う、または眺めるガイアスを見つける夢主の日常の話...でした!
夢主の設定はX時でガイアスとは敵同士、つまり主人公達側の方との事でしたが...あまり詳しく執筆出来ていなくて申し訳ございません。
これはガイアス...?と疑問に思いながらも(!?)執筆してみましたが...お気に召していただけたのなら嬉しく存じます。
ガイアスのサンタ姿(所謂コスプレ)似合うと思います。そして小説の中でも書きましたが子供に囲まれたらノリノリそうです←
個人的ですがガイアスがアーストだと言う所が好きです(まさかのそこ)
ですので夢主がガイアスと呼び「アーストだ」と言い直すガイアスを入れてみました...満足です←
それでは雪華ゆり様、三周年企画に参加していただきありがとうございました!これからも管理人共々、『黒猫の鈴』を宜しくお願いします!

※お持ち帰りは雪華ゆり様のみです。




 

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