頭を撫でる
「信じられない。心配するだけ損だった」
「そう怒んなよ名無し」
誰のせいだと思ってんの。言うのも怠くて代わりに長い髪の毛を引っ張ったってやった。痛いと訴えるザビーダに私はフンと顔を背けて正面を向いて歩けば方向的に同じだからザビーダが後ろについて来た。
何故私が怒っているのか。それはザビーダが今日私を庇って傷を負ったからだった。治すって言ってるのにザビーダは断り、挙句には宿に泊まろうと決めた時には何処かに行く始末。また怪我でもしたらと思った私はザビーダを探しに行った。漸く見つけたと安心していると何やら真剣に何かを見ているからどうしたのだろうと思い近づいたら。
『あのスタイルは良いねぇ』
『………』
『お、名無しじゃん。俺様に何か用?』
『この変態天族め。もっと痛い目にあったらいいわ』
まさか歩いている女性を見ていたとは。何だか心配した自分が馬鹿馬鹿しくなった私はザビーダに怒った。当然ザビーダは私が何故怒っているのかがわからない為からかったりふざけたりする。
ザビーダはこういう人だ。そう思えば簡単に怒りなんて消え去る。しかしだ、私がここまで怒るのは…まあ、ザビーダに対する恋心のせい。ザビーダは私の事なんて全く見ないくせに、他の女性は先程の様に見る。だから腹が立つのだ。
「大体何で私はあんな奴の事を…」
「悩み事なら相談にのるぜ?名無し」
「わー声が聞こえるー。きっと気のせいー」
ザビーダの声に棒読みで返して私は外にあるベンチに座った。本当誰のせいで悩んでると思ってるのよ。
深いため息をつけば隣にザビーダが座る。近くなった距離に不覚にも胸が騒ぎはじめて。一瞬だけザビーダと目が合ったけど直ぐ様逸らした。何で隣に座ったのかと可愛くない質問にザビーダは答える。
「そりゃあ名無しを一人になんて出来ないからな」
「…ザビ…」
「名無しに何かあったらあいつらが心配す「殴っていい?」何でだよ!?」
心配してくれて嬉しいと思った私が馬鹿だった。結局ザビーダはスレイ達の事しか考えてない。やっぱり、私の事なんて何も考えてない。
「ザビーダはああやって女性ばっかり見て…何なの?」
「お子様の名無しにはわからないだろうな」
「子供じゃない!」
いつもそうだ。私が真面目に話そうとしたらザビーダは子供だと言って誤魔化す。確かに私はザビーダからしたら子供だろう。だけど嫌だった。子供なんて思われたくない。
「…私はザビーダが好き。だから、一人の女として見てほしいの。ちょっとは私の事を気にしてほしいのっ…!」
ザビーダの胸を叩く。こういう所が子供なんだと実感するが気持ちは止まらない。更には涙が出てきてザビーダが「泣くなって」と慰めようと私の頭を撫でてきた。ほらまた子供扱いして…!
「やっぱり私の事なんて何も思ってない…!もう、いい…っ!?」
「…本気で言ってんのか?それ」
何を言っても無駄だと感じた私は諦めようとした時だった。ザビーダの声が低くなって腕を掴まれた。力が強い為振り解く事が出来ない。顔を上げればザビーダに見つめられていて目を逸らせなかった。な、に…?何で、そんな目で見てくるの…?
「だったら俺がどう思ってるのかわからせてやるよ、名無し」
少しずつ近づいてくる顔に思わず目をつぶった。…しかし、私が勝手に期待をしていた事はされずに頭を撫でられていた。目を開けてキョトンとしていればザビーダが私の腕から手を離して笑う。撫でられていた手も離れて私は何これと思った。期待をしていた事をされずに済んだのに安心したけど、何処かで残念だと思っている自分もいて何も言えない。
(…俺も何ムキになってんのかねぇ)
いつの間にかお互いに最初にベンチに座った時のように正面を向く。ただ私はチラリとザビーダを見ていた。無言、なんだけど…ザビーダが難しい顔しているから気になってしまう。気づけば私は無意識にザビーダが被っている帽子を取って、そして。
「…名無し?」
「え、えっと…その、ごめん。なんとなくしただけだから、気にしないで」
何度もザビーダが私にしてくれる様に、今度は私がザビーダの頭を撫でた。普段する方だからかザビーダがこちらを見る。私も変に緊張してしまって上手く話せない。じ、自分自身何しているんだろう。
「名無しは本当に俺様の事が好きでたまらないんだな」
「…そう、だけど。悪い?」
「いんや、全然?」
正直に伝えたらザビーダがいつもの様に笑う。結局告白の返事は無かったけど、あの時のザビーダはきっと本心だと思いたい。ちょっとだけ私を思ってくれているのだと自惚れておこう。それくらい良いよね、ザビーダ。
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黒川瑠依様リクエスト、テーマが"頭を撫でる"でザビーダ夢でした。
テーマとは何だったんだと言う程に頭を撫でるが重要ではなくて申し訳ございません!
ザビーダが好きな夢主と、好きだけど言わないザビーダ。非常にもどかしかったです。好き同士ならくっつけよ!と書きながら思っていました。
夢主に何も思ってないんだと言われて突然真面目になるザビーダ。これが書きたかったのです。いつもはああだけど言う時は言う的な。すみません、完全に私の妄想を入れてしまいました←
黒川瑠依様、5万打記念に参加していただき、ありがとうございました!気に入らなければ遠慮なく仰って下さい!
※お持ち帰りは黒川瑠依様のみです。