嫉妬
「むー…」
目を細めて前方にいるスレイとアリーシャを見る。楽しそうに天遺見聞録を見ている二人。遺跡とかに興味がない私はその中に入る事は出来ない。知らない奴が入った所で邪魔なだけだ。だから後ろで二人を見ている。…でもやっぱりモヤモヤするなぁ。スレイが好きだからアリーシャに嫉妬してしまう。アリーシャは大切な友達だからしたくないのに。
「ミクリオ…嫉妬って醜いよね…」
「君はまた何を言いだすんだ」
「だって…」
隣にいるミクリオに訊けば腕を組みこちらを見る事もしないで話すミクリオにしょんぼりする私。話せる相手がミクリオしかいないんだもん。エドナに言ったらからかわれそうだし。因みにエドナはスレイの中にいるけど。歩くのが面倒らしい。
「スレイの事信じてるのに何で嫉妬なんかしちゃうんだろ」
「僕は良く分からないが、好きだからこそ嫉妬するんじゃないか?」
「そう、なのかな…」
「ま、とにかく落ち込むなんて名無しらしくないと思うけど」
ポンポンと珍しく頭を撫でられた。慰めてくれているのだろうか。ありがとうと笑いながら言えばミクリオは「別に」と照れくさいのか目を逸らしながら言ってきた。何だかんだで優しいよね、ミクリオは。
ミクリオの撫でを堪能しているとスレイがこちらに振り向く。目が合ってしまい私は微笑めばスレイが少し怒った表情でこちらに近づこうと足を出した瞬間だった。足と足をもつれさせてしまいスレイがアリーシャを巻き込んで転けた。
「い、いてて…。ごめん、アリー、シャ…」
スレイが目を開ければ目の前には顔を真っ赤にしたアリーシャが映ったのだと思う。どう見てもスレイがアリーシャを押し倒した様になっていてミクリオがため息をつく。私はその光景に目を離せずにいた。慌ててスレイが起き上がりアリーシャに手を伸ばして立ち上がらせるが二人は照れてしまい何も話さない。
「名無し?」
ぷるぷると私が震えているのがわかったのだろう。ミクリオは心配して訊いてきたが私は何も言わずに二人に近づいていきスレイの目の前に立つ。キョトンとしているスレイに私は。
「…っ!?名無し…?」
「スレイは私の彼氏だもん。いくら友達のアリーシャでも渡さないからっ!」
背伸びをして不意打ちのキスをお見舞いした。アリーシャとミクリオが見ていても関係ない。キスをしてからスレイに抱きつく。この人は私の彼氏だからと見せつけるように。
「名無し、突然何を…」
「アリーシャ。名無しは君に嫉妬しているんだよ」
「し、嫉妬!?」
アリーシャが驚くのではなく、スレイが驚いた声をあげる。何でスレイが、とか思ったけど声には出さないでおこう。アリーシャが私に謝ってくるが私は勝手にしているだけだから気にしないでと言った。そう、アリーシャは悪くない。私が子供なだけ。たったあれだけの事で嫉妬だなんて只の子供だ。
「名無し…その、本当に…」
「う、うん。嫉妬した。ごめんね」
「謝らなくていいよ。オレも同じだったから」
「え?」
「オレもミクリオが名無しを撫でているのを見て嫉妬しちゃったから。お互い様だよ」
スレイの顔を見れば頬を掻きながらも笑っていた。だからあの時怒った表情をしたの?スレイも、嫉妬してくれてたの?
嬉しさと恥ずかしさとが混ざってとにかく顔が熱くなった。ほ、本当にお互い様すぎる。でもスレイと同じ気持ちだったと考えると凄く嬉しい。
「えっと…スレイ。嫉妬してくれて嬉しい」
「オレも嬉しいよ、名無し。けどオレが好きなのは名無しだけだから!」
「私も!スレイだけが大好きだから!」
今度はお互いに抱きしめる。アリーシャは私達を見て「仲良しだな」と微笑む。ミクリオは「嫉妬された僕達はいい迷惑だけどね」と言っているが何処か安心している表情で。ミクリオ…心配してくれてたんだなぁ。もう一度ミクリオにお礼を言う。
「構わないよ。名無しが元気になったのなら良かった」
「…ミクリオ。名無しはオレの彼女なんだからな」
「ス、スレイ!?」
「はいはい。嫉妬も大概にしてくれ」
「そうよ。黙って聞いていれば…何なのあなた達」
いつの間にか出てきていたエドナに傘で叩かれた。スレイをもっと好きになった、そんな一日だった。
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優那様リクエスト、テーマが"嫉妬"でスレイ夢でした。
初めは夢主がアリーシャに嫉妬するだけで終わらせようと思ったのですが気づけばスレイもミクリオに嫉妬していました←
お互いに嫉妬してくれている事に喜ぶ夢主とスレイ。アリーシャとミクリオに彼女、彼氏なんだから渡さない的な宣言するくらいですし、まあバカップルなのは目に見えてますよね!
優那様、5万打記念に参加していただき、ありがとうございました!気に入らなければ遠慮なく仰って下さい!
※お持ち帰りは優那様のみです。