恋なんてした事がない。したいと思った事がない。男性と関わりたいとも思わない。だから女子校で普通の庶民が住んでいる所に行っている。…わたくし、大川実優は所謂"お嬢様"だから何故ここにいるんだとそこの生徒に妬まれたり嫌われたりする事もありますが。気にはしない。わたくしだって好きでお嬢様というものに生まれた訳じゃないのだからーーー。
「実優!聞いてるの!?」
「え?ええ、ごめんなさい。聞いてなかったわ」
ボーッとしていた為目の前にいる友人である二人の話を聞いてなかった。本音をそのまま返せば見るからにガックリという効果音を出しながら肩を落とす二人。
「もー!何で聞いてないの!?」
「そうだよ!私達の愛を聞いて!」
「二人からほぼ毎日聞かされているわたくしの身にもなって」
はぁ、とわざとらしくため息をつくわたくしに二人共頬を膨らます。…この二人はわたくしの事をお嬢様と知っていても友達だと思って話してくれている。見返りを求めて、なんて思っていたが見返りなんていらないからと二人は言った。それでも信じられないわたくしは二人を拒絶したのにわたくしが他の女子に嫌がらせをされた時は庇ってくれた。どうしてと訊けば単純に友達だから、なんて言う二人だ。もう信じるしかないと思ったわたくしは今この二人と共にいる。
「でね、ほんっとスレイがカッコよくて!」
「いやスレイじゃなくてミクリオでしょ!可愛いわ…可愛すぎる…」
で、そんな二人は最近ハマっているゲームがあるらしく、わたくしは会えば毎回聞かされているのだ。わたくしはゲームという物をした事がない為全然わからないが二人がスレイ、ミクリオというキャラを愛しているのはわかる。
「実優もゼスティリアやってみて!」
「わたくしはゲームに興味が無いもの」
「あー私ゼスティリアの世界にトリップしたいー!」
トリップなんてしたら色々と大変だと思いますが。まずトリップするわけないのですけど。二人はもう少し現実を見た方が良いのではと聞けば毎回思うわたくしの二人への心のツッコミ。一体お二人がご執心しているスレイとミクリオという方はどんな人なのだろうか。二人の説明を聞いていても『カッコいい』と『可愛い』しか言わないから全くわからない。…まあ、ゲームやキャラに興味が無いわたくしには関係無い事ですよね。