目の前に広がるのは緑。木が大量にあって…ここは森だと理解するのには時間はかからなかった。…理解は出来た、のですけど。何故この様な場所にいるのだろうか。わたくしはベッドに寝転がり寝たはず。だから起きたら天井が見えるはず。だがわたくしは寝転ぶどころか立っているではないか。…唯一思い当たるのは。


「長い夢を見たいと願ったから…?」


つまりこれは夢なのか。にしては寒いとか感じる所が妙にリアルすぎて気持ち悪い。のわりには熱なのに眠りにつく前に感じていた気だるさは感じない。これも夢だからか。…何でもありですわね、夢って。改めて周りを見渡す。


「…何処を見ても木。進んで意味があるのかわからないけど…」


とりあえず歩いていこう。少し薄暗い森の中を歩いていく。人一人の気配すら感じない。…って当然ですわね。所詮は夢だもの。何を考えてるのわたくしは。現実じゃないのだから。だけど流石にこのまま永遠とひたすら森を歩くという夢も嫌なものだ。だったらいっそのこと夢から目覚めてほしい。
もう何時間歩いたのかはわからない。いや、何時間も経ったのかさえわからない。時計なんて持っていない。夢なのだからあってもいいのに都合よく考えながら立ち止まった。


「お腹空いた…。ドレスもボロボロ…」


この森の中をドレスで回るのは中々困る。歩く度に木の枝に引っかかったりして一々外さなければならない。破れたりなんてしたらただでさえ寒いのにもっと寒くなってしまう。そして何より嫌だと感じたのは足だった。家の中だった為裸足で寝たわたくしは夢の中でも裸足。歩く度に痛くてたまらない。足は所々切れていて血が滲んでいた。


「何故こんなに痛いの?夢よね…?」


夢の中なのに痛いなんて信じられない。ううん、信じたくない。こんな事なら夢を見たいなんて願わなければ良かった。…なんて思っていても仕方が無いですわね。とにかく出口を探そう。それに時間を潰していたらその内目覚めるはず。
しかしわたくしの考えは甘かった。どれだけ歩こうが出口らしきものは見えない。夢から抜け出せる気配もない。ただただ足が痛く、ドレスがボロボロになり、空腹になるだけ。いくら熱じゃなくてもひたすら歩いていたら体力は奪われるものだ。


「…もう…駄目…」


気付いた時にはわたくしの体は地面に倒れていた。動けない。まさかこんな所で倒れるなんて。ああ、意識が遠のく。もしかして夢から目覚めるのだろうか。夢の中で気絶するなんて滅多に味わえる事じゃないわね、なんて軽く笑いわたくしは意識を手放したのだった。
 
 
 
 
 
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